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働き始めて1週間で会社が売却されることに! 正社員採用だったはずなのに...悪質すぎる求人詐欺

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2017年12月28日 15:51  リテラ

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リテラ

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 ブラック企業の経営者には、大きく分けて3種類のタイプが存在すると思う(異論は認める)。



 1つめは、自身の労務管理が違法であると自覚した上で、しかし儲けるためにそのことを利用する生粋のブラック経営者である。このタイプはズル賢く、法の抜け道やどうやったら労基署に睨まれないかといったことを考えたりもする。イメージとしては、IT業界などの新興産業に多い印象がある。



 2つめは、社長=万能と勘違いしているタイプである。最近、「会社の法律は俺だ」などと豪語したエステサロン経営者が話題になったが、彼はそのタイプであろう。この連載に登場するのも、このタイプが多いかもしれない。このタイプは、往々にして墓穴を掘ることも多く、裁判などで自滅することもしばしばある。中小企業のワンマン社長にこのタイプが多い印象である。



 そして、3つめは、自分のやっていることの違法性がよくわかっていない、いや、そもそも「適法なのか違法なのか」といったことをあまり考えないタイプである。このタイプには、悪意がなく罪の意識も薄い場合がある。優しい性格だったりもするので、働く人の側もブラックであると認識していない(認めたくない?)場合もある。



 しかし、ブラックはブラック。黒は黒である。今回は、もしかしたら最も多いかもしれないこの3番目のタイプの事例を紹介したい。



 ブラック企業といえば1番目・2番目のタイプを思い浮かべがちだが、読者の皆さんも3番目のタイプの被害に遭っているかもしれないことを注意して欲しい。



●働き始めてたった1週間で、会社が売却されることに!



「騙されました!!」

相談者のAさんは悔しい思いをにじませながら、自身の置かれた状況を説明してくれた。



 Aさんは女性の薬剤師、相手方はM薬局である。M薬局は都心の一等地にあり、経営者であり自身も薬剤師であるK氏は、やはり一等地に自宅を構えた資産家でもあるという。



 Aさんは、相談日の2週間ほど前に正社員として雇われた。子育てのためにしばらく現場を離れていたAさんであったが、お子さんも大きくなり、薬剤師として復帰しようと長く働ける職場を探していた。先に決まりかけていた薬局を断り、より働きやすそうなM薬局を選んだ。



 働き始めて1週間。Aさんは社長のK氏から衝撃的な発言を受ける。

「2カ月後にこの薬局を売ってしまうんだけど、Aさんどうする?」



 詳しく話を聞いてみると、どうやらこういうことらしい。M薬局の経営は芳しくなく、K氏は半年以上前からM薬局を丸ごと事業譲渡してしまおうと考えていた。そして、ついに売却先が決まったのだという。しかし、売却先に全ての従業員は受け入れられない。そのことを知った従前の従業員は、早々に転職先を見つけて退職していった。Aさんの予想では、その人手不足を補うために自分が雇われたのではないかという。そして、入社した直後に、事業譲渡をすることを告げられたのだ。



 事業譲渡の場合に雇用関係がどうなるのかということを確認しておこう。ある会社とある会社との間で事業譲渡が行われる場合、譲渡の対象となるものの範囲は事業譲渡契約(つまり、会社どうしの契約)の内容によって決まる。雇用が受け継がれるのかどうかについても、契約の内容次第だ。さらに、譲渡の対象になったとしても、雇用関係の移転については労働者(今回はAさん)の同意が必要となる。



●求人詐欺の典型!正社員募集なのに「はじめは試用期間」「はじめはみんな有期契約」



 今回の事業譲渡に関していえば、Aさんの雇用も一応譲渡対象になっているという。しかし、その場合も半年足らずで契約は終了となると言われているらしい。正社員としての契約が引き継がれれば、譲渡先でも正社員として扱われるはずである。



 不思議に思った私は、契約書を確認させてもらった。やられた......!契約期間が半年になっている。「はじめは試用期間だから」とか、「みんなはじめは有期契約で入ってもらうんだ」などという説明はブラック企業の常套文句であり、いわゆる求人詐欺(求人内容と実際の労働条件が異なること)の典型例である。これでは譲渡先に雇用関係が移転しても、半年で切られてしまう可能性が高い。



 Aさんは譲渡先への移転は望んでおらず、M薬局も直ちに辞めたいと考えていた。しかし、M薬局やK氏に対して、何らかの責任追及をしなければ気が済まないという。



 事業譲渡契約がたった1週間で決まるはずはなく、Aさんの採用を決めた時点でかなり話が進んでいたはずである。あるいは、その時点ですでに話はついていたのかもしれない。そして、そのことを隠したまま正社員として(契約書上は有期社員として)Aさんを雇っている。このことは、労働者に対する重大な説明義務違反に該当するのではないか。私は、求人詐欺を行った点と併せて、このことについて損害賠償責任を追及してはどうかと考えた。



 Aさんは裁判などによって長期化することは避けたいということで、早速交渉を開始することとした。私が代理人になったことを通知した後、K氏との初対面のときを迎えた。



 さて、どんなブラック経営者が出てくるやら......。



「ど〜も、この度はご迷惑をおかけしまして」

先に待っていたその人は、いかにも人の良さそうな年輩の紳士であった。

「私、法律なんかには全く疎いものでして......今回ご連絡をいただくまでは何か悪いことをしていたということすらわかりませんで」

......拍子抜けである。しかし、その後のK氏の話を聞いていると、ふつふつと怒りがこみ上げてくる。



●労働者をコマとしか考えず、罪悪感すらもたない経営者



 事業譲渡について説明せずにAさんを雇った理由について、「いや〜、売り抜くまでしのがなくてはと思いましてね。でもどんどん従業員が辞めてしまうので......誰か来てくれないかと求人を出したんですよ。Aさんが入ってくれて助かりましたよ〜。よし、これでなんとかしのげると思いました。」



 そう笑顔で語るK氏の言葉から罪悪感を読み取ることはできなかった。労働者はコマではない。すぐに売却される店をたった2カ月もたせるために、労働者を騙して雇い入れる。それによってAさんはもう一つの就職先を断っている。Aさんは不安を抱えてまた就職活動をしなければならないのだ。



 契約期間が半年になっていることについては、私の予想とは異なり、

「それはむしろ『半年は働いてもらいますよ』という意味なんですよ。すぐに辞められては困りますからね。」

 どこまでも自分と会社のことしか考えていないのだな、と感じた。



 表情を変えまいとこらえていた私をよそ目にはにかんだK氏は続ける。

「いや〜、先生からいただいた通知を妻に見せたら、『それはあなたが悪いわよ』と言われてしまいましてね〜。それではじめてAさんに悪いことをしたのだと知りまして〜。」



 思いっきり説教してやろうかと思ったが、一通りK氏の話を聞いた上で、K氏の行為は重大な説明義務違反にあたること、それを理由とする損害賠償請求をする意向である旨を話した。丁寧な説明を試みたところ、K氏はあっさりと非を認め、こちらの要求をほぼそのまま受け入れる形で、合意退職と○ヶ月分の解決金の支払いに応じた。



 故意に違法な労務管理を行うブラック経営者ももちろん問題だが、労働法規の無知・無関心によって労働者を苦しめるのであれば、それは等しく罪深い。読者の皆さんやその周りの方は、自身の労働条件・労働環境に不満を抱きながらも、「でも社長悪い人じゃないから」などという理由でその状況を甘受してはいないだろうか。



 今回のAさんは、正常に怒りを抱き、正常に対応した。Aさんのように声を上げる人が、当たり前であって欲しいと思う。



 なお、Aさんはその後無事に次の就職先が決まり、現在は新しい職場で働いているようだ。



【関連条文】

不法行為→ 民法709条



契約を締結するか否かにとって重要な説明を行わずに契約を締結させ、それによって損害を生じさせた場合、説明義務違反として不法行為に該当する場合がある。

(市橋耕太/東京合同法律事務所 http://www.tokyo-godo.com)



********************

■ブラック企業被害対策弁護団

http://black-taisaku-bengodan.jp

長時間労働、残業代不払い、パワハラなど違法行為で、労働者を苦しめるブラック企業。ブラック企業被害対策弁護団(通称ブラ弁)は、こうしたブラック企業による被害者を救済し、ブラック企業により働く者が遣い潰されることのない社会を目指し、ブラック企業の被害調査、対応策の研究、問題提起、被害者の法的権利実現に取り組んでいる。

この連載は、ブラック企業被害対策弁護団に所属する全国の弁護士が交代で執筆します。


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