イラン・ハメネイ師がイスラエルとアメリカに報復を警告

8

2018年05月01日 20:41  ニューズウィーク日本版

  • チェックする
  • つぶやく
  • 日記を書く

ニューズウィーク日本版

<シリア政府軍の関連施設攻撃を受けてイラン最高指導者がアメリカの介入を強く非難。報復も辞さないと警告した>


シリアで4月29日、アサド政権軍の複数の施設がロケット攻撃を受け、支援に入っていたイラン人戦闘員26人が死亡したことについて、イランの最高指導者アリ・ハメネイ師はアメリカ、イスラエルとサウジアラビアを非難。これらの国々が、イスラム世界を分断させようと共謀していると主張した。


ハメネイは、メーデーの前日である4月30日、労働者たちを前に演説。アメリカ主導の経済制裁は、シーア派イランの体制の弱体化が狙いであり、それに対抗するためには地元経済を支えることが重要だと強調した。またアメリカは、地域におけるスンニ派の大国サウジアラビアを操ってイランを追い落とそうとしている、とも言った。


ハメネイの公式ウェブサイトによれば、ハメネイは「アメリカは我々の地域に紛争を起こすために、サウジアラビアを煽っている。同じイランの敵でもイスラエルではなくサウジアラビアを煽るのは、イスラム教徒同士を争わせたいからだ」と主張。


「これらの国が賢明ならば、イランとの争いには手を出さないだろう。イランとの戦争に突入すれば、彼らは確実に敗北することになる。アメリカは、イラン革命よって生まれたイスラム共和制と衝突して犠牲を出すことは避けたいはずだ」


シリアで拡大する影響力


イランは長年、パレスチナ人が領有権を主張する土地の帰属問題をめぐってイスラエルと対立関係にある。アメリカとの確執の原因は、1953年にCIAが支援してイランに親欧米派の絶対君主制を復活させた軍事クーデターだ。


1979年のイラン革命で王政が崩壊したときは、テヘランにあるアメリカ大使館が革命派の学生らに占拠され職員は400日以上にわたって人質にとられた。


これ以降、アメリカとイランは数十年にわたって敵対関係にある。2015年にバラク・オバマ米大統領(当時)の主導でイランと核問題をめぐる枠組み合意が結ばれた時期は例外的だ。


ドナルド・トランプ大統領はイランに対してより厳しい姿勢を取っている。彼はオバマ時代の合意について内容がイランに甘いと指摘し、またイランが合意を悪用して、国外の民兵組織に対する支援や国内の弾道ミサイル開発計画を強化していると非難してきた。


イランは、イラクおよびシリア各地でイスラム過激派組織ISIS(自称イスラム国)と戦った。この中でイランが支援する各勢力が徐々に影響力を強め、イスラエルとサウジアラビアは、これが自国の安全保障を脅かしていると恐れる。


今年の4月はじめにはアメリカ、フランスとイギリスが、アサドの推し進める化学兵器開発計画との関連が疑われる複数の施設を巡航ミサイルで攻撃。イスラエルも、シリア国内にあるイランとその同盟勢力が所有しているとみられる拠点を繰り返し攻撃してきた。シリア国内で拡大を続けるイランのプレゼンスを縮小させるために、今後も同様の攻撃を行うと宣言した。


4月29日には、夜間にハマ県(ダマスカスの北に位置)の南部にあるシリア軍の拠点で大規模な爆発が発生。イギリスに拠点を置く人権団体、シリア人権監視団は、シリア人ならびに数多くのイラン人も犠牲になったこの攻撃について、背後にイスラエルの存在があるようだと指摘した。


イスラエルがイランの拠点に対するさらなる攻撃も辞さないと警告し、シリア東部ではイランが支援する親アサド政権派の戦闘員とアメリカが支援する民兵組織との対立が激化するなかでの攻撃だった。


ハメネイは29日の演説の中で、アメリカにはこの地域に介入する権利はないとし、イラン軍や同盟諸国を攻撃すれば報復すると警告した。


「撤退すべきはイランではなく、アメリカだ。我々はこの地域の生まれであり、ペルシャ湾岸は我々のふるさとだ」とハメネイは語った。


「前の米大統領のときにも言ったが、攻撃して逃げおおせる時代は終わった。攻撃したら反撃を受ける。アメリカも、より強力な反撃に遭うことになるのは分かっているはずだ」


(翻訳:森美歩)




トム・オコナー


このニュースに関するつぶやき

  • アメリカは他国の土地に*国民に*悲劇的な殺戮合戦をしてきた。被害者は土地に住む普通の人間だ。殺し合いをさせ、アメリカ、イスラエルが殺す!娯楽の様に。
    • イイネ!4
    • コメント 0件

つぶやき一覧へ(8件)

前日のランキングへ

ニュース設定