『あさイチ』が紹介、高橋一生の本棚が興味深い! 渋い小説から般若心経がムー大陸で生まれたというオカルト本まで

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2017年09月17日 22:11  リテラ

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リテラ

NHK公式HPより

 高橋一生といえば、いま、文化系女子に一番人気の俳優。放送中の大河ドラマ『おんな城主 直虎』(NHK)では主人公・直虎の幼なじみであり家臣である小野政次役を演じ、その直虎の手で殺されるという壮絶な死を遂げた8月20日放送回は、12.4%の高視聴率を記録。「政次ロス」「一生ロス」に陥るファンまで続出した。



 そんな高橋一生だが、実はなかなかマニアックな志向の持ち主でもあるらしい。その一端が垣間見えたのが、高橋がゲスト出演した8月4日放送の『あさイチ』(NHK)。高橋はこのとき、自宅の本棚写真を公開したのだが、それを見たファンや本好きの間から「え、こんな本を読んでたの?」と驚きの声があがったのだ



 たしかに、そのラインナップはなかなか興味深かった。まず、目についたのが、最果タヒ『死んでしまう系のぼくらに』(リトル・モア)や吉田修一『パークライフ』(文藝春秋)、伊藤たかみ『八月の路上に捨てる』(文藝春秋)といった、文学作品や現代詩のアンソロジー。なかなか渋いセンスを感じさせるが、しかし、これだけなら"文化系の王子"といわれる高橋のこと、そう驚くには値しない。



 意外だったのは、こうした本のそばに、仏教関係の本がずらりと並んでいたことだ。『密教世界の構造 空海「秘蔵宝鑰」』(宮坂宥勝、ちくま学芸文庫)から始まり、山崎泰広『真言密教 阿学観瞑想入門』(春秋社)、大森義成『真言宗の密教と修行』(学習研究社)さらにはヘルマン・ヘッセの『シッダールタ』(新潮文庫)、トラベルカルチャー雑誌「TRANSIT」のチベット特集号まで。仏教、とくに密教に興味があるようだ。



 MCの有働由美子アナや井ノ原快彦からも、当然、そのことを訊かれたのだが、高橋は隠すこともなくさらりとこう答えた。



「なんか昔から好きなんですよね。お経とかがすごい子どもの頃から好きで。なんか耳障りが良くて。『なんなんだろうこれは』って思って」



 そして、高橋は続けて仏教について学ぶことの面白さを、般若心経の「空」を例に出しながらこのように語った。



「どんどん深く掘り下げて行ったらまた面白くて。たとえば、般若心経とかって、「"ある"けど"ない"」みたいな。「"ない"けど"ある"」みたいな。そういうところが、『どういうふうに考えてこの思考にいたったんだろう?』とかって想像するのだけでも楽しいし。いまの科学だったりとかって、そういう"ない"ところに入ろうとしているっていうか、そういうのがなんか通じてしまっていて、ちょっと不思議だなと思いながら(読んでいます)」



●高橋一生の本棚には仏教に関する書籍がたくさん



 たしかに、般若心経の「空」という概念は大乗仏教の根幹をなす概念であるのはもちろん、構造主義や記号論にもつながる奥深さをもっている。



 そこに着目している高橋の話を聞いて、彼が身にまとっている知的な空気はこうした哲学的思考からきているのか、と感心していたのだが、しかし、問題そのあとだった。放送された高橋の本棚をじっくり見ていたところ、つっこまずにはいられない本を発見してしまったのだ。



 それは、浜本末造『万世一系の原理と般若心経』と田中治吾平『鎮魂法の実修』の2冊。前述の仏教本に混じって並べられていたのだが、この2冊はタイトルこそ仏教本のような雰囲気をかもしているが、内容はまったく違う。先に紹介した『空海「秘蔵宝鑰」』『真言密教 阿学観瞑想入門』などが、仏教関係者なら誰でも知っているオーソドックスな解説書であるのに対して、こちらは、一般的には誰にも知られていない。いや、知られていないのは当然で、これ、完全なオカルト本なのだ。



