今年話題の教育法の裏側。「モンテッソーリ教育の課題」

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2017年11月09日 18:03  新刊JP

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『モンテッソーリ教育で子どもの本当の力を引き出す!』を上梓した藤崎達宏さん
今年、「モンテッソーリ教育」という教育法が将棋界の新星・藤井聡太四段を通して一時話題になりました。

実はこのモンテッソーリ教育、藤井四段だけではなく、マイクロソフト創業者のビル・ゲイツ氏、グーグル創業者のラリー・ペイジ氏とサーゲイ・ブリン氏など、世界の名だたる成功者が受けた教育として知られています。

そんな、子どもの才能を引き出す「モンテッソーリ教育」。日本ではまだまだ発展途上というところもあり、「どんな教育方法なのだろう」と疑問に思っている人も少なくないはずです。

『モンテッソーリ教育で子どもの本当の力を引き出す!』(三笠書房刊)を上梓した国際モンテッソーリ教育協会認定教師の藤崎達宏さんへのインタビュー、後編ではモンテッソーリ教育を取り巻く状況についてお聞きしました。

(新刊JP編集部)

■経済界の人たちも興味を持つ「モンテッソーリ教育」、その課題とは?

――インタビュー前編で藤崎さんは20年間外資系金融機関に勤められ、そこから教育業界に転身したとお話されましたが、どんな経緯で教育分野に足を入れたのですか?

藤崎:子どもが生まれて以来、自分のクライアントから子育て相談を受けることが多くなったんですね。4人も子どもがいるので、経験は豊富でしたから。子育て相談のほうが大人気になってしまい「そっち(教育)で独立したら?」と言われまして、50歳を機に独立することにしました。もともとは本業のおまけだったのですが…(笑)。

――珍しいご経歴ですよね。

藤崎:そうだと思います。ただ、教育業界の人間ではなかったからこそ、見えた点も多かったと思いますね。また、ビジネス界の方と名刺交換をしても、モンテッソーリ教育を知らない人ばかりなのですが、アメリカで成功している起業家の多くが、実はモンテッソーリ教育を受けていたことを知ると、必ず興味を持ってくださる。そこにビジネスチャンスがあったのだと思います。

――モンテッソーリ教師の資格を取るには様々な協会がありますが、どのような違いがあるのですか?

藤崎:志しは皆同じですが「流派が違う」という感じですかね。モンテッソーリ教育は特に、特殊な知識と練習、高い資質を求められます。私が取得した国際モンテッソーリ協会の認定資格ならば1年間仕事を休むか、夜間2年間かけて取得する覚悟が必要です。教師になるには絶対必要な時間としても、一般の父親、母親が学ぶにはハードルが高すぎます。
これからは一般のパパ・ママがモンテッソーリ教育を基礎に、わが子の成長を予習する場が必要だと強く感じています。そうしないと、どんなに素晴らしい教育でも、広がっていかないからです。
この本がファーストステップだとすれば、次は一般の方々に実践する場の提供をすることで、モンテッソーリ教育がなかなか広まらない現状を打開したいですね。

――モンテッソーリ教育教師の認定資格は、保育士資格とはまた違うのですか?

藤崎:違います。ただ、保育士資格や幼稚園教諭免許を持っている人が取得することが多いですね。私は、保育士資格は持っていないのですが、私の妻が持っているので、彼女が子育てサロンを運営しています。

――モンテッソーリ教育の観点から見て、親が子どもに対してやってはいけないことは、なんですか?

藤崎:「代行」です。危ないから、失敗しないように、といった具合に良かれと思って代わりにやってしまう親御さんは実際に多いです。

これは一つに時代の流れがあると思っていて、以前は兄弟が多かったから、親が一人を見ている時間が少なかった。つまり「自分でやらないといけない子」に育ちました。でも、今は一人っ子が多いでしょう? そのことから親は子どもの代行をできるようになってしまったのですね。

子どもが自主的に活動するのを手助けするというのがモンテッソーリ教育の特徴ですから、それはNGです。「自分から選べない、指示待ちの子ども」が出来上がってしまいます。そうした子どもが「良い子」に見えてしまう、先回りして何でもしてあげる親が「良い親」に見えてしまうことに最大の危険があるのです。

――モンテッソーリ教育を受けた著名人をあげると、キリがないですね。マイクロソフト創業者のビル・ゲイツ氏、グーグル創業者のラリー・ペイジ氏とサーゲイ・ブリン氏など…。

藤崎:彼らはずっと0歳から6歳の「敏感期」が続いているという感覚なのだと思います。
自分で興味を持ち、自分で選択する。集中してやり遂げることで自己肯定感が高まり、また次のステップに進んでいく。この成長のサイクルが大人になっても回り続けている人が大成するのですね。
ある意味「偏ったオタク」です。これからは「オール5」の能力では通用しない時代がやってきます。ある分野に偏った、突き抜けた人たちが世の中を動かしていきます。
そのルーツは、幼少期に「これどうなっているんだろう?なるほどそうなのか?」という疑問〜納得体験にあります。昔は時計を分解したり、プラモデルを作ったり、釣りに行ったり、納得体験にあふれていました。しかし、現代社会はやることを指示され、代行されるので疑問を持たない。疑問をもっても納得できない。例えば現代の時計を分解してもクオーツですし、便利なタブレットもなぜ稼働するのか理解できません。「なるほどそうだったのか」という納得体験が極めて少ないのです。

――モンテッソーリ教育に限らず、保育園や幼稚園の選び方のポイントを教えて下さい。

藤崎:これはぜひ訴えたいのですが、お父さんも保育園、幼稚園選びを一緒にしましょう。

私の場合は、妻が専門家ですし、すでに3人を育てている子育てのベテランだったので、任せてしまったほうが簡単でした。ただ、それではいけないと思い、自分なりに勉強して、一緒に幼稚園選びを行ったことが今でも本当に良かったと思っています。

保育園、幼稚園選びは、「夫婦で行う初めての教育的な決断」なのです。分からないながらも話に加わる。お父さんにはそれをしていただきたい。ただし、奥さんが持っている情報と大きな格差があります。そのギャップを埋めるために私は「お父さんも一緒に幼稚園選び」という個別相談を10年前から続けています。参加者は2000組を超え、今後もライフワークとして続けていきたいと思います。

――では、最後に本書をどのような方に読んでほしいですか?

藤崎:自分がそうであったように、初めての子育てで「何でこんなに手がかかるんだろう」と思う親御さんは多いはずです。そういう方には、ぜひこの本を読んでほしいですね。

少しでも「予習」することで、「次は子どもがこういう行動をするから、こういう準備をすればいいんだ」ということが分かれば、だいぶ楽になり、なるほど人間というのはこうして成長していくのだという発見が沢山できるはずです。文庫なのでサイズもお値段もお手頃(笑)
通勤電車の中でも「子どもの成長の予習」をしていただきたいと思います。

(了)

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