「山口組川柳」の味わい深さがじわじわくる

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2017年11月28日 01:00  citrus

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昨今、ちまたにはサラリーマン川柳・オタク川柳・シルバー川柳・奥さま川柳(おくせん)・就活川柳……ほか諸々、いろんな川柳があって、ちょっとした「川柳ファン」である私も、そのうちのいくつかをここcitrusで紹介したこともあるんだが、NEWSポストセブンによると、なんと!とある特殊な業界内では、こんな川柳までが秘やかに出回っているという。

 

山口組川柳である。六代目山口組総本部が年3回発行する『山口組新報』の創刊号から“連載”されている人気コーナーらしく、投稿者は全国に散らばっている現役の組員……なのだそう。とりあえずは、その“傑作”の一部を抜粋してみよう。

 

「このハゲと テレビで流れて 後ろ向く」

「ガード付 命消えども 名は残る」

「代替わり 吐いたツバまで 呑み込んで」

「指一本 スマホと俺を つかう妻」

「俺は内 豆を撒きたい 鬼嫁に」

「正月は 子供見るたび 財布泣く」

「加齢です 医師の所見の 的確さ」

「酒飲んで 出るのは愚痴と 腹ばかり」

「深刻は 情報漏れより 尿の漏れ」

 

「ガード」「命」「ツバ」「情報漏れ」……と、ヤクザ社会ならではの、思わずカタギの人間からすればドキッとする“季語”も局所局所に紛れてはいるものの、おおかた的には「出世コースから外れた俺」や「貧乏」や「老い」や「怖い嫁」……などを自虐する、一見したところサラリーマン川柳となんら変わりない小市民的な作風が大半を占めている印象だったりする。

 

NEWSポストセブンの取材を受けた、山口組分裂抗争に詳しいライターの鈴木智彦氏は、およそヤクザには似つかわしくない(?)川柳をわざわざ機関紙に掲載する理由を、以下のように分析する。

 

「現在のヤクザは、暴排法の締め付けや抗争の影響でシノギ(経済活動)も上手くいかないため、同年代と比べて苦しい生活をしている人が多い。さらに子どもにヤクザを継がせない家庭も増えているため、親族から理解を得られない家庭もある。こうした厳しい現状を分かち合うために掲載されているのでしょう」

 

「ヤクザ」というバックボーンをいったん取っ払って、「川柳の出来・完成度」のみに目を向ければ……正直なところ“ウィット”の面では、サラリーマン川柳を筆頭とする並みいる○○川柳と比べ、少々「物足りない」と、プロの文筆家であり川柳ファンでもある私としては、ジャッジせざるを得ない。

 

その「物足りなさ」の要因には、知識だとか教養だとか、そういうものが絡んでくるのかもしれないが、単純に「全国のサラリーマン」vs「山口組の現役組員」といった“応募者”の分母数の違いが大きいのではないかとも思える。

 

あと、なによりも「シノギの激減」や「いつタマを取られるかわからない職業柄」……と、ギリギリの状況下に置かれるヤクザの人たちは、のうのうと川柳づくりに頭を捻らせる余裕なんてないのではなかろうか。

 

このような「余裕のなさ=切迫感」を上記した作品群にまぶしてみると……「物足りなさ」が逆に味わいとなって、心にじわっと染み入ってくるから不思議なものである。「不謹慎」と言われてしまえば、返す言葉もないのだが。

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