世界一「生活の質」が高い都市はウィーン、在住者が語る納得の理由

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2018年03月12日 19:00  citrus

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オーストリアの首都ウィーンが様々な統計での栄冠に長年輝き続けているのは、実は私がこちらに移住してから気づいたことです(参照記事:「生活の質」高い都市、ウィーンが6年連続首位=調査)。

 

ロンドンやパリなど、近隣EU諸国の華やかな大都会とは違い、比較的地味で退廃的風情の漂うウィーン。ライフスタイルは刺激的というよりも落ち着きが先行し、街中の商店などは日曜休業で平日も19時には店じまい。この一見退屈極まりない街の一体どこにそれほどの魅力があるのか? 私も移住当初は、甚だ首を傾げたものです。しかし居を定めるうちに、この街には噛めば噛むほど味の出てくる大きな魅力があることに、否が応でも気付かざるを得ませんでした。

 

蛇口をひねれば美味しいアルプスの水が出ますし、ベビーカーを押していれば誰もが親切に助けてくれるなど、ウィーン生活の細かな魅力を挙げると一冊の本が書けるほどですが、ここでは私が最も感銘を受けたポイントを紹介します。

 

■すべての有権者が不安なく暮らせる高福祉社会
ここウィーンでは、社会的弱者や外国人を含むすべての有権者が普通に暮らせる保障があります。

 

例えば日本では母子家庭が父親から養育費を受けている割合は僅か約20%(日本経済新聞:母子家庭、養育費支払い2割どまり 「食費切り詰め」)止まりとひどい実態を呈していますが、オーストリアでは国が保証人として間に立って養育費の受け渡しが行われるため、母子家庭でも貰い損ねて困窮したり、生活保護を受給して謂われなき肩身の狭い思いをする心配がありません。

 

また大学院までの学費も市民の多くが通う国立では無料ですし、通常の医療や出産は全額国民保険でカバーされています。しかも医療技術が世界のトップクラスであるため、他のヨーロッパ諸国やアラブの国々、ロシア方面からひっきりなしに患者が訪れるほど。

 

その他にも子供貧困率の低さ、動物の殺処分ゼロ、失業者への手厚い支援にワーキングマザーの法的保護、バリアフリーの徹底や最低5週間の年間休暇など、自分が社会的弱者となっても健康で文化的生活を享受できる保障制度がウィーンには整っているのです。

 

■身の安全
日本では頻繁に恐ろしい殺傷事件が報道されていますが、ここウィーンでは陰惨な犯罪はほとんど聞き及びません。またオーストリアは貧富の差が少なく、特にウィーンでは戦後に富裕層と貧困層を意識的にミックスさせる街づくりや市営住宅の建設を推進した結果、他の大都市に顕著な危険区域やスラム街が誕生しませんでした。そのため夜間の独り歩き時の体感治安も85%とOECD加盟国中第3位(2012年統計)で、私自身も夜道で怖い思いをしたことは一度もありません。更にオーストリアは永世中立国であるため、その首都ウィーンもテロリストの標的にされにくいという利点があります。

 

 

■原子力フリー
日本では未曽有の大惨事を引き起こした原子力発電所ですが、オーストリアでは山積する問題点や危険性が未解決であることを理由に1978年の国民投票で否決されました。現在では約7割を水力、約3割を火力、残りを風力や太陽光で賄っている状態で、2013年にはついに原子力の輸入使用も全面的に禁止する法案が議決され、2015年1月から施行となりました。

 

■食の安全
自然との共存をこよなく愛するオーストリア人は、人工的なものに対しては極めて懐疑的で、遺伝子組み換え農作物の栽培および輸入販売も1998年に禁止となりました。また他国の食品安全基準が自国のものより大抵低いことを受け、輸入食品に対する規制や管理も極めて厳格であり、マクドナルドなども100%オーストリア産ビーフの使用を謳って顧客に安全性をアピールしています。

 

オーストリアはオーガニックの分野でも常に牽引役を担っており、これは有機農業地の割合が日本では僅か0.21%、オーガニックの印象が強いドイツですら6%程度に留まるのに対し、オーストリアでは何と19.7%(2012年統計)にも上ることからも窺えるでしょう。食品や生活用品、赤ちゃんの離乳食やペットフードに至るまで、あらゆるオーガニック製の生活必需品がスーパーやドラッグストアで安価に購入できるのは、生活クオリティの高さと直結していると言っても過言ではありません。

 

このようにウィーンは誰もが安心して人生を謳歌できる社会です。しかしその魅力はそこだけに留まらず、ウィーンの森やドナウ川などの大自然に日常的に触れ合ったり、ハプスブルク家の歴史的遺産や天才音楽家の遺した芸術作品に街中で気軽に接することができたり、帝都時代から受け継がれたグルメの数々に舌鼓を打ったりと、実に多様で奥深い魅力に溢れている点が、「生活の質世界一」たる所以なのだと思います。

 

もう一点付け加えるならば、ウィーンは華麗な建築・美術やファッションの分野ではローマやパリに敵いませんし、経済一点ならフランクフルトに負けるかも知れません。社会福祉では北欧の都市に一歩譲りますし、物資の豊かさや利便性では東京には勝てません。しかしウィーンはいずれかの一項目だけ傑出しているのではなく、あまねく分野において軒並み秀でているところに底力があります。そして“質の高い生活”とは決して一朝一夕に達成できるものではなく、ウィーンの人々が長い歴史を掛けて築き上げた努力の賜物なのだと言えるでしょう。

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  • オーストリアはどこに行っても人が親切だった。ウィーンは食も旨いし、楽しいし、ケチの付けようがない。生活の質は本当に高いと思う。
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