宗教法人のサイドビジネスは非課税?  過去にはラブホ経営、宿泊料を「お布施」扱い

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2017年11月11日 11:32  弁護士ドットコム

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宗教法人は税制面で優遇されているが、その優遇はどこまで活用できるのだろうか。


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例えば、2009年には、休眠状態にあった宗教法人「宇宙真理学会」を買収したキノコ・野菜加工販売会社が、「宇宙真理学会」の名義の下にラブホテルを運営、宿泊料の一部を非課税の「お布施」として処理していたことが問題になった。


過去の報道によると、ホテルの前には、白い観音像が立ち、駐車場の壁には「喜捨をお願いします」と書かれた看板が、掲げられていたという。


宗教法人のサイドビジネスにも税制優遇は及ぶのか。売り上げを「お布施」扱いにして、非課税にはできないのだろうか。冨田健太郎税理士に聞いた。


●坊主丸儲けというのは半分正解、半分不正解

「ラブホテルと聞くとちょっと胸が高鳴ってしまうお年頃でもありませんが、このニュースを聞いた時は胸が高鳴ったことを覚えています。そもそも宗教団体がラブホテルを経営しているという事実がショッキングだった記憶がありますね」


宗教法人はなんでも非課税にできるのか。


「坊主丸儲けという言葉あるように、宗教法人というのは税金がかからないという印象を持たれている方が多いかと思います。


これは半分正解、半分不正解です。宗教法人などの公益法人は収益事業以外の事業については税金が課せられません。お経をあげた際の読経料や賽銭収入などはいくら入ってきても1円の税金もかかりません。これらは喜捨金(「きしゃきん」と読みます)と認識され非収益事業収入として取り扱われます。


ただし、宗教活動事業や公益事業以外の収入については通常の法人と同様に法人税の課税対象となります。お寺の隣にある駐車場を貸していたり、絵葉書を販売しているような場合は、これらの収益に対して法人税が課せられます」


では、ラブホテルの収入を喜捨金とみなすことはできないのか。


「ラブホテルの場合、一般には旅館業法に規定されるホテル営業又は旅館営業に該当します。即ち、一般的なビジネスとして認識されている業種ということになりますね。


したがって、ラブホテルの収益が非収益事業に該当するという主張はかなり無理があるものと思われます。


冒頭にありましたように、ホテルの前には、白い観音像が立ち、駐車場の壁には『喜捨をお願いします』と書かれた看板が掲げられていた、とのことですが、だからと言ってホテルの売上を喜捨金として認識できるかと言えば、答えは言うまでもなくNOです。


ただし、フロントで支払った代金ではなく、『喜捨をお願いします』と書かれたお布施箱等にお金を入れたような場合は、その分については非収益事業収入にできるかも知れません。賽銭収入に近い感覚ですよね」


●文字通り「喜んで捨ててくれたか」

結局、収益事業と非収益事業の境目はどこにあるのか。


「宗教法人などの公益法人が行う事業が非収益事業となるか否かのポイントは「喜捨」にあります。読んで字のごとく『(対価を求めず)喜んで捨ててくれたのか』が分かれ目になるでしょう。


ラブホテルのフロントで支払った代金は部屋を借りる対価ですので喜捨とは言えませんが、別に入れなくてもいい『お布施箱』のようなものにお金を入れた場合は喜捨と考えることもできます。


ただし、今回取り上げたケースは休眠状態にあった宗教法人を買い取った普通の法人が行っていた事業です。課税当局は実態をもって判断しますので、その視点で見ますと全額が課税対象になりそうですね。


いずれにせよ、宗教法人だから非課税という事実はありません。宗教法人であっても、サイドビジネスをする場合は普通に法人税の課税対象となります」


【取材協力税理士】


冨田健太郎(とみた・けんたろう)税理士


税理士はお客様にとって「かかりつけ医」のような存在であるべきと考えております。そのため、当事務所ではお客様との対話を最も大切にしております。よく話を伺い、それを踏まえた最善の提案をご理解頂けるまで何度でも説明致します。


事務所名   : 税理士冨田健太郎事務所


事務所URL: http://zeirishiken.com/



(弁護士ドットコムニュース)


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