親が認知症かも?遺産相続でトラブルにならないために気を付けたいこと

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2018年02月05日 08:12  JIJICO

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認知症になった場合、財産管理は重要事項の一つ


高齢になれば発症のリスクが高まる認知症。2012年では認知症高齢者数が462万人、65歳以上の7人に1人。2025年には5人に1人になると言われており、身近な人が発症することも十分考えられます。


参照 内閣府ホームページ(高齢者の姿と取り巻く環境の現状と動向)


例えば親が認知症になった場合、介護や病気等の治療をどうするか、など考えることはたくさんあるのですが、その他に財産の管理も重要事項の1つです。


介護などの延長上で親の財産を管理するケースもありますが、本人に判断能力が全く無くなってしまった場合、財産管理も難しく、状況により口座のお金が動かせなくなったり、必要な契約を行えなくなります。


財産の管理方法では「成年後見制度」の活用が増えている


そういった方のために、成年後見制度があります。成年後見制度とは、財産管理・身のまわりの世話のために介護などのサービスや施設への入所に関する契約締結が行えない方、わからずに自分に不利益な契約を結んでしまい,悪徳商法の被害にあうおそれがある方を保護するものです。本人に代わり、後見人が法律行為等を行うことになります。


特にご本人に判断能力がない場合は、家庭裁判所に申し立て法定後見人を選任してもらいます。(判断能力があるうちに代理人を選択する場合は任意後見人となります。)


以前は、子など近い親族が代理人となるケースが多かったのですが、現在では弁護士や司法書士など、専門家に管理をお願いすることが多く全体の70.1%となっています。


参照 内閣府ホームページ(成年後見制度の現状)


この後見人の権利、かなりスゴイのです。本人の代わりに契約まで行える、ということは、預貯金を引き出すのはもちろん、不動産の売却も行えてしまう・・・だからこそ、後見人になった弁護士や司法書士など専門家による横領なども大きな問題となっているのです。数千万単位の横領を行うケースもあり、2016年1年間で26億円の被害が出ています。


後見制度支援信託は現金のみ管理可能


上記のような被害の防止策として、後見制度支援信託が導入されました。後見制度支援信託とは、家庭裁判所の指示に基づき、必要なお金以外は財産管理のために信託に活用して管理する仕組みです。


後見人が管理する預貯金口座に日常の支払いに必要な金額を交付し、信託財産からの支出は家庭裁判所の指示書が必要。不正に横領することができなくなりました。


ただし、後見制度支援信託に預け入れできるのは現金のみで、不動産等の財産は管理してもらえないことに要注意です。


参照 信託協会ホームページ(後見制度支援信託)


そのため、残念ながら後見人等による横領等の被害を100%防ぐ方法がないのが現状なのです。


本来であれば、相続するはずだった財産を、財産を管理するはずの後見人に横領されてしまっては、本末転倒ですよね。相続でトラブルにならないためには、プロに任せたからと安心せず、こまめのチェックが大切と言えます。


親族が後見人になる場合に気を付けたいこと


また、親族が後見人になるケースもあります。親族の場合は、財産の線引きが甘くなり、ついつい使い込んでしまう、と言ったケースがあるようです。


介護や治療方針とともに、財産の状況等についても、期間を決めて確認するようにしましょう。面倒と感じる方もいらっしゃると思いますが、かかった費用等は領収書を取っておくなど、明確に把握できるようにまとめておきましょう。


多額の資産がない家でも相続トラブルは十分起こりえる


実は、100万円〜数百万円程度の遺産がある家で相続トラブルに発展するケースが多いのです。多くの財産があるご家庭では、早めの準備をしている方も多いのですが、「自分には財産がほとんどないから」と準備を全くしていないため、トラブルが多いとも言えます。


元気なうちに遺言書などの準備をすることはもちろんですが、財産を保険や信託等により財産の管理者や受取人を確定しておいたり、親族に財産をどうしてほしいのか、あらかじめ伝えておくなどトラブルに発展しない備えをしておきたいものです。



(佐々木 茂樹・ファイナンシャルプランナー)

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