セメント彫刻の雌を愛し続けるカツオドリの雄(画像は『Metro 2018年2月2日付「Nigel the lonely gannet dies alone after falling in love with a concrete decoy」』のスクリーンショット) プロポーズに「生涯、君を愛する」と誓う人もいると思うが、このほどニュージーランドでコンクリート製のデコイ(鳥の模型)に対して、決して実らぬ恋を捧げたまま一生を終えてしまったカツオドリの話題が届いた。恋に落ちてしまった相手が相手だけに人々の心には切ない気持ちが湧いてしまったようだ。『Metro』『The Guardian』などが伝えている。
【この記事の動画を見る】 ニュージーランド北島、首都ウェリントンから約25キロにあるマーナー島は捕食者のいない自然が多く残る穏やかな島である。そのマーナー島には数羽のカツオドリが生息している。これは1976年に80体のコンクリートで作ったカツオドリのデコイを島の南西部に設置し、彼らを呼び寄せるという試みの賜物である。
実は島の本格的な自然再生プロジェクトが開始されたのは、1990年代に入ってからだった。近隣住民と自然保護団体「Friends of Mana Island、以下FOMI」、ニュージーランド自然保護局(DOC)らがタッグを組んで活動を始めたことによる。そして設置から37年経った2013年に2羽の雄が島にやって来たのだ。
2羽はナイジェルとノーマンという名前が付けられ、ボランティアの手により定期的に観察された。ナイジェルはデコイのカツオドリに恋してしまったようで、デコイに寄り添い甲斐甲斐しく巣を作り求愛の行動で彼女の愛を得ようする姿が見られた。『BBC News』によると5年近くもの間、ナイジェルはデコイの元を去ることはなかったという。
FOMIはナイジェルのためにも、雌のカツオドリを惹きつけるため鳥の鳴き声のするスピーカーを設置したり巣を移動するなどの試みを行った。デコイにおいては2016年にペイント修復され、その甲斐あって2017年12月に新たに3羽のカツオドリがやって来た。
しかし、ナイジェルの気持ちは他のカツオドリに向くことはなく、決して自分に振り向くことの無い伴侶と頑なに一緒に過ごしたのである。そして先月に3人のボランティアが島を訪れた際、デコイのそばに寄り添ったまま亡くなっているナイジェルの姿が発見された。
ナイジェルという名は親しい友人がいないことを意味する「ナイジェル・ノーフレンズ(nigel-no-friends)」というスラングからとったものだ。その名にちなんだ通り、寂しく孤独のままこの世を去ってしまったナイジェルのことを多くの人達は悲しんだ。
ネット上では「ただただ、悲しい」「彼がかわいそうでならない。本当に悲しい話だ」といった声もあるが、中には「すごく可哀そうだけど、ナイジェルにとって物静かな彼女が最高の相手だったんだと思う。多分、前の恋人はすごくお喋りで懲りたのかもしれない」という意見もあった。
ナイジェルの死を発見したDOCのレンジャー(監視員)のクリス・ベルさんは次のように話している。
「これは物語のエンディングとしては悲しすぎる。ナイジェルはこれからという時に死んでしまったのです。」
「何年もコンクリートのパートナーと過ごした挙句、死んでしまったなんて、本当に悲しいことです。こんな終わり方は残念です。あと数年生きていることができたなら、違うパートナーを見つけてつがいとなっていたかもしれないのです。」
「ただ、一つだけ言えるのは、ナイジェルの偉業はカツオドリがコロニーを築く最初のきっかけとなったことです。他のカツオドリが島にやって来たのは彼がいたからといっても過言ではありません。」
現在、ナイジェルがどのように死亡したのか調査が進められている。
画像は『Metro 2018年2月2日付「Nigel the lonely gannet dies alone after falling in love with a concrete decoy」』のスクリーンショット
(TechinsightJapan編集部 MasumiMaher)