【今週の大人センテンス】小泉今日子の「恋愛宣言」は静かにスルーで十分

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2018年02月06日 16:00  citrus

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写真:Rodrigo Reyes Marin/アフロ

巷には、今日も味わい深いセンテンスがあふれている。そんな中から、大人として着目したい「大人センテンス」をピックアップ。あの手この手で大人の教訓を読み取ってみよう。

 

第85回 キョン²力で安っぽい批判を一蹴

 

「自分の罪は、自分で背負って生きていきたいと思っております。お騒がせしてすいません」by小泉今日子

 

【センテンスの生い立ち】

2月1日、小泉今日子(52)が自らが設立した制作会社「明後日」のホームページで、所属事務所「バーニングプロダクション」から独立することを発表した。同時に、一部で交際が伝えられていた俳優・豊原功補(52)と恋愛関係にあることを宣言。これまで自らが発言しなかったことへの後悔の念や、豊原の家族に対するお詫びの気持ちも表明した。翌2日の夜、主演する舞台の稽古場を訪れた小泉をマスコミの取材陣が直撃。「結婚するのか?」という問いかけを否定するなどきちんと質問に答え、最後は上の言葉とともに頭を下げた。

 

【3つの大人ポイント】

  • 批判は承知の上で現状と気持ちを正直に表明した
  • 微妙な話題を絶妙のタイミングで繰り出している
  • あれこれ騒ぐ世間のトホホを浮き彫りにしている

 

一時期、ツイッターのことを「バカ発見器」と呼ぶことが流行りました。もしかしたら「不倫報道」も、同じ機能があるかもしれません。ムキになって「ケシカラン!」「汚らわしい!」と怒れば怒るほど、したり顔で「奥さんや子どもの気持ちを考えろ!」と正義感ぶれば正義感ぶるほど、ああ、この人は「叩いていい標的」を見つけて喜んでいるんだな、日頃からたくさんの不満を抱いているのかなと、憐みに近い気持ちを抱いてしまいます。

 

でも、自分自身は「正当な怒り」で「意味のある批判」だと思い込んでいるので、こういう言い方をされるとさらにムキになりがち。そこでまた、客観的に自分を振り返る発想がカケラもないことなど、残念な部分が念入りに露呈してしまいます。いいじゃないですか、いい大人同士が自分の責任と覚悟でやってることなんですから。もちろん当事者はいろいろたいへんだろうし辛い思いをする人もいるでしょうけど、他人には関係ない話だし、あなたが成り代わって怒ったり心配したりするのは大きなお世話です。そもそも、不倫するかどうかはさておき、誰だってそれほど清廉潔白に生きているわけではありません。

 

こんなふうに記事のネタにしておいて何ですが、小泉今日子がホームページに掲載した「(豊原功補氏とは)一部の週刊誌などで報道されている通り恋愛関係でもあります」宣言は、ああそうなんだとスルーすれば十分ではないでしょうか。ここでは、本人たちの行動や決断にあれこれ言いたいわけではなく、何かとうるさい世間やメディアに対して、けっしてホメられることはしていない側が自分たちのことをどう語るか、というところに着目させてもらいたいと思います。これもまた大きなお世話に他ならないと自覚しつつ。

 

「ご報告」では、まず最初に36年間お世話になったバーニングプロダクションから独立したことを報告し、なぜ独立したかやこれからやっていきたいことを説明。続いて豊原功補と恋愛関係にあることを宣言し、これまでの思いをたっぷり綴っています。

 

設立当初から力をお貸し頂いている俳優豊原功補氏は同じ夢を追う同士だと思っております。また一部の週刊誌などで報道されている通り恋愛関係でもあります。(中略)インターネットや雑誌などには既に離婚されているという誤った情報が流布されており、そのためにご家族の存在自体が伏せられたような形で報じられ続けてしまいました。この一連の報道に対して豊原氏からの発言の機会を奪ってしまったのも私の行動に一因があったのかもしれません。このようなことになりご家族にはお詫びの言葉もございません。そして今まで自らが発言しなかったことには後悔の念しかありません。

 

最後は「事務所から独立した今、一個人として全てをこの身で受け止める覚悟でございます。私事では御座いますが、人間としてのけじめとしてご報告させて頂きます。」と締めています。独立という重要な報告の中で、本題以上にたくさんの行数を使って、聞かれてもいないのに自分から微妙な話題に触れたのは、書いてあるとおり彼女が考える「人間としてのけじめ」だったのでしょう。

 

翌日、小泉今日子は舞台の稽古場近くでたくさんの記者に囲まれ、質問攻めに遭います。なんてったってキョンキョンが衝撃の告白をしたわけなので、マスコミとしては張り切らざるを得ません。「豊原さんとは結婚するんですか?」という質問に対しては、「文書をちゃんと読んでください。結婚するとかそういうことではございません」と否定し、最後にしっかりした口調で「自分の罪は、自分で背負って生きていきたいと思っております。お騒がせしてすいません」と言って頭を下げました。

 

「ご報告」にも記者との受け答えにも、これまで積み上げられてきたキョン²力が存分に発揮されています。当然、批判を受けるのはわかっていたでしょうけど、事務所からの独立を機に自分に都合が悪いことを果敢に発表しました。ちょうど小室哲哉の一件で、不倫に対する世間の風向きが少し変わってきた背景があるのも、偶然なのか背中を押す一因となったのかはわかりませんが、絶妙のタイミングです。文面からそこはかとなく、今までバーニングプロダクションに発言や行動を制約されていたことに対する遠回しな恨み節が漂っているようにも感じますが、それは深読みしすぎですね。すいません。

 

堂々と発表されて、はっきり覚悟を示されると、マスコミも「世間」も目を吊り上げて批判すればするほど、自分たちのトホホっぷりが浮き彫りになってしまいます。「今までさんざん不倫を叩いてきたのに、小泉今日子は批判しなくていいのか!」というヘンに生真面目な声もありますが、無理に叩き続けなくても誰も困りません。他人を叩いて喜ぶ品のない風潮への違和感が広がって、「ホメられることではないけど、ほっとけばいいんじゃないの」という大人な気運が高まっているとしたら、それはそれでけっこうな流れです。

 

小泉今日子も相手の豊原功補も、これからたいへんな道のりが待っているでしょう。「自分の罪は、自分で背負って生きて」いくと決めて選んだ道ですから、それはやむを得ません。私たちとしては、俳優なり歌手なり、エンターテイナーとしてのふたりの活躍を見せてもらって、満足したり不満を覚えたりすればいいこと。有名人の私生活のややこしい話をいかに静かにスルーするか、私たちの大人力が厳しく問われていると言えるでしょう。誰に問われているのか、できなかったら誰が困るのか、そのへんはよくわかりませんけど。

 

【今週の大人の教訓】

何に対してどんなふうに怒るかで、その人の本性が浮かび上がってくる

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