 たとえば、浜本末造『万世一系の原理と般若心経』にはこんな言葉が書かれている。



〈人類が初めて地上に現れたのは、ムウ大陸の北部でありました。当時は太平洋にムウ大陸、印度洋にレムリア大陸、大西洋にアトランチス大陸があり、現在のアジアやヨーロッパ大陸、アフリカ、豪州、南北アメリカ大陸等もありましたが、現在とは大分異なっていたのです〉



 この後、人類はムー大陸のエネルギーと太陽のエネルギーとが接触したことによるエネルギーが波動となって生まれたなどの説が続くが、肝心の般若心経に関してはこのようにある。なんと、般若心経はムー大陸で生まれ、さらに、ムー大陸の王(の分身)が般若心経を日本に伝来させたというのである。



〈ムウ大陸の王は、御自分の分身である一人に人類の悟りの道として般若心経を持たせてレムリア大陸に行かせましたが、此の大陸が陥没する以前にアフガニスタンに渡りました。一人はムウ大陸の文化を持たせてアトランチス大陸に渡らせましたが、此の大陸の陥没前にアフリカに渡り、それからエジプトにゆきました。一人は神宝を与えて日本の出雲地方に渡らせました。一人は自分の後継者としてムウ大陸に止まらせたのです〉



●高橋一生の本棚にはなぜトンデモオカルト本があるのか?



 高橋がどんな思いでこの本を買ったのかはわからないが、般若心経に書かれている仏教哲学について学びたかったり、仏教の歴史や文化について学びたかったとしても、『万世一系の原理と般若心経』ではなんの参考にもならなかっただろう。



 もう一冊の田中治吾平『鎮魂法の実修』も負けず劣らずのトンデモ本である。『鎮魂法の実修』は神道の修行に関して記した本だが、この本によると、修行を重ねて心が清められ、その人の霊が神の霊との隔たりがなくなる境地にまで達すると、未来に関する予言が得られるという。



〈霊感神示には、その人の現在未決定のことがらを指示決断されることもあるが、遠い将来の問題について指示されることもあり、広く社会に関することを予示されることもある。では遠い将来の予示予言がどうして可能であるかというに、形の世界は神の御心の次第に有形化したものであり、すでに神意と神理で決しておることの現われである。遠い将来のことでも、神意がやがて事実となって現れるのだから、ここに将来の感悟予知が可能なわけであり、修行が進み神意に達すればその神示が受けられるのである〉



 つまり、この世界のすべては神の心の具現化されたものであり、修行によって神の心に近づくことができた人間は神の心を知ることができるので、現実世界の未来を予知することができると、この本は主張しているわけである。



 ちなみに、『万世一系の原理と般若心経』も『鎮魂法の実修』も、1960年代、70年代に出版された本で、どちらも絶版になっている。しかも、出版元の霞ヶ関書房という会社は、幽体離脱した著者・竹内満朋が守護霊の案内で霊界を旅したときの体験を記した『魂の幽霊界行脚 死後の世界の体験記』といった本を出版していた、オカルト系に強いマイナーな出版社だ。



 いったい高橋はなぜこのようなマニアックなトンデモ本を持っているのだろうか。高橋が興味を持っている密教が神秘主義、オカルトと親和性が高いことを考え合わせるとは、やはりそういうオカルト志向があるのだろうか。



 もちろん、俳優が多少のオカルト趣味をもっていたところで、いちいちめくじらをたてる必要はないし、それ以前に、マニアックな趣味の高橋がたんに古本屋で買っただけ、あるいは批判的な意味で読んでみただけという可能性もある。いずれにしても、たかが2冊のオカルト本を発見しただけで、これ以上、高橋の趣味を詮索するのはやめておこう。



 ただ、高橋がもし本気で仏教に興味を持っているなら、ぜひ、『スッタニパータ』を一読することをお勧めしたい。『スッタニパータ』は仏教書のなかで最も古い聖典とされるもので、『ブッダのことば―スッタニパータ』(岩波文庫)など、現代語訳も出版されている。そして、その360と927には、ブッタが占いや呪術を完全否定する言葉が記されている。

(本田コッペ)


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  • これでブサメンなら陰キャ扱いなんだからイケメン贔屓の思想って恐ろしいなぁw
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