アジア歴訪で自分は人気者と勘違いしたトランプが危ない

6

2017年11月14日 19:02  ニューズウィーク日本版

  • チェックする
  • つぶやく
  • 日記を書く

ニューズウィーク日本版

<各国の厚遇をトランプは地政学的現実と勘違いしかねない。事実、ドゥテルテがラブソングを歌うと超法規的殺人も不問にしてしまった>


ドナルド・トランプ大統領は旅行好きではないが、外遊先で受けるもてなしはすっかり気に入ったようだ。


トランプは11月13日、アジア5カ国歴訪で受けた待遇について、「おそらく誰も受けたことがない手厚い歓迎だった」と述べた。


どのアメリカ大統領より歓迎された、とトランプが自慢したのはこれが初めてではない。だが「海外におけるトランプ人気」の現実はまったく違う。さまざまな首脳や独裁的な政治指導者からトランプが受ける歓待と、一般の人々の彼に対する考え方が対照的であることは、世論調査や抗議活動が証明している。


シンクタンクのピュー・リサーチ・センターが今春、37カ国で実施したトランプに関する調査によると、外交でバラク・オバマ前大統領よりトランプにいい点をつけた国はたった2カ国だった。また、トランプを信頼していると回答した割合は、37カ国平均で22%にすぎない。


外国政府の歓待は別として、外遊するトランプの不人気を示す証拠は山のようにある。トランプが「誰も受けたことがない歓迎」と口にしたフィリピンの首都マニラでは、多くの人がアメリカ大使館に向かってデモ行進を行った。中には、4メートル大のかぎ十字の形に手がついたトランプ人形を作って燃やした人もいた。


社交辞令を解しない


フィリピン訪問に先駆けてトランプが訪れた日本と韓国でも、トランプに対する抗議デモが行われた。トランプに対する抗議がなかったのは、強権的な政治体制の国だけのようだ。そうした国々では、トランプはメディアから質問を受けたり、一般の人から露骨な敵意を向けられたりすることもない。


トランプは過去にも、行く先々で惜しみなく浴びせられるお世辞を真に受けてきた。7月のフランス革命記念日にパリを訪問した後にトランプが米紙に述べたところによると、フランスに行く気になった理由の1つは、同国のエマニュエル・マクロン大統領から、「フランスではあなたは人気がある」と言われたからだという。しかし、ピュー・リサーチ・センターの調査によれば、トランプを信頼していると答えたフランス人はたったの14%だ。


またトランプは、ポーランドのワルシャワを訪問した時についても、「大変な歓待を受けた」と言っている


トランプが、彼を公然と批判した指導者からすら歓待を受けるのはなぜだろう。確固たるイデオロギーを持たず、態度がころころと変わる大統領に取り入る一番の方法は、大げさなお世辞を並べることだと各国の指導者が悟ったからかもしれない。


欧州外交評議会(ECFR)の外交専門家リチャード・ゴーワンはニュース解説サイト「ヴォックス」(Vox)に対し、「トランプは、お世辞を地政学的な現実と勘違いしかねない」と語った。「アメリカ大統領には、誰もが親切にするだろう。しかしその裏では、政治的な打算を働かせていて、それこそが現実になる」


そうした策略はすでに実を結んでいる。フィリピンのロドリゴ・ドゥテルテ大統領自らが歌うラブソングでもてなしを受けたトランプは、ドゥテルテが推し進める「麻薬戦争」の一環である超法規的殺人(人権団体の推測によると9000人近くが犠牲になっているとされる)について、公の場では一切非難しなかった。


さらに中国では、貿易や北朝鮮問題について、トランプはこれまでの強硬姿勢から一転して態度を軟化させた。


豪シンクタンク、ローウィ国際政策研究所のリサーチフェロー、アーロン・コネリーはCNBCに対して、「他の多くの国々と同様、中国もまた、ポピュリスト的な強硬発言をさせないためには、トランプ大統領を味方に引き入れ、せっせと喜ばせるのがいいと気がついたのだ」と述べた。


トランプは、お世辞ですっかり悦に入っているようだ。彼の人気が錯覚だとしても、お世辞がもたらす効果はきわめてリアルだ。


(翻訳:ガリレオ)




ジェイソン・ルミエール


このニュースに関するつぶやき

  • この歴訪で北というより、中朝に対する包囲網ができた気はする。あとはそこに韓が混ざるかどうかかな。
    • イイネ!1
    • コメント 0件

つぶやき一覧へ(7件)

ニュース設定