「“シルバーコレクター”と言われちゃうのは、まあしょうがないんでね。一時は自分が原因なんじゃないかと思うことも多少はありました。これだけ長くいるのは自分しかいないのに毎回2位だったら……。けど、やっと返上できて感無量です」
2017明治安田生命J1リーグ最終節、大宮アルディージャに5−0と快勝した川崎フロンターレが悲願のクラブ初タイトルを獲得。2003年から在籍し、川崎一筋を貫く中村憲剛の表情はいつにも増して晴れやかだ。
川崎が勝利を収めたとしても、鹿島アントラーズが勝てば栄冠を逃してしまう。鹿島の結果は耳に入っていなかったそうだが「ベンチからチームメイトが出てきた瞬間に意味が分かった」。タイムアップのホイッスルが鳴り響き、等々力陸上競技場のオーロラビジョンに『磐田 0−0 鹿島』と映し出された瞬間、中村はピッチ上に崩れ落ちる。苦節15年、ようやく初栄冠を掴み取った瞬間だった。
そして迎えた表彰式。しかしながら、鹿島が試合を行っていた静岡県のヤマハスタジアムに優勝シャーレがあるため、シャーレが描かれた“風呂桶”を掲げることに。
「これもフロンターレらしいなと(笑)。『えっ?』って思いましたけど、もうしょうがねーかなって(笑)」
川崎といえば、この風呂桶のように趣向を凝らしたイベントを実施することでも有名で、ファン・サポーターからの満足度も非常に高い。「ピッチ内外でエンタメ要素が盛りだくさんのチームが優勝することは、また一つ新たな歴史を作れたと思います。みんながハッピーになるのがフロンターレの目標。そういうクラブがサッカーの結果も伴って優勝するというのが、俺の悲願でもあったのでね。自分たちが今までやってきたことは間違いじゃなかったと証明できた」。川崎を誰よりも愛する背番号14は、そう胸を張った。