「女性社員の首すじに息をかける」問題行為オンパレードの社員、刑事事件にできる?

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2018年02月09日 10:22  弁護士ドットコム

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「女性社員の首すじに息をかける」「男性社員の尻をつかまえ、性行為の擬似行為を強要する」など、卑猥な行為のオンパレード。困り果てているので、警察に逮捕してもらいたいーー。会社にいる問題社員についての相談が弁護士ドットコムの法律相談コーナーに寄せられました。


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相談者によると、その男性社員は上司がいない隙に、「女性社員の手にキスする」「女性社員の顔に屁をこく」「女性社員の身体に不必要にボディタッチ」といった女性社員へのセクハラだけでなく、「男性社員の家庭の性事情をわいせつな言葉で確認する」「わいせつな言葉をメールで男性社員に断続的に送付する」など男性社員に対してもこうした行為を行っているようです。


社員皆が怖がってしまっているため、相談者は社内の懲戒処分ではなく、「被害届を出して逮捕できますか?」と刑事処分を求めているようです。会社を経由せず、一社員が告訴するのは適切なのでしょうか。警察に相談すれば刑事事件になる可能性はあるのでしょうか。鬼沢健士弁護士に聞きました。


●迷惑防止条例違反の可能性

「セクハラ男性社員に対して、会社を経由せずに告訴することは1つの有効な手段だと思います。セクハラをしている人物が最もおそれるのは刑事事件になることですからね」


鬼沢弁護士はそう指摘する。どのような罪に当たるのだろうか。


「強制わいせつ罪や軽犯罪法違反、『迷惑防止条例』など各都道府県が定める条例にあたることが考えられます。


このうち強制わいせつ罪は刑法176条が『暴行又は脅迫を用いて』という要件を定めています。社内での行為がこれらにあたることは少ないといえるでしょう。セクハラが刑事事件になるのは、迷惑防止条例違反であることが多いと思います」


●被害届を出すことは可能だが…

社員が被害届を出すことは可能なのでしょうか。


「具体的なセクハラ行為が、これらの犯罪にあたる場合にはもちろん被害届を出すことは可能です。しかしながら、セクハラ行為だからといって必ず犯罪にあたるわけではないことには注意が必要です。


警察は「証拠がない」などとして、被害届の受領に消極的であることが珍しくありません。ですから、証拠を集めることが大事です。証拠がないときには供述の信用性が判断されるわけですが、警察は民事事件には介入しません。セクハラ事件を民事事件の延長だと認識してしまうのです。


また、示談が成立することで被害届や告訴を取り下げることが多く、警察は被害届や刑事告訴を示談成立のための交渉材料に使われることを警戒している節がありました。警察が捜査を開始しても無駄になることを懸念していたのですね。


しかし平成29年の刑法改正で強制わいせつ罪は、被害者の告訴がなくても起訴できるようになりましたから、今後は警察の対応も変わってくるかもしれません」


(弁護士ドットコムニュース)



【取材協力弁護士】
鬼沢 健士(おにざわ・たけし)弁護士
交通事故、労働、家事問題(離婚・相続)を取り扱う。
事務所名:じょうばん法律事務所
事務所URL:http://www.jobanlaw.com/


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