トランプ大統領、激怒!? 1年半にわたる取材をもとに書かれた全米騒然の暴露本

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2018年05月10日 19:12  BOOK STAND

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『炎と怒り――トランプ政権の内幕』マイケル ウォルフ,Michael Wolff 早川書房
2017年1月20日、第45代アメリカ合衆国大統領に就任したドナルド・トランプ氏。歴代大統領の中で政治や軍人の経験がない人物は史上初であり、その過激な言動の数々はこれまでさんざんメディアに取り上げられ話題を呼んできました。最近では初の米朝首脳会談実現か、という点でも注目されています。

 そんなドナルド・トランプ政権の知られざる内情を1年半にわたる200件以上の関係者取材をもとに明かした暴露本が本書『炎と怒り――トランプ政権の内幕』です。本書は発売3週間で全米170万部突破の大ベストセラーを記録し、一大センセーションを巻き起こしました。

 面白いのは、ドナルド・トランプ氏自身も公式ツイッターで「これは"フェイクブック"だ」と言及しているところ。発売前に「出版差し止めだ」と怒ったため、かえって注目を集めることとなり、出版社は100万部を追加重版し予定より前倒しで出版したというのは日本でも知られるエピソードです。

 内容としてはトランプ政権の誕生から首席戦略官だったスティーヴ・バノン氏の辞任にいたるまでの物語が赤裸々に描かれているのですが、真実味を帯びていると読者に感じさせるのは内部でしか知りえないような情報が次から次に出てくるから。

 たとえば選挙戦が始まったころ、側近のナンバーグが「ところで、大統領になりたいんですか?」とトランプ氏に尋ねたところ返事がなかったというエピソード。つまり当初は自身も周囲も彼が勝利するわけがないと思っており、単に自身のブランド価値を高めるため、彼が大統領になりかけたという事実から利益を得るためだけの出馬だったという驚きの事実が明かされています。

 しかし、事態はトランプ氏が当選するという予想だにしていない展開に。トランプ・ジュニアは友人に父親は幽霊を見たような顔をしていたと語ったといい、トランプから敗北を約束されていたメラニア夫人は涙していたが、それはうれし涙ではなかったといいます。そうして政治についてまったく無知であったトランプ氏自身は混乱から呆然へ、さらに恐怖にかられた後、突如として「自分は合衆国大統領にふさわしい器でその任務を完璧に遂行しうる能力の持ち主だ、と信じるようになったのである」と書かれています。これまたトランプ氏の究極の自信家ぶりを表すエピソードと言えるでしょう。

 このほかにも大統領就任後もスティーヴ・バノンとディナーをともにしない日は早々とベッドに寝転がってチーズバーガー片手に三台のテレビを観ながら何人かの友人に電話をかける、とか、トランプ氏のあの不思議なヘアスタイルは頭皮手術によって禿げの進行が抑えられており「ジャスト・フォー・メン」という商品名のスプレーを使用している、とか、三流ゴシップ的ながらこれまで知られていなかったようなネタが満載です。

 それにしても、なぜ著者であるジャーナリストのマイケル・ウォルフ氏がここまで内部情報をつかむことができたのか。それは大統領選挙運動中、彼がトランプ氏に気に入られ、大統領当選後はホワイトハウスの中を自由に行き来して取材できたからだそう。政治の素人の集まりで場を仕切る人がいなかったとこれまたウォルフ氏に暴露されていますが、ここからしてもいかに付け焼刃な状況で始まったかがわかります。

 本書は最後にジャーナリスト・池上彰氏の解説も掲載されています。本書が大ベストセラーになっても依然30%台をキープしているトランプ大統領の支持率。これについて池上氏は「支持者たちは、こうした書物を読むことはない。そもそも読書の経験がない。その点では、一冊も本を読み切ったことがないというトランプ大統領と同じタイプの人たちだ。支持者がこうした本を読もうとしないのと同じく、きっとトランプ大統領は、いまも本書を読んでいないだろう」と分析しています。「アメリカは、こういう人間を大統領に選んだのだ」という最後の一文は、トランプ氏の、そして本書のすべてを要約した痛烈なひとことと言ってもよいかもしれません。


『炎と怒り――トランプ政権の内幕』
著者:マイケル ウォルフ,Michael Wolff
出版社:早川書房
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