逗子ストーカー殺人、情報漏らした市職員の責任は? 情報公開請求で聴取のやりとり判明

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2018年01月27日 10:12  弁護士ドットコム

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2012年に神奈川県逗子市で起きたストーカー殺人事件に絡み、元交際相手に刺殺された女性(当時33)の住所を当時の市職員が加害者側に漏らしたとして、夫が市に慰謝料など1100万円を求めた訴訟は、横浜地裁横須賀支部が1月15日に110万円の支払いを市に命じた判決が確定する見込みとなった。


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市が控訴しない方針を示しているほか、神奈川新聞などの報道によれば夫(原告)も控訴しない方針を示したという。


今回の裁判では、女性の夫を装った調査会社の男に市職員が情報を漏らしたことが地方公務員法上の守秘義務違反に当たるとして、市の過失が認定された。事件前、女性の要望によって情報には閲覧制限がかかっていた。一方、市側は情報漏えいの相手方の真の目的を知らなかったとして、判決は慰謝料の額を110万円にとどめた。


●110万円という金額に疑問の声

この110万円という金額について、判決の報道を受けたTwitterなどSNSの反応は厳しいものだった。「命の値段として安すぎる」「税金から払うのではなく当時の市職員に負担させるべきだ」などの声が上がった。


●職員への聴取わずか9分、逗子市に情報公開請求

そこで弁護士ドットコムニュースでは2018年1月、逗子市に対して情報公開請求を実施。守秘義務違反と認定された当時の市職員に対する市の聴取結果の開示を求めた。開示された内容(概要)は以下のとおり。市職員(当時63)は再任用職員として、総務部納税課の主事をしていた男性だ。


面談(聴取)実施日:2012年12月12日(水)14時12分ー14時21分


面談対応者:総務部次長


【質問】対象者(被害者の女性)を照会した時間に在席していましたか。


【回答】記憶にない。問い合わせがあったかどうかもわからない。


【質問】日常業務時に他の職員がログインした住基システムを使用することはありますか。


【回答】窓口に置いてあるパソコンについては色々な人が確認できる。通常は自席のパソコンを使用する。


【質問】当日、照会をしたパソコンを使用した記憶はありますか。


【回答】当然使用している。


【質問】対象者について照会した記憶はありますか。


【回答】記憶にない。


市による聴取は、この1回でわずか9分間だけ。市は2014年2月28日、この市職員が住所を漏らす守秘義務違反行為をしたとして、1か月の停職処分とした。そのまま再任用期間が満了し、3月末をもって退職したという。


●逗子市、市職員に110万円求める可能性も

また、110万円という金額をどう支払っていくつもりなのか、市の見解も聞いた。


総務部総務課は「判決が確定した際には、市予算から賠償金をお支払いいたします」と回答。根拠として、国家賠償法で、一義的に公共団体(逗子市)が損害賠償をするよう定められていることを挙げた。


ただ、損害を与えた行為に「故意又は重大な過失」があったときには、公共団体(逗子市)は、その公務員に対して求償権を有する規定があり、「この権利を行使するかは、今後、慎重に検討してまいります」とした。


求償権とは、債務者の債務を肩代わりして払った者が、その債務者に対してもつ返還請求権のこと。つまり、逗子市は賠償金をいったん支払った上で、当時の市職員に対して110万円を返すよう求めることを検討する方針だ。



(取材:弁護士ドットコムニュース記者 下山祐治)早稲田大卒。国家公務員1種試験合格(法律職)。2007年、農林水産省入省。2010年に朝日新聞社に移り、記者として経済部や富山総局、高松総局で勤務。2017年12月、弁護士ドットコム株式会社に入社。twitter : @Yuji_Shimoyama


(弁護士ドットコムニュース)


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