限定公開( 2 )
<ロシアゲートでのトランプ包囲網が狭まるなか、公開を決めた機密文書と注目の人物とは>
2016年の米大統領選挙ではロシアがトランプ陣営と結託し、選挙に不正介入してトランプの勝利に加担したのではないか――いわゆるロシアゲートをめぐって、トランプ米大統領と司法省・FBIはつばぜり合いを続けてきた。
これまでのところ、独立捜査を率いるムラー特別検察官の優勢に見えていた。17年10月末に元トランプ陣営選対本部長ポール・マナフォートらを起訴。陣営の外交政策顧問だったジョージ・パパドプロスがFBIに対する偽証を認めて司法取引に応じたことも明らかになった。さらに今年1月、数週間以内にトランプ本人を聴取する計画も伝えられるなど、包囲網が形成され始めていたからだ。だが、このところ目につくのはトランプ側の反撃だ。
1月25日には、トランプが17年6月にムラーを解任させようとしていたことが発覚。このときは顧問弁護士に諭され矛先を引っ込めたとされるが、1月29日にはマケイブFBI副長官を事実上の辞任に追い込んだ。トランプは、マケイブの妻が15年のバージニア州上院選に民主党から出馬した際、クリントン元国務長官に近い政治団体から寄付を受けたことを理由にマケイブの政治的偏向を非難していた。
トランプは2月1日、新たな攻撃材料を手に攻勢に出たが、その手法をめぐり米政界が揺れている。トランプはFBIの捜査が反トランプに偏向していると指摘し、証拠となる下院情報特別委員会の機密文書を公開するとしたのだ。共和党が牛耳る議会もこれを承認し、ホワイトハウスもゴーサインを出した。
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FBIは文書の公開に「深刻な懸念」を示し、司法省も危惧を表明した。野党の民主党も黙ってはおらず、そもそもこの文書は共和党が虚偽の内容を加えた「偽造」だと反論。トランプが捜査の信頼性を損ねさせ、ムラーを解任する口実に文書を使う恐れがあると指摘した。
結局、翌2日に文書は公開された。それは共和党議員の指示で作られ、ロシアゲートの捜査線上に浮上したカーター・ページという男をFBIが不正に盗聴・監視していたという内容だ。
プーチン系大学で講演も
FBIは捜査対象を通信傍受する権限を持つが、その際は外国情報活動監視裁判所に許可申請する必要がある。ただ共和党は、FBIがページに対する通信傍受令状を取得したとき、民主党が作成した反トランプの調査報告書を申請根拠としたことを問題視。実際、報告書作成には民主党の資金が一部使われており、令状の延長申請をした際にはこの事実を隠したとされる。
その真偽はさておき、渦中の文書で注目を集めるカーター・ページとは何者なのか。彼は大統領選でトランプの外交政策顧問を務めた1人で、それ以前は米投資銀行メリルリンチのモスクワ支店で勤務するなどロシア通だったとされる。
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顧問としてのページの実力を疑問視する声もあるが、FBIにとってはロシアゲートにおける「最初の標的」だった。16年7月、ページはモスクワにある親プーチン大統領といわれる大学で講演を行っており、これはFBIがトランプ陣営とロシアとの関係を疑った端緒とされる。
機密文書公開というトランプの賭けが、吉と出るかは分からない。ページが13年の時点で、要注意人物として複数の情報機関から注目されていたのは確か。それにパパドプロスを寝返らせたムラーのこと、ページが有罪だった場合の司法取引を用意している可能性も十分にある。
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前川祐補(本誌記者)
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