【今週の大人センテンス】開幕前に大谷翔平を酷評した米記者が公開謝罪

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2018年04月11日 10:00  citrus

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写真:AP/アフロ

巷には、今日も味わい深いセンテンスがあふれている。そんな中から、大人として着目したい「大人センテンス」をピックアップ。あの手この手で大人の教訓を読み取ってみよう。

 

第93回 驚きと称賛の「ごめんなさい」

 

「拝啓 ショウヘイ様 ごめんなさい、私が完全に間違えていました」byジェフ・パッサン記者(アメリカ「Yahoo!スポーツ」)

 

【センテンスの生い立ち】

本拠地で三試合連続ホームラン、2勝目はあわや完全試合――。日本ハムから大リーグのエンゼルスに移籍した大谷翔平選手が、予想や期待をはるかに超える活躍を見せている。しかし、開幕前は二刀流を貫こうとしていた彼に対して、批判的な論調の記事が多かった。アメリカ「Yahoo!スポーツ」のジェフ・パッサン記者も、スプリングトレーニング中に「二刀流は成功しない」と主張。しかし、その予想は華麗にくつがえされ、2勝目を挙げた直後に「ごめんなさい、私が完全に間違えていました」と題した記事を掲載し、公開で謝罪した。

 

【3つの大人ポイント】

  • 自分が間違っていたことを潔く認めて謝罪した
  • 謝罪することで称賛などの気持ちを伝えている
  • 記事としての盛り上がりを巧みに演出している

 

「マンガみたい」「マンガを超えた」といった表現が、ここ数日、巷にあふれています。エンゼルスの大谷翔平選手の活躍を称えようと思ったら、「すごい」「見事」程度の表現ではぜんぜん追いつきません。いつもは荒唐無稽というマイナスのニュアンスで使われがちな「マンガ」という例えですが、大谷に関しては「想像を超えた」「現実とは思えない」という最大級の驚きを込めて使われています。

 

開幕から11日で、打者としては3試合連続ホームラン、投手としては2連勝。しかも2試合目は7回途中までパーフェクトで12奪三振(7回1安打無失点)。本人も「できすぎなんじゃないかと」とコメントしています。まだまだ引き続き、マンガにしたら編集部からボツをくらいそうな暴れっぷりを見せてくれるでしょう。大谷のケタ外れの活躍のおかげで、日本のプロ野球のニュースがほとんど目立たなくなってしまっています。

 

今や称賛の嵐ですが、スプリングトレーニングやオープン戦の頃、メディアの論調は大谷の二刀流に対して大半が否定的でした。辛口な筆致で知られるアメリカ「Yahoo!ニュース」のジェフ・パッサン記者も、メジャーで二刀流が成功するわけがないと予想。あるスカウトの言葉として、彼の打撃を「高校生並み」と書きました。そういえば日本でも、大谷が二刀流にチャレンジ始めたころは、評論家や通を自認するファンの大半が「そんなことできるわけない」「マンガじゃないんだから」「プロ野球をなめるな」と、頭ごなしに否定したものです。

 

ところが、大谷の文句なしの活躍は、パッサン記者を改心させました。2勝目を挙げた直後に、「拝啓 ショウヘイ様 ごめんなさい、私が完全に間違えていました」と題した記事を書かせたのです。記事の中で彼は、自身の記事が間違いだったと告白し、大谷に潔く謝罪しています。間違いを素直に認めて謝るというのは、できそうでできることではありません。記者としてのプライドもあったでしょう。それでも公開謝罪をせずにいられなかったところに、大谷が与えたインパクトの大きさが伺えます。

 

詳しい経緯はこちら⇒ 驚異の活躍見せる大谷に米記者が“公開謝罪”「私が完全に間違えていました」(Full-Count)

 

同時にこの公開謝罪は、パッサン記者の書き手としての熟練の技も見せてくれていると言えるでしょう。謝罪という変化球で、大谷の活躍に対する称賛や感動、応援といった気持ちを大谷本人にも読者にも、きっちり伝えています。しかも、いったんは否定した選手に謝罪した上で称えるという大胆かつ巧みな演出で、記事としての盛り上がりも申し分ありません。いろんな意味で大人力に満ちた記事であり、小粋な対応です。

 

いっぽうで、2勝目を挙げたときの大谷のコメントも、極めて高度な大人力にあふれていました。試合後の記者会見で、地元の記者が「(7回が始まった時点で)完全試合だと知っていたか?」と質問。それに対して大谷は、日本語でこう答えています。

 

「ヒットを打たれてないのは知ってましたけど、完全試合をしようという感じはなかった。むしろいつ出るか待っていた。出たときにどう気持ちを整理して次のバッターにしっかり向かっていけるかが大事。そういう意味では、打たれた後にフォアボールを出したのは今日よくなかったこと」

 

「完全試合をしようという感じはなかった」というのは、きっと本心でしょう。それでも多少の悔しさはあったはず。しかし彼は、逃げていった偉業の背中をチラリとも見ないで、初ヒットを打たれた次の打者にフォアボールを出してしまったことを悔やんでいます。これには、日米のメディアも野球関係者も大いに感服。これからの活躍への期待をますます高めてくれました。

 

スポーツは「すごいプレー」や「劇的な展開」で、私たちを感動させてくれます。旬のスポーツ選手のまぶしい輝きを見ることで、私たちは幸せな気持ちになることができます。この先、もし大谷の勢いが鈍る時期があったとしても、しっかり応援し、変わらぬ声援を送りましょう。それが最初の何試合かで、すでに十二分にワクワクしたものとしての務めです。もちろん、ますます勢いよく活躍してくれたら、ますます力を込めて応援し、ますます大きな声援を送りましょう。楽しませてもらって、ありがたい限りですね。

 

 

【今週の大人の教訓】

潔く謝れば失点を挽回できるばかりか、たくさんお釣りがくる

このニュースに関するつぶやき

  • 謝罪の体裁の記事。巧い書き方だよね。
    • イイネ!0
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