かっぱ寿司の失敗とワタミの成功…企業イメージのダウンと業績悪化は「ブランド隠し」でどこまで回復できるか?

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2018年05月30日 19:00  citrus

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■道のりは険しい「大塚家具」

 

以前、社長と娘によるお家騒動が話題となった「大塚家具」は、企業イメージの悪化によって、業績を大きく落ち込ませた。軌道修正を試みるも道のりは険しい。ここにきて、やっと黒字化を見込んでいると主張するも、先は長い。

 

西日本を代表する遊園地として知られた「エキスポランド」は、不況やレジャーの多様化による減収が続いている時に、ジェットコースター事故が起きた。重大事故だったため、イメージの悪化どころか客が極端に敬遠するようになり、結局は閉園に追い込まれた……。

 

それだけ、企業イメージの悪化は重大な問題なのである。

 

 

■“ひとり負け”状態から抜け出せない「かっぱ寿司」

 

一度悪いイメージがついてしまうと、回復させるのは非常に困難なこと。


回転寿司チェーンの「かっぱ寿司」が、その難しさを教えてくれている。絶好調な回転寿司業界にあって、“ひとり負け”状態である。


業績の悪化が始まった頃に「平日90円」キャンペーンを実施したのだが、そこで“手抜き”をしてしまったのではないか。安くするためにネタの質を落としたことは、素人目に見ても明らかだった。客の間で広まったイメージは、「安かろうマズかろう」。そこから客離れが始まり、そのイメージは払拭できていない。「かっぱ寿司」の名を聞くたび、かっぱのキャラクターを見るたび、「安かろうマズかろう」が浮かんでくるのではないか。


こうなると「かっぱ」を排除するしかない。まったく別の店名にすれば、新規店と認識され、集客できるのではないか。「かっぱ」のブランドを隠してしまう方法である。「ブランド隠し」というと印象は良くないが、イメージの回復策としては、正当な戦略と言える。


ロゴマークを変更し、店舗やメニューをリニューアル。古いかっぱのキャラクターも廃止した。話題性のあるメニューや食べ放題を提供し、復活するかに見えた。だが、それは一時的なもので、業績回復には繋がっていない。その後、万策尽きたのか、かっぱのキャラクターを復活させるという意味不明な行動に出ている。

 

 

■“ブランド隠し”は正当な戦略

 

この戦略、すなわち「ブランド隠し」で業績を回復させつつある企業がある。居酒屋チェーンを展開する「ワタミ」である。従業員の過労自殺や内部告発者の懲戒解雇が問題となり、ブラック企業のレッテルを貼られ、一時は倒産秒読みとまで囁かれたが、最近になって「ワタミ隠し」を始め、業績は回復傾向にある。

 

「わたみん家」を2018年度中に廃止し、主力の「和民」「坐・和民」も削減するという。代わって、旨唐揚げと居酒メシ「ミライザカ」と焼鳥専門居酒屋「三代目鳥メロ」に注力する。消費者は、この2つの店を見て「ワタミ」を連想することはないだろう。つまり、ブラック企業と呼ばれた「ワタミ」が経営していることは認識されないのである。ただただ新しい店ができた。安くて旨い。ならば利用する。消費者は、利用価値があると判断すれば利用し、その運営母体までは気にしていないのだ。

 

 

■消費者はどこまで見ているか?

 

その根拠とも言えるのだが、飲食店チェーンの多くが、同じ企業によって運営されていることを消費者は知らない。

 

たとえば、「牛角」「しゃぶしゃぶ温野菜」「フレッシュネスバーガー」は、『コロワイド』という企業。「すき家」「なか卯」「ココス」「はま寿司」「ビッグボーイ」は、『ゼンショーホールディングス』。「ガスト」「バーミヤン」「夢庵」「ジョナサン」は、『すかいらーく』。

 

超がつくほど有名な店ばかりだが、消費者はひとつひとつが独立した企業だと思っている。だが実際は、どこかのグループに属している。もし、グループ内のひとつで問題が発生したとしても、他の店に影響が及ぶ可能性は低い。これも「ブランド隠し」と同じメリットだと言える。

 

時代とともに賢くなった消費者だが、細かなことまでは気にしていない。それが現実。つまりブランドを隠してしまえば、別の店として営業することができてしまうのである。これは、消費者の心理・志向とも関係している。次から次へと新しい店を探し、渡り歩くようになった。この欲求に応えるためには、さまざまな業態で出店する方が得策なのである。経営はひとつでも、消費者からすれば、すべて別の店。同じ消費者がグループ内の店を渡り歩いてくれるようになる。しかも、問題発生時のリスクも分散させることができる。これほど、企業にとって都合の良い戦略はない。

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