タダ同然の「ボロボロ社宅」だけど、「家賃支払い」があった方がお得なワケ

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2018年05月20日 11:02  弁護士ドットコム

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社宅に入り、社会人生活をスタートさせた人もいるだろう。古さや使い勝手、周りを会社関係者に囲まれているなどの状況さえ我慢すれば、通常の賃貸物件に比べ、格段に安い社宅はとてもありがたい。


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贅沢を言えば、どうせなら無料で住まわせてもらいたいと思うところ。でも、無料にすると、実は社員の税負担が増すということを知っているだろうか。


●一定の家賃支払いがないと給与として課税

国税庁は、会社が社員に対して社宅や寮を貸す場合、社員から1か月あたり一定額の家賃(賃貸料相当額)以上を会社が受け取れば、給与として課税されないとしている。賃貸料相当額は、その年度の建物や敷地の固定資産税の課税標準額をもとに算定される。


いくつかの条件があり、(1)無料で貸すと賃貸料相当額が課税(2)賃貸料相当額より低い家賃なら賃貸料相当額との差額が課税されるが、家賃が賃貸料相当額の50%以上なら賃貸料相当額との差額は課税されない、という仕組みだ。


●具体的には・・・

イメージがわきにくいので、例えば、賃料相当額が5万円の社宅を社員に貸した場合はどうなるか考える。


(1)社員に無料で貸した場合、5万円が給与とされ課税される


(2)社員から2万円の家賃を受け取る場合、賃貸料相当額である5万円と2万円との差額の3万円が給与として課税される


(3)社員から3万円の家賃を受け取る場合、賃貸料相当額である5万円の50%以上なので、差額の2万円は給与として課税されない


給与として課税されると、社員が納める税金や社会保険料が上がる。会社にとっても社会保険料などの負担が膨らんでしまう。


社宅を貸す場合には、基本的に、「賃料相当額の50%以上となる家賃を会社が受け取る」ことが節税につながると言えそうだ。(社会保険料の支払いが少ないと、将来もらえる年金が少なくなるというデメリットはある)


●社宅制度、実質的な手取りが多くなる

小林拓未税理士は次のように語る。


「社宅制度ではなく、住宅手当として給与に上乗せされる会社もありますが、制度の違いにより、税負担は変わってきます。


住宅手当の場合は、給与が増えますので、社会保険料も、所得税も増えることになります。社宅制度の場合は、『賃貸料相当額』を社員が負担する限り、社会保険料も所得税も増えることはありません。したがって、社宅制度は、住宅手当と比較して、実質的な手取り給与が多くなります」


では、会社側の負担はどうだろうか。


「会社としては社宅契約の手続きなどを考慮すると、単純に給与を上乗せするだけの住宅補助の方が、比較的業務負担が少ないと思われます。また、社宅家賃の社員負担額は、消費税の計算上、非課税売上となり、会社にとっては、不利になることも考えられます。それにもかかわらず、社宅制度を採用する会社は、福利厚生が充実しているということが言えます。


ただし、『賃貸料相当額』を会社が社員から徴収しない場合は、社員にとっては、住宅手当と同じく、社会保険料も所得税も増加する結果になります。会社にとっても不利になりますので、注意したいところです」


【取材協力税理士】


小林 拓未(こばやし・たくみ)税理士


東京都中央区にて平成19年から開業。「専門家として、長期的な視点で顧問先の発展に尽力する」ことを経営理念に掲げる。顧問先サービスの拡充のため、平成30年1月から社会保険労務士業務も開始。


事務所名   :税理士法人石川小林


事務所URL:http://www.ktaxac.com


(弁護士ドットコムニュース)


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