“原因不明”の腰痛、その8割は原因を特定できる?

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2017年09月21日 12:01  QLife(キューライフ)

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6か月以上続く慢性疼痛が「ある」人は、15.4%


札幌医科大学医学部整形外科学講座教授 山下 敏彦先生

 全国約1万2,000人を対象にした「筋骨格系の慢性疼痛に係わる調査研究」によると、18歳以上の15.4%が6か月以上続く疼痛を有しているそうです。同調査では、痛みがある部位の第1位は「腰」でした。10月から全国で始まる平成29年度「運動器の10年・骨と関節の日」関連行事を前に、日本整形外科学会では、“原因不明”の腰痛の実態と、痛みに関する誤解と診断・治療の最新動向について、都内で記者説明会を開催しました。

 記者説明会の冒頭、同学会の理事長で筑波大学医学医療系整形外科教授の山崎正志先生は「生産年齢人口の減少によって、財源やマンパワーが限られる超高齢化社会の医療において、運動器疾患の予防は重要な課題です」と挨拶。続いて講演した札幌医科大学医学部整形外科学講座教授の山下敏彦先生は、痛み治療の考え方や『非特異的腰痛』の実態について語りました。

治療の目標は「痛みの完全な消失」から「QOL・ADLの改善」へ

 日本における慢性疼痛の実態として、慢性痛で病院・診療所を受診した患者さんの治療満足度は、「やや不満」「不満足」を合わせると45.2%と、半数近くの人が治療に満足していないという論文データがあります。しかし、痛みの完全な消失にこだわると、痛みの残存が不安や治療への不満を感じさせます。そのことが原因で、うつ状態や引きこもりがちになり、筋力が衰え、さらなる痛みの増強や遷延をまねく悪循環が起こりがちだとのこと。

 そのため、2010年頃を境に治療戦略は「痛みの完全な消失」から「QOL(生活の質)・ADL(日常生活動作)の改善」へシフトしました。「現在は、お薬や理学療法、手術などで痛みを緩和し、QOLやADLを最大限に改善することが、運動器慢性痛の治療ゴールに設定されています」(山下先生)

 さらに、「腰痛の多くは、原因が特定できない『非特異的腰痛』であり、その多くは心理的要因によるものと言われていました。しかし、山口大学や早稲田大学が行った研究の結果から、非特異的腰痛の約8割は専門家である整形外科医が丁寧に診断すれば、原因を特定できることがわかってきました」と山下先生は語ります。

 痛みによって仕事や家事、学業などに支障が出てしまったり、趣味やスポーツができなかったりすることで、毎日が憂鬱な状態であれば、無理をせず受診してほしいとのこと。「我々、整形外科医は専門的な診断と治療を通じて、患者さんのQOLの向上を支援していきたい」と、山下先生は力強く締めくくりました。(QLife編集部)

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