依存症で人生崩壊も。アルコールとの正しい付き合い方は?

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2018年05月25日 12:01  QLife(キューライフ)

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お酒の飲みすぎは、がんや生活習慣病、認知症のリスクにも

 気温が高い日が多くなり、ビールの美味しい季節がやってきましたが、お酒が原因でトラブルを起こした有名人のニュースも後を絶ちません。厚生労働省の調査によると、お酒を飲む習慣のある人で、1日あたり日本酒に換算して1合以上飲む人の割合は、2003年には男性37.4%、女性6.6%。2016年には男性33.0%、女性8.6%と、男性の割合が減る一方で女性は増えています1)。健康を損なう恐れのあるお酒の量は、純アルコールの量で1日あたり男性40g以上、女性20g以上。純アルコール量20gとは、ビンビールの中ビン1本、缶チューハイ1缶、ワインならグラス2杯、日本酒1合、焼酎ならロック1杯、ウイスキーではダブル1杯に相当します。お酒好きの方のなかには、意外に少ないと思われる方もいるかもしれません。

 適量であればリラックス効果もあり、人間関係の潤滑油にもなるお酒ですが、飲みすぎはさまざまな問題を招きます。過ぎた飲酒は、咽頭がんや大腸がん、乳がんなどのがんや、高血圧、脳出血、脂質異常症など生活習慣病のリスクを高めます。さらに、脳梗塞や虚血性心疾患との関連を指摘する研究も。ほかにも、認知症やうつ病、脂肪肝や肝炎、男性の場合は性機能障害、女性では生理不順や卵巣機能不全など、関連するといわれる病気は枚挙にいとまがありません。

 また、飲酒運転で事故を起こしたり、妊娠中の飲酒で子どもが発達障害や奇形をもって生まれてきたり、お酒を飲みすぎて家庭内暴力をふるったりと、飲酒による周囲の人たちへの悪影響も無視できません。近年では高齢化に伴い、高齢者の飲酒問題や、高齢のアルコール依存症患者の数も増加中です。退職や配偶者との死別で社会的に孤立したり、病気などの不安から飲酒習慣が度を越してアルコール依存症になる人も。高齢になると、体の中の水分量が減っており、若い頃と同じ量のお酒を飲むと血中のアルコール濃度が上がりやすくなります。服用している薬がある場合も注意が必要です。

意志が弱い・根性がない人だけの問題ではない「依存症」

自治体実務セミナー パネルディスカッション

 こうした状況に、国も対策に乗り出しています。2013年にはアルコール健康障害対策基本法が制定され(2014年6月施行)、お酒に関する「正しい知識の普及と不適切な飲酒を防止する社会づくり」「誰もが相談できる場所と、必要な支援につなげる体制づくり」「医療の質の向上と連携の促進」「アルコール依存症者が円滑に回復し社会復帰するための社会づくり」を掲げ、全国の自治体と協力して取り組みを進めています。2018年5月22日には、自治体や関連団体が集まって、具体的な事例を共有する自治体実務セミナー(主催:時事通信社)が開催されました。

 アルコールに関連する健康障害は多岐に渡りますが、やはり問題が深刻なのは「アルコール依存症」。久里浜医療センター院長の樋口進先生によると、アルコール依存症とは「大切にしていた家族や仕事、自分の健康などよりも、何にもまして飲酒を優先させるような状態」。お酒を飲むことを自分でコントロールできない、お酒がきれると手が震えるなど離脱症状があり、お酒が自分の身体を蝕んでいるとわかっていながら、お酒を飲むことがやめられない、といった症状を呈します。アルコール依存症患者の家族は、家庭内暴力や虐待、家庭崩壊、金銭面での苦労を背負い込むこともあり、その被害も甚大です。

 しかし、アルコール依存症患者への世間の目は冷たいものです。アルコール依存症をはじめとする依存症は、「意志が弱い・根性がない人が依存症になるというイメージがあり、本人や家族で解決すべきとされがちです。そのため様々な問題を生じてしばしば解決不可能なほどに深刻化してしまいます」と指摘するのは、厚生労働省社会・援護局障害保健福祉部の溝口晃壮さん。「依存症は病気。正しい診断と本人・家族の理解があれば回復可能です。意志が弱い人や根性がない人がなる病気ではなく、誰でもなりうる病気であり、依存症による問題には自己責任ではなく社会全体で取り組んでいく必要があります」(溝口さん)

 ひとたびアルコール依存症になると、その後は生涯断酒が必要になります。最近、お酒を飲みすぎだと感じることはありせんか?自分や家族のお酒の飲み方が心配な方は、お住まいの地域の相談窓口や、アルコール専門外来を設けている医療機関に相談してみましょう。久里浜医療センターでは、2017年から減酒外来を設置し、2017年12月までに73名が受診したそうです。「依存症になる前に、お酒の量を減らすことができれば、生涯断酒までにはならずに済む可能性も」(樋口先生)

 自分や家族の平穏な日常を守るためにも、危険な飲酒を避け、ほどほどの量でお酒を楽しみたいものですね。(QLife編集部)

1)厚生労働省:平成28年国民健康・栄養調査

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