日本でも現金を使わない「キャッシュレス化」が進んでいるようだ。たとえば、2017年11月にオープンしたロイヤルHDの洋食店「GATHERING TABLE PANTRY」(東京・馬喰町)。店にレジはなく、支払いは電子マネーかクレジットカードのみだという。
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日本フードデリバリ―(東京都)が展開する社食サービス「みんなの食堂」もキャッシュレス。数十人分の料理を宅配し、社員たちが自分の分を取り分けていく「給食」のようなスタイルだ。弁護士ドットコムでもこの4月から導入し、オフィスに電子マネー決済用の端末が置かれるようになった。
キャッシュレスになれば、釣り銭がいらないし、レジ作業も省力化できる。売り上げとレジ内の現金を照合する「レジ締め」も不要だ。店に現金がないから、強盗被害だって減るかもしれない。
一方で、電子マネーの残高が足りなくなって、現金で払いたいという場面が出てくる可能性も…。通貨には、決済手段として使える「強制通用力」が存在するが、店が現金での支払いを拒否することはできるのか。上田孝治弁護士に聞いた。
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ーー強制通用力ってなに?
一般的に、「通貨」を用いて支払いをした場合、お店(債権者)はその受け取りを拒めずに、支払いが有効になります。これを強制通用力といいます。
日本銀行券(いわゆる紙幣)は「無制限に通用」します(日本銀行法46条)。一方、貨幣の場合は「額面価格の20倍まで」(通貨の単位及び貨幣の発行等に関する法律7条)です。つまり各貨幣20枚を超えると受け取りを拒むことができます。
ーーということは、キャッシュレスの店でも現金支払いは断れない?
契約が成立する前なら、当事者同士で支払方法を決めること自体は強制通用力とは関係なく許されています。たとえば、お店とお客さんとの間で、契約前に、現金での支払いはできない(キャッシュレス)と定めること自体は問題ありません。
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このように、契約にあたって、支払方法などを当事者間で自由に決めることができることを「契約自由の原則」と呼びます。
もちろん、契約前にどういう支払方法にするかを具体的に決めておく必要があります。支払の段階になってはじめて、お店側が「現金不可」と一方的に要求しても通りません。
ーー「現金不可」であることを、あらかじめ客に分かってもらう必要がある、と
通常、お客さん側は、お店で物を買ったり、サービスの提供を受けたりする場合に、当然に現金での支払ができると考えています。「現金不可」という前提で契約をする場合には、お店側が「現金不可」であることを明確にお客さんに示して、あらかじめお客さんの承諾をとっておくことが必要です。
結局、このような支払方法に関する事前の特別の合意がなかったときは、通貨の強制通用力により、現金での支払いが有効とされ、お店側は受け取りを拒めないということになります。
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(弁護士ドットコムニュース)
【取材協力弁護士】
上田 孝治(うえだ・こうじ)弁護士
消費者問題、金融商品取引被害、インターネット関連法務、事業主の立場に立った労働紛争の予防・解決、遺言・相続問題に特に力を入れており、全国で、消費者問題、中小企業法務などの講演、セミナー等を多数行っている。
事務所名:神戸さきがけ法律事務所
事務所URL:http://www.kobe-sakigake.net/
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