トランプはどうやって体制を保証するのか、金正恩は信じるか

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2018年06月12日 16:12  ニューズウィーク日本版

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ニューズウィーク日本版

<核廃棄の前提となる体制保証は口で言うほど簡単ではない。アメリカは何度も体制保証に失敗しているし、北朝鮮は用心深い。可能性を探った>


アメリカのドナルド・トランプ大統領と、北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党委員長がシンガポールで行った会談で話し合った重要問題の一つは、金が核を放棄した後、どうやって体制を維持するかだろう。


トランプはすでに、朝鮮半島の完全な非核化と引き換えに、金の地位を保証すると表明している。しかし、金に対する安全の保証がどんな内容になるのか、北朝鮮国内から反乱が起こった場合はどうするのか、具体的にははっきりしていない。


アメリカは現在、北朝鮮に大使館を置いていない。また、北朝鮮政権は自国の主権を重視しており、近くに米軍が駐留するのを好まないだろう。事実北朝鮮は、隣りの韓国に駐留しているアメリカ軍をも撤退させるか、少なくとも、米韓の合同軍事演習を止めるよう訴えてきた。


一部の専門家たちは、米軍駐留の代わりに、国際平和維持部隊あるいは中国軍が重要な役割を果たせるのではないかと提案している。朝鮮半島を専門とするアナリストたちは、北朝鮮と韓国が4月、共同声明に署名し、平和を目指す意思を再確認しているため、両国の間にある非武装地帯を、緩衝地の機能を果たす平和地帯に変えるべきだと提案している。そこに多国籍軍と国際査察団を駐留させ、双方が攻撃をしかけたりしないようにするわけだ。


極めて用心深い北朝鮮


専門家のなかには、アメリカ政府は北朝鮮政府と不可侵条約を結ぶべきだと主張する者もいる。


支援を通じて北朝鮮市民との関係構築を図るアメリカの非政府組織(NGO)「National Committee on North Korea」のアソシエイツ・ディレクター、ダニエル・ワーツは、本誌に対して以下のように語った。「トランプ政権が口頭または書面で、北朝鮮を攻撃する意思はないと確約すれば、交渉の糸口となるだろう。しかし、北朝鮮はそれだけでは安心しない」


「2005年の6カ国協議で採択された共同声明でアメリカは、『朝鮮半島に核兵器を持ち込まない』ことと、『核兵器や通常兵器を用いて北朝鮮に攻撃を加えたり侵攻したりしない』ことを約束した。しかし、北朝鮮はそれだけでは不十分だとし、交渉を打ち切った。そしてその1年後の2006年10月に、初の核実験を実施するに至った」


ワーツは続けて、こう述べた。「北朝鮮は、政府間合意よりも重みのあるアメリカ議会の承認を得られるなら、平和条約か不可侵条約を検討するかもしれない。というのも北朝鮮は、アメリカ政府は政権交代すると前任者が合意したものをやすやすと破棄する可能性があることを十分に認識しているからだ」


米朝会談では、韓国に駐留する2万8000人にのぼるアメリカ軍、ならびに米韓合同軍事演習の今後について話し合われるのは間違いない。トランプは、韓国から軍の一部を撤退させる可能性について示唆している。一方の金は、軍事演習の規模が縮小されるなら、朝鮮半島におけるアメリカ軍駐留を容認する用意があることをにおわせている。


双方のそうした姿勢は歩み寄りを可能にするが、北朝鮮が満足できるような保証をアメリカが与えられる可能性は低いと主張するアナリストもいる。


ウクライナの二の舞も


国際情勢専門のシンクタンク、アトランティック・カウンシルのシニアフェロー、ロバート・マニングは本誌に対し、過去の失敗例に触れながらこう語った。「安全条約は、ある種の保証となるだろう。ただし、これまでの歴史を見る限り、アメリカが安全を約束したところで、それにどの程度の価値があるのか、確かなことは言えない。(リビアの指導者だったムアンマル・)カダフィは核を放棄したのに殺された。ウクライナも核兵器を手放す代わりにアメリカなどが安全を保障したが、今は国境をロシアに脅かされている。


「(米朝会談では)まだ答えられていない問題が数多くある」とマニングは語る。「これが世界最大のリアリティ番組であるということ以外、次に何が起こるか、私にはわからない」


(翻訳:ガリレオ)




クリスティーