疲弊した社員を助けるために上司がとるべき対策

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2017年08月24日 18:44  新刊JP

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『なぜあなたはいつもトラブル処理に追われるのか:再発防止だけでは不十分、リスクの気付きで未然防止』(発行:合同フォレスト株式会社)
「トラブルによるクレーム処理で1日が終わった」
「どんなに再発防止策を打ってもトラブルが起きてしまう」

現場は疲弊しきっている。
トラブル処理やクレーム対応に追われ、本来の業務にまで手が回らない。生産性が上がらず、チームとしても雰囲気が悪い。再発防止対策はおざなりで、すぐにまた同じトラブルが起こる。

当然、こうした状況は現場で働いている人たちの心身を追いつめる。
しかし、どのような対策を打てばいいのか分からない上司は多いだろう。

そこで今回、お話をうかがったのが、『なぜあなたはいつもトラブル処理に追われるのか:再発防止だけでは不十分、リスクの気付きで未然防止』(発行:合同フォレスト株式会社)の著者で、未然防止研究所代表の林原 昭さんだ。

コスト削減や品質改善で多くの実績を残す“リスクマネジメントのプロ”が提唱する、トラブルの「未然防止」とは一体どのような対策なのか?

(新刊JP編集部)

■「事が起こってからでは遅い」 モチベーション低下の要因を未然に防ぐには?

――林原さんはこれまで国内外数々の現場を見てこられましたが、現場の疲弊やモチベーションの低下を生む一番の問題点はどこにあるとお考えですか?

林原:よく業務量の多さや過度なノルマという点が問題として取り上げられますよね。でも、私が現場を見てきた中で、一番の問題だと感じていたのは、「本来の仕事ではない業務に時間と労力を割いている」という点です。

――「本来の仕事ではない業務」とは何でしょうか?

林原:トラブル処理です。トラブルが起こると、上司から「なぜ起きたんだ!? 何をやってるんだ!」と叱責される。さらに顧客からは厳しいクレームが入り、「どうなってるんだ!」と問い詰められる。上司と顧客の間で板ばさみになり、精神的にも肉体的にも追い込まれるわけです。

さらに心身に余裕がなくなって別のミスを犯し、トラブルを起こしてしまう…。その繰り返しに陥っている現場は珍しくありません。当然疲弊しますし、こんなことが続いているようではモチベーションも下がりますよね。

――「トラブル処理が自分の本業じゃないか」と言っている人を知っていますが、本当に彼は常にトラブル処理をしていました。でも、本業の仕事が全く進んでいないという。

林原:そういう人は意外と多いんですよ。私も現場にいた頃、そのような状態になったことがあります。ただ、もちろん誇れるような状況ではありません。トラブル処理が最優先にして、本来の仕事を後回しにしているわけですから、仕事の成果にも影響が出てきます。

――それは悪循環です。

林原:トラブル処理は現場の疲弊を生み出す最大の要因の一つです。実際にトラブルが起きなければ、処理している時間をもっと創造的な仕事に使えたはずですし、ひいては会社の業績アップにも貢献できたはずですよね。

トラブルが起こってからでは遅いのです。大きな損失を生み出すトラブルを未然に防ぐ対策を打つことが、企業に求められていることだと思います。

――そこで登場する対策が、この本で書かれている「未然防止」という考え方です。トラブル処理というと「再発防止」で終わりがちですが、「再発防止」と「未然防止」の違いはなんでしょうか。

林原:「再発防止」は、過去に起こったトラブル・事故の根本原因の追究から同じことが二度と起こらないように対策すること。一方の「未然防止」は、過去のトラブル・事故の現象と根本原因を参考にして、将来のリスクに気付き、将来起こるかもしれないトラブル・事故を未然に防ぐことです。

過去起こったトラブル・事故と全く同じことが将来起こる確率は極めて低い。したがって、再発防止だけでは将来のトラブル・事故は防げません。しかし、再発防止なくして未然防止はあり得ない。この2つは「車の両輪」です。

――確かにトラブルが起きない環境を作ることは重要です。しかし、「起きてもいないトラブルにどのように対処するのか」というところで、「未然防止」の理解が得られないという声もありそうです。

林原:確かにそのような声はあります。いまだ起こっていない未来のトラブルを想定し、起こらないように対策する。これはかなり「攻め」のビジネスです。

ただ、現場で同じようなトラブル・事故が繰り返し起きていて、緊急対応と再発防止に多大なコストと時間の浪費が行われているのであれば、未然に防いだほうがよいでしょう。実際に本書を読んでいただくとわかりますが、未然防止に費やすコストは多くありません。初期段階であればちょっとした将来リスクへの気付きとその対策で十分です。
未然防止は先行投資です。どの会社でも、将来の為に人材育成や設備投資を行っていますが、未然防止はそれと同じレベルの重要な「先行投資」の業務なのです。

繰り返しますが、トラブル処理は現場のモチベーションを著しく下げます。そこにとらわれて時間に追われ、本来の仕事が進まない方が大きな損失です。未然防止活動を上司が率先して行うことが、チームとして大きな成果を築くきっかけになるはずです。

――今すぐにも始められるのが「未然防止」です。ぜひ多くの現場で実践してほしいですね。

林原:そうです。トラブル処理に追われ、疲弊しきっている現場をたくさん見てきましたが、当然チームの成果も上がりにくくなります。上司や経営者の方々にはぜひ「未然防止」の考えをマネジメントに取り入れてほしいと思いますね。

■林原 昭さんのプロフィール

未然防止研究所代表。1973年、慶應義塾大学工学部計測工学科卒業。同年、日産自動車入社。現場改善、生産管理に携わる。日々の現場や工場内で起こった重大事故から「未然防止」の必要性に気付き、人間の習性にも関心を持つ。
その後、大手プラント建設の千代田化工建設に転職。プロジェクトマネジャーとして海外自動車メーカーの工場建設に携わる中で、プロジェクトの「未然防止」活動を実践。国内外の数々の現場で、コスト削減や品質改善で多くの実績を残す。トラブル・事故ゼロ社会の実現に向け、「未然防止」の普及に取り組んでいる。

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