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朝鮮半島問題の不等式に解はあるか? - 冷泉彰彦 プリンストン発 日本/アメリカ 新時代

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2018年05月08日 18:41  ニューズウィーク日本版

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ニューズウィーク日本版

<北朝鮮を緩衝国家として安定的に維持させるには、経済活動をどこまでオープンにするか、緻密な設計と運用が必要になる>


国際問題には、いろいろなタイプがあります。非常に単純な分け方をするのであれば、「解決すべき問題」と「解決すべきでない問題」があります。また別の分け方をするのであれば、「解決できる問題」と「解決できない問題」もあります。


朝鮮半島の問題は、このどれにも当てはまりません。というのは、まず「解決」ということが「1」か「0(ゼロ)」かという白黒のハッキリしたものではないからです。


その上で、解決しなければ危機になる一方、完全に解決してしまえば似たように危機を招く可能性がある、つまりAという現状は改善しなくてはならないが、Dという完全な解決を求めるのは避けねばならない、そのような性格の問題を抱えていると言えます。


つまり一連の外交交渉の目的は「求める落とし所X」を「完全な解決であるD」にするのではなくて、「現状のAよりはましで全員が受け入れられる最低の改善案B」と、「Dには欠けるが全員が受け入れられる範囲での最善の改善案C」のあいだ、つまり「A<B<C<D」の中の「B<X<C」のゾーンに状態を持って行くことが求められるわけです。


まず、北朝鮮という国をどの程度「開くか?」、つまり経済交流の自由度をどうするかという問題があります。完全に閉じたままでは、経済発展はできませんから、冷戦終結後は準鎖国状態で国際法違反行為などによって外貨を稼いできた「危険な状態」が続きます。一方で完全にオープンにしてしまえば、人や情報が行き交うなかで、ハプニング的な政権崩壊や韓国との「準備不足の統一」が起きる危険があります。


その場合は、韓国には「北朝鮮を統合しつつ先進国の経済に持ち上げるだけの余力はない」一方で、「北朝鮮に国富を投入するために、南の生活水準を落とすことはできない」というジレンマの中で行き詰まる可能性が高いと思われます。


ですから、北朝鮮という緩衝国家を安定的に存続させるような「平和的解決」のためには、「どの程度、国の経済をオープンにするか?」という問題に、緻密な設計と運用が必要になるのです。


人の行き来も、この問題に関係してきます。例えば、拉致被害者、分散家族、人権を侵害された人々は、北朝鮮から自由に出国できるようにすべきです。ですが、誰もが自由に出られるようになって、それこそベルリンの壁が「なし崩し的に崩壊」した事態になっては混乱します。どの程度の行き来にするのか、これは慎重に決定されなくてはなりません。


韓国側の体制も考えなくてはなりません。現在は左派政権ですから、北朝鮮の平和攻勢を受け止めていますが、その反面、右派の元大統領2人を獄につないで右派政党の影響力を止めたり、かなり無理なことをしています。左派政権が安定していないと、北朝鮮との和平は進まないのは分かりますが、あまり強引なことをすると政治的な反動の危険も出てきます。さじ加減というのが必要でしょう。


核廃絶に関して、実験場の放棄というのは「すでに崩壊が進んでいる」ようですから即座に可能としても、弾頭の廃棄やウラン濃縮設備の廃棄、あるいはミサイルの廃棄というのは、即時とはいかないようです。ここをあまり強く押して「すぐに」というプレッシャーをかけては和平の全体が崩れる危険がありますし、かと言って「北朝鮮が引き延ばしにかかった」場合に、ズルズルと引きずられてもいけません。


一方で、朝鮮戦争が「終結」した場合に、在韓米軍に変化が生じる可能性も取り沙汰されています。この問題も、確かに「和平が成立」したのであれば、削減が筋でしょうが、東アジアのパワーバランスが大きく崩れて、全員が不幸になるようでは困るわけです。ここにも「B<X<C」という不等式があります。


こうした状況下では、過去の様々な外交交渉ではなんだかんだ言って、「アメリカが現実的な落とし所を調整」することが多かったわけです。キッシンジャー外交、ブレジンスキー外交、ベイカー外交などはそうした傾向を強く持っていました。隠密的な動きの多かった、ライス外交、ヒラリー外交なども基本的には同じです。


ですが、現在のトランプ政権は「アメリカ・ファースト」という「自国中心主義」「非介入主義」を掲げ、今回の北朝鮮危機への対処も「アメリカに核ミサイルが届くことがないようにすれば成功」という極めて視野の狭い考え方から向き合っています。ですから、残りの関係諸国は「全体が許容できる落とし所」を自分たちで考え、調整していかねばならないのです。そこに今回の問題の一番の難しさがあると思います。


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