埼玉、群馬、栃木、茨城… ディスられ続けた北関東人のメンタルの強さ

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2018年05月22日 22:00  citrus

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『翔んで埼玉』公式サイトより

 

漫画『お前はまだグンマを知らない』が実写映画化&アニメ化し、そして『パタリロ!』の魔夜峰央先生による珠玉の埼玉ディス漫画『翔んで埼玉』が実写映画化決定。「県民として見なければいけない……(使命感)」などのツイートが上がるのをみるにつけ、北関東ディスを通り越して北関東自虐ブームが来ているのを確信します。

 

 

■「埼玉県民にはそこらへんの草でも食わせておけ」説

 

京都生まれの神奈川県育ち横浜住民としてここに誓いますが、私は埼玉、群馬、栃木、茨城……といった北関東に恨みは1ミリもありません。ただ、住んだことがない、親戚もいない。用事があって北関東のいくつかの町に行ったことはあるけれど、点でしか知らないので、全容の想像がつかない。用事がなけりゃ行く機会がない。それだけなんです。

 

関東の海側に住む人間としては、海に面していないということがどういうことなのか、いまひとつ想像しにくいのです。山や川の恵みに囲まれて、空も土地も広くて物価も安くて、美味しいB級グルメのお店があちこちにあって、クルマ移動もストレスがなくて、毎日東京なんかよりはるかに余裕ある暮らしをしているイメージです。

 

魔夜峰央先生の『翔んで埼玉』を読んだ時も思いました。表紙にも書かれている「埼玉県民にはそこらへんの草でも食わせておけ!」との衝撃的なセリフに、「食べられる草がそこらへんに野生で生えるだけ豊かじゃないか」って。ホラだって、東京は砂漠だし(参考:『東京砂漠』 by 内山田洋とクール・ファイブ)、千葉・神奈川は“日中都民”が寝るためだけに帰ってくる住宅がひしめく、草も生えない都会なので……。

 

 

■JR、東武線の恣意的なルートが引き起こす「北関東の磁場異常」

 

でも最近、宇都宮や埼玉(浦和以外)や茨城に行く機会があって、マンションや建売住宅の売り文句に「東京(大手町、秋葉原など)へ通勤◯◯分」と書かれていることに発見がありました。

 

埼玉・栃木・群馬・千葉も網羅する東武線と東京メトロとの相互乗り入れが最も影響大だと思いますが、北関東の特定のエリアが東京のターミナル駅から新幹線・つくばエクスプレス・私鉄などで直結、通勤圏となることで東京郊外化していますよね。新規の大型開発計画もどんどん進められているようです。あの宇都宮が東北・北海道新幹線で「東京駅へ通勤55分」なんて言われると、軽く時空の歪みを感じませんか。

 

その一方で、鉄道沿線から外れた他地域が完全に置き去りにされている。東京からのアクセスがある地域のみが発展をスピードアップし、東京との距離感がどんどん近づく一方、置き去りにされた沿線外地域は相対的に東京から離れ、さびれ、疎外されていく。仕事でつくばに行ったとき、隣の牛久市に住んでいるというタクシーの運転手さんが話してくれました。「つくばだけがつくばエクスプレスのおかげでどんどん都会になっちゃってね。牛久なんてJR通ってたって、だーれも来ないから」

 

同じ北関東なのに、東京からの電車が通っているか否か、つまり「選ばれた土地」かどうかで、地域の住民、文化、暮らし、メンタルに開きが生じているのです。それは北関東に深刻な分断を呼ぶディープ・インパクト、「北関東の磁場異常」とも呼べる事態だと心配になるのは私だけでしょうか。

 

 

■「群馬、実は火星」説

 

ネットで鉄板の「秘境」「魔境」扱いを受ける県、それは群馬です。学校の号令が「起立、“注目”、礼」で、県外民にはどこを見ればいいのかさえ謎の「注目」という一段階を挟むとか。猛烈な突風である赤城おろしを向かい風に受けながらの過酷な自転車通学に足腰を鍛えられ、群馬の女子高生は東京のひ弱な男子高校生くらいなら回し蹴りで倒せるとか。埼玉・熊谷が毎夏ニュースをにぎわせる最高気温40度なんてぬるい、群馬なんか灼熱の最高気温51度を記録したことがある、とか。

 

想像を絶する群馬ならではの秘境エピソードは漫画『お前はまだグンマを知らない』(井田ヒロト・新潮社)に詳しいですが、温帯に位置する高度IT文明の先進国日本とは思えないエピソードの数々に、私は「群馬、実は火星かなにか説」を唱えております。

 

 

■北関東の県民はメンタルが強いというかM耐性が高い

 

ですが、これらの県民自虐コンテンツは非難されるどころか県民にこそ熱く支持され、なんならキャラクターを町おこしに起用するような展開も見せています。そのメンタルの強さはどこから来るのか。

 

ご当地番組や◯◯出身芸人なども花盛りの昨今、どうも埼玉、群馬、栃木、茨城…といった北関東の県民を中心に、自虐を悦んじゃってるようなフシがあるのは、おそらくこれまで全く「東京」や「全国」に振り向かれず存在を忘れられていたことによってM耐性がじっくり鍛えられ、もうそうやって皆様の話題になっていることそのものがうれしい、ヤダやっと気づいてくれた、ひどいことでもいいからもっと言って聞かせて、みたいな心理なのではないかと推測されるのです。

 

ここまでの道のりはやはり長かったのでしょうか。北関東の皆さんがどのような心理的開発と熟成を経てその境地へ到達したのか、今後はどう進化・深化していくのか、神奈川県民の私からも興味が尽きません。

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