サウジ当局が逮捕者収容のため2軒目の高級ホテルを接収

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2017年11月13日 17:42  ニューズウィーク日本版

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ニューズウィーク日本版

<サウジアラビア政府が進める汚職捜査の逮捕者が増え、リッツカールトンに次ぐ2つ目の高級ホテルが王子たちの「留置所」になったもようだ>


サウジアラビア政府が進める汚職捜査の逮捕者が増えすぎて、当局は一時的な留置所として2軒目のホテルを接収することになった。当局は一斉摘発を始めた11月4日頃から、逮捕した王族や富豪、政府高官らを収容するため、首都リヤドにある5つ星ホテル「リッツカールトン」を留置所として使っている。


リヤドの外交施設が集まる地域にある4つ星ホテル「コートヤード・バイ・マリオット」のフロント係は、当局がホテルを接収し、宿泊客を締め出したことを本誌に認めた。


「11月も12月も予約で一杯だったのに残念だ」と、フロントの女性は匿名を条件に語った。予約サイトで調べると、12月は今も最高級のスイートルームが満室状態だ。「当局の上層部が全室残らず予約していった」「突然の指示だった」と、彼女は言う。今ホテルに収容されているのが誰なのかは知らないという。


宮殿のようなリッツカールトンと比べると、今度のホテルは見劣りする。宿泊料金も安く、格付けも星が1つ少ない4つ星だ。


ホテルの利用客は全員が締め出され、別の宿泊先を見つけるよう伝えられた。利用客は憤慨したが、当局の指示だと説明すると「事情を理解してくれた」と女性は言った。「ホテルとしては、謝るしかなかった」


リッツ内部の動画が流出


コートヤードとリッツカールトンの両方を傘下にもつ米ホテルチェーン大手、マリオット・インターナショナルは、本誌の取材に応じなかった。当初、リッツカールトンが王子たちの留置所になっている話題になった時も、取引先や宿泊客のプライバシーを理由にコメントを拒否した。


文化情報省の国際コミュニケーションセンターにも書面でコメントを求めたが、返答はなかった。


リッツカールトンの利用客が突然締め出されたのは、一斉逮捕が始まった今月4日以降と見られている。その後、武装した警備員が監視する中、ホテルの宴会場の床に寝泊まりする人々を映した動画が出回ると、5月にドナルド・トランプ米大統領が宿泊したばかりの高級ホテルが王子たちの留置所になっていると、大きな関心を集めた。


サウジアラビア政府は異例の汚職捜査で、王族や有力な富豪を含む約50人を一斉逮捕した。米金融大手シティグループや米21世紀フォックスなどの大株主で、推定資産額が180億ドルに上る著名な投資家、アルワリード・ビン・タラル王子も逮捕者の1人だ。


拘束された有力者には、元リヤド州知事のトゥルキ・ビン・アブドゥラ王子や、国営石油会社サウジアラムコの取締役であるイブラヒム・アッサーフ元財務相も含まれる。


一斉逮捕が始まったのは、国王の後継者ムハンマド・ビン・サルマン皇太子が新設の「汚職対策委員会」のトップに就任した直後。同委員会は、汚職の容疑者に対する捜査、資産の凍結、渡航の制限などを行う強大な権限を持つ。


支配階級の汚職を裏付けるかなりの証拠が集まったとして、捜査当局は一斉逮捕を正当化する。サウジアラビアのシェイク・サウド・アル・モジェブ司法長官は9日の声明で、汚職による同国の損失額は1000億ドルに上ると明らかにした。「3年間の捜査の結果、過去数十年にわたる組織的な汚職や横領で少なくとも1000億ドルの公金が不正に流用された」


ムハンマド皇太子は、父サルマン国王からの王位継承に向けて権力基盤の強化を進めている。今回の一斉逮捕は、汚職撲滅を口実にライバルの有力王族や富豪を排除し、ムハンマド皇太子への権力集中を狙ったものではないか、とする見方もある。


汚職撲滅であれ権力闘争であれ、ホテルを2軒も接収するのはかなりの規模だ。


(翻訳:河原里香)


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