フロリダ州銃乱射、悪いのは銃かメンタルか

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2018年02月16日 16:52  ニューズウィーク日本版

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ニューズウィーク日本版

<また繰り返された銃乱射事件、トランプや共和党重鎮はこれを「心の病」のせいにして銃には触れずじまい。極端な精神行動の専門家の意見は>


米東南部フロリダ州パークランドのマージョリー・ストーンマン・ダグラス高校で生徒ら17人が死亡した銃乱射事件の翌2月16日、ドナルド・トランプ米大統領は「精神疾患という難しい問題」に取り組まなければならないと言った。容疑者の元生徒は事件の1年以上前に精神科の治療を受けていた時期があった、と米紙ワシントン・ポストは報じたが、問題はそこなのか。


今回の事件は、2012年12月のコネチカット州の小学校で起きた乱射事件で児童ら26人が殺害されて以来、学校での発砲事件としては最悪の死者数となった。銃乱射による惨事が相次ぐアメリカでは、再発防止に必要なのは銃規制なのか、精神疾患対策なのかで、意見が対立している。トランプは乱射事件の直後の声明で犯人の精神疾患を問題にしながら、銃の問題には一切触れなかった。こうした姿勢は不適切だ、と多くの人が疑問視している。


極端な精神行動を長年研究してきた米テンプル大学の心理学者フランク・ファーリーに問題点を聞いた。


──銃乱射事件を起こすような人間は、たいてい皆精神疾患を抱えている、と言っていいのだろうか?


精神疾患と認められたのは、乱射事件を起こした容疑者全体の4〜5%に過ぎない。米精神医学会のうつ病診断基準(DSM−V)に基づいたもっとも信頼できる統計だ。


銃乱射は錯乱した者がやること?


しかし私自身は違う見方をしている。DSM−Vにも問題があるし、17人を無差別に殺戮した時点で、犯人が精神的な問題を抱えていたのは明白だ。無差別殺人に及んだという事実が、犯人の感情や道徳的な規準の異常さ、精神的な錯乱状態を示している。乱射事件の犯人は大抵、最終的に死刑か終身刑になる。銃乱射事件を起こせば極刑は避けられないが、犯人は銃乱射にそれを上回る見返りがあると考えている。だから犯行に及ぶ。それは認知障害と言えるだろう。


──DSM-Vの何が問題なのか?


DSM-Vは様々な人の症状を一般化したものだ。今回の銃乱射事件の容疑者のような極端な性格はほとんど反映されていない。彼は17人を殺害し、14人を負傷させた後に犯行現場を立ち去り、身柄を拘束されるまで周辺をぶらついた。


あまりに極端な行動だ。犯行を予測できる心理学体系は確立されていない。今後は個々の犯人を分析し、その結果をもとに明確な犯人像を把握し、彼らの共通点を見つける必要があるだろう。そうすれば、乱射事件の再発防止に役立つ新たな診断基準の策定につながるかもしれない。


──銃乱射事件を起こしそうな人物を事前に予測するのは可能か?


心理学者が大量殺人や連続殺人の研究に費やせる時間はごく僅かだ。そのため、過去の犯人に関する研究を継続することで次に起こりそうな凶悪事件を予測し、再発阻止に取り組んでいる。研究の成果は微々たるものだ。特定の人物が大量殺人の犯人になる、という予測が的中した事例が過去にあったかと聞かれても、すぐには思いつかない。


──大多数の人は、銃乱射事件を防ぐために重要なのは銃規制だと言うと思うが。


全くその通り。疑いの余地はない。問題の根幹は銃だ。全世界で民間人が所有する銃の40%はアメリカ人のものだ。凄まじい数字だ。凶器効果、という用語を恐らく知っているだろう。凶器が身近に存在するだけで暴力が起きやすくなる、という心理学的な現象だ。実際にアメリカでは銃乱射事件が後を絶たない。どう見ても銃の存在自体が問題だ。


(翻訳:河原里香)




ケイト・シェリダン


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