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<さまざまな疑問は残りつつも人工肉市場が急拡大している。いつか本物の肉の味を知らない子供も出てくるのか...>
肉の代替食品「クォーン(Quorn)」の存在感が増している。日本では見かけないこのクォーンだが肉によく似た食感が好評で、ヨーロッパでは30年以上前からスーパーなどで販売され、特にビーガン(完全菜食主義者)やダイエッターの間で人気が高い。
英ガーディアン紙によると、市場規模は着実に伸びている。先週発表されたヨーロッパとアメリカでのクォーンの2017年の成長率はそれぞれ27%と36%で、世界全体では前年比16%拡大したと報告された。2027年には市場規模は数十億ドルに成長するといわれる。
クォーンは、キノコ?カビ?
欧米の食卓に浸透するクォーンだが、その原料や生産方法はベールに包まれた部分が多いという。クォーン社は1985年、イギリスの食品大手マーロウ・フーズと大手パンメーカーのホービス、化学品メーカーICI(現在はアクゾノーベル社の一部)のジョイントベンチャーとして設立。世界人口の爆発的な増加が危惧されるなかで、食用酵母、カビ、バクテリアを繁殖させて人工タンパク源を探究するプロジェクトに取り組んだ。
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1985年までにイギリス政府はクォーンの販売を許可した。ただ、ここでも「結局クォーンは何からできている?」という疑問は残ったままだ。
英ガーディアン紙によると、タンパク質にグルコース、固定窒素、ビタミン、ミネラルを加え熱処理し、過剰なリボ核酸を取り除いたフザリウム・ベネナタムの菌株から作られているそうだが、これではピンと来ない。簡単に説明すると、キノコのタンパク質を発酵させた「マイコプロテイン」という。
現在はフィリピンの食品会社モンド・ニッシンがブランドを所有し、ビーフステーキ風など100種類以上の食品にアレンジして販売している。
ほぼ全てのクォーン製品には卵が含まれており、ビーガン仕様のものはジャガイモのでんぷんで代用している。香料や着色料、タピオカでんぷん、パーム油、エンドウ豆繊維などの成分を掛け合わせ、巧妙に作られている。環境問題に明るいジャーナリストのジョージ・モンビオットが「鶏肉やミンチと区別がつかない」と評したほどだ。
アメリカでは有害反応情報が集められた
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2001年にクォーンはアメリカにも進出した。しかしこの時には米キノコ研究所(American Mushroom Institute)がフザリウム・ベネナタムはキノコでないと反発するなど、順風満帆なスタートではなかった。食の安全を訴えるある団体は、クォーンに起因して、吐き気、嘔吐、下痢、蕁麻疹、時には呼吸困難などの危険なアレルギー反応があったと主張している。
もちろんクォーン側はこれを否定。「当社は30年にわたって約4億個のクォーンを販売しており、記録から優れた安全性を持つことが分かっている」とケビン・ブレナンCEOは説明する。「どの症状も非常に稀で、おそらく15万分の1の割合」で、ジャガイモも同じようなものだと言う。
健康被害で大きな騒ぎはなかったが、アメリカではクォーンの原料をキノコだと思い込んで購入した消費者が騙されたと主張し集団訴訟を起こした。簡単には「キノコ」が原料と説明されるが、キノコとカビの線引きがあやふやだったことが原因とみられる。すでに和解はしているが、クォーン側は自身の不正行為を認めるものではないと強調する。ただ、この一件以来、アメリカで販売されるパッケージには「マイクロプロテインはカビ(真菌の一種)です」と書かれ、イギリスでも同様の文言が添えられるようになった。
人工肉が「本物」になる日も近い?
アメリカ全土で展開する「インポッシブル・バーガー」は、クォーン以上に肉感を追求した人工肉を使ったハンバーガーで人気のレストランだ。植物だけで作られた「死のない肉」のパティがここまで肉々しいのは、SLH(レグヘモグロビン)がカギで、同社はこの成分が血の滴る肉のような味と色を再現してくれると話す。
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米食品医薬品局(FDA)は2015年8月にSLHについて「消費のための安全性を確立するには十分ではない」との見解を示している。それでも有害なことが明示されたわけではないため、インポッシブル・バーガーの販売は続いている。
2018年初めには、イギリスの食卓に並ぶ食品の半分以上が「超加工」されていると報告された。家庭料理は工業用添加物と不透明でハイテクな食品で成り立っているという。人工肉が「本物の肉」に取って代わる未来はすぐそこまで来ているかもしれない。
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ニューズウィーク日本版ウェブ編集部
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