デンマークの人々が幸せなのはなぜ? 「ヒュッゲ」に学ぶ暮らしのヒント

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2018年05月25日 12:12  BOOK STAND

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『世界一幸せな国、北欧デンマークのシンプルで豊かな暮らし』芳子ビューエル 大和書房
2012年にスタートした国際連合の幸福度調査において、2017年までの過去3回首位に輝いているデンマーク。2017年の発表では150以上の国や地域の中で日本が51位だったということを知れば、デンマークの国民が日頃どれほど幸福度や満足度を実感しているか、少し想像できるかもしれません。

 そんな「世界一幸せな国」とも言われるデンマークにおいて、独特の文化として存在するのが「ヒュッゲ」。

 「ヒュッゲ」とはデンマーク語で、「幸福」や「心地よさ」を表す言葉。本書『世界一幸せな国、北欧デンマークのシンプルで豊かな暮らし』の著者である芳子ビューエルさんは「大切な家族や親しい友人知人とともにほっこりした時間を過ごす」といった意味合いで解釈しているといいます。

 国民の幸福度が高いいっぽうで、自殺率が高く、うつ病患者が多いという側面も持っているデンマーク。秋から春までの日照時間が非常に短いこの国では、暗く寒い日々が続くことから憂うつな気持ちを感じたり無気力になったりするのも無理はないことなのかもしれません。

 だからこそそこで大事になるのがヒュッゲの考え方。「自分たちの『巣』を少しでも温かく、楽しく、心地よいものにして、自分が孤独ではないことを実感するためにヒュッゲという概念を生み出してきたように思えてなりません」と芳子さんは本の中で分析しています。そして、この最高に居心地のいいライフスタイル"ヒュッゲ"を私たち日本人にも提唱したい。その思いをもとに、北欧流ワークライフデザイナーである彼女が書きおろしたのが本書なのです。

 この本では家具やインテリア、自然、エコなどさまざまな観点からヒュッゲが紹介されていますが、頻繁に登場するのがタイトルにもある「シンプル」とうワード。もくじには「幸せの背景には『シンプル』がありました」「わが家ではじめたシンプルなデンマーク流」「コペンハーゲンの住まいは、いたってシンプル」「シンプルでナチュラル−−温かなホーム・パーティ」「すっきり片づいたシンプルな室内は北欧バイキングの遺産!?」といった見出しが並んでおり、ヒュッゲの概念にいかにシンプルさが大事となるのかが感じ取れます。

 そのための実例や考え方などがきちんと書かれているのも本書の強み。たとえば「収納家具を置くのであればできるだけ背の低いものに」「窓のサイズを無視してカーテンをかけてみる」「マイチェアを置いて自分だけの空間をつくる」「とにかく戸外に出て陽に当たる」など家が狭くても、お金をあまりかけなくてもできる工夫がいろいろと載っています。これは北欧輸入の第一人者として何度もデンマークを訪れ、現地の人々とも親交の深い著者だからこそ提案できることといえるでしょう。

 「ヒュッゲ」は日本の「おもてなし」に通じるところもあるという芳子さんですが、他にも日本とデンマークには不思議と共通点が多いのだとか。「自然や人間関係を大切にする」「豪華絢爛なものよりも質素でつつましやかな美しさを愛する」といった価値観や美意識から、住まいがけっして広いわけではないといった住環境にいたるまでいろいろと似通っているそうで、そう考えるとヒュッゲも実は私たち日本人が受け入れやすいものだと考えられます。

 最近、日本でも根付いてきた「ミニマム」という考え方。物にあふれた現代社会で物に囲まれずに暮らすなんてむずかしいと思う人も多いでしょう。けれど、実際に「暗い、寒い、少ない」国に住んでいるデンマークの人々が自分たちをとても幸せに感じているということは、幸福というものは考え方次第、方法次第なのかもしれません。

 身の回りのものはもっと少なくシンプルに、けれど今よりももっと幸福感や満足感のある毎日を送りたい。「ヒュッゲ」の概念はきっと、それを叶える鍵となってくれるのではないでしょうか。


『世界一幸せな国、北欧デンマークのシンプルで豊かな暮らし』
著者:芳子ビューエル
出版社:大和書房
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このニュースに関するつぶやき

  • ほおん。わたしゃ日本人で良かったとしか思えないな。産まれた国で他人に幸せを決められちゃ敵わないやね。
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