■大谷“争奪戦”に敗れたが…
メジャーリーグのオフシーズンで今、「ウィナー(勝者)」はヤンキースと噂されています。確かに大谷翔平争奪戦で最終面接まで残れなかったのはサプライズでしたが、その後の補強は目を見張るばかりです。
まず、マイアミ・マーリンズからナ・リーグの本塁打王(59本)、打点王(132点)、MVPに輝いたジャンカルロ・スタントンを交換トレードで獲得しました。これで52本のアーロン・ジャッジと合わせ“111本塁打コンビ”が完成。他チームにとって脅威になっています。
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また、1300万ドルの契約を残していたチェース・へドリーをパドレスに放出し、給料総額に余裕を持たせ、そして、14勝を挙げた後にFAになっていたCC・サバシアと1年1000万ドルという手頃な条件で再契約を果たしました。
■ヤンキースにフィットする「性格」とは?
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しかし、最大の補強は、ジョー・ジラルディ監督の後任にアーロン・ブーン氏を据えたことかもしれません。ブーン氏は2009年に引退したばかりの44歳。データ分析に精通した若手監督を登用するのがメジャーの流行にもなっていますが、コーチ経験もないだけにギャンブルと見る関係者も少なくありません。しかし、その経験不足を補うに余りあるのが彼の「性格」で、ニューヨークにはまさにフィットするといわれています。
ブーン氏は野球の超エリート家族で育ちました。親子孫の三世代にわたりメジャーリーグでプレーした最初のファミリーです。
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祖父のレイ・ブーンは1950年代に三塁手としてタイガースなどで活躍、父のボブ・ブーンはフィリーズ、エンゼルスなどで捕手として活躍した後、ロイヤルズ、レッズで監督を務めました。兄のブレット・ブーンはマリナーズなどでプレーしました。そして、アーロンは、レッズを皮切りに6球団でプレー。ヤンキースには松井秀喜が所属していた2003年途中に加入し、同年のレッドソックスとのア・リーグ優勝決定シリーズ第7戦でワールドシリーズ進出を決めるサヨナラ本塁打を放ちました。ブーン・ファミリーは4人全員がオールスターに出場もしています。
■勝てば崇められ、負ければ批判にさらされる
ブーン氏は、幼少期からクラブハウスに出入りし、ベースボールとともに育っただけでなく、6球団も渡り歩いたことにより、冷静さとコミュニケーションスキルを身に付けたといわれています。
「私は一貫性のあるタイプの人間だ。好調時でも、そうでないときでも、同じように振る舞える」
勝ったときには崇められ、負けると厳しい批判にさらされるニューヨークでは、まさにこういう指揮官が最適といえるでしょう。
米国では、メジャーリーグの監督も「アメリカン・ドリーム」のひとつといわれています。華麗なる一族から二代続けてメジャーリーグの監督に就任したブーン氏は、大いなる期待を背負ってピンストライプのユニホームに再び袖を通します。