デイリースポーツONLINEによると、週刊文春で不倫疑惑を報じられたことによって、民進党の幹事長就任が内定していながら撤回された……どころか、同党の離党にまで追い込まれた山尾志桜里衆院議員(43)を揶揄する目的で、「幹事長落ちた、民進党死ね」「不倫ばれた、日本死ね」とプリントされたTシャツ販売をうたうHPが、ネット上に出現した……らしい。
山尾氏は昨年、匿名ブログ「保育園落ちた日本死ね」を国会で取り上げ、待機児童問題を全国区レベルでわかりやすくアピールした立役者で、同フレーズが『新語・流行語大賞』のトップテン入りした際は、授賞式にも出席した──と、そんな経緯がアダとなり、皮肉にも「〜死ね」のパターンをなぞったTシャツ作成までをも促す流れとなっているようだが、私は正直なところ「それってどーなのよ?」と、妙な違和感を覚えてやまなかったりする。
私は別に民進党を頑なに支持しているわけではないし、「ドブに落ちた犬を棒で沈めるみたいな真似までせんでも…」と、山尾氏に同情の念を抱いているわけでもない。もちろんのこと、「たかが不倫で…」と、ここ数年における著名人の不貞な色恋沙汰に対する世論のヒステリックな反応を憂いでいるわけでもない。その風潮が良かろうが悪かろうが、皆さん(とくに政治家は)とにかくワキが甘い! 集中攻撃必至の“いけない行為”をなされるなら、もっと徹底して「陰でこそこそやる」のが道理であろう。
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私が、今回の一件に関して物申したいのは、「幹事長落ちた、民進党死ね」「不倫ばれた、日本死ね」……とプリントされたTシャツのクオリティ、ただこの一点に尽きる。「幹事長落ちた」と「民進党死ね」、「不倫ばれた」と「日本死ね」の互換性も日本語的には中途半端にヘンだし、パロディーTシャツ、いわゆる「バカT」の観点から考慮しても、『Tシャツ先生』(アスペクト刊/せきしろ共著)という脱力系Tシャツの専門書の著作をも持つ私からすれば「センス悪すぎ」なのだ。
とりあえず、私が考える「センスの良いバカT」の定義を、3つほど挙げてみたい。
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- 流行り・旬に乗っからない
- 社会・政治批判のメッセージ性を有さない
- 何回転しようが「オシャレ」には着地しない
つまり、総論すれば「狙わないこと」が絶対条件となるわけで、「不倫」「死ね」……など、たとえ使用されている言葉がどんなに強い破壊力を秘めていようとも(※強さのある単語をチョイスしたら最後、「狙ってる感」が前面に押し出されてしまうという見方もできる)、この山尾氏事件が「旬」であり、「政治(家)批判」へとベクトルを向けている時点で、もうバカTとしては最低ランクの駄作となり下がる。真の「バカT」とは、たとえば
「冬でもTシャツ一枚の外国人観光客が、「ジャパニーズライク!」の一心だけで、言葉や絵ヅラの意味もわからないまま、仲見世通りだとか新京極あたりで買った寿司や金閣寺や忍者やらのTシャツを着て、表参道を練り歩く」
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……チックな間抜けさこそが“命。“意識の高さ”がホンの少しでも顔を出しただけで、それはすでに「バカ」ではなく、単なる「いけすかない」Tシャツでしかなくなってしまう。
つまり、極論すれば「バカTとはつくるモノではなく見つけるモノ」なのであって、「ウケたい」という野心を微塵とも感じさせない、「売りたい」というピュアな商売根性だけでつくられた場末のTシャツをいかに掘り出し、いかに“とほほ”なシチュエーションで着こなすか……のサンプリング能力が“鍵”となるのである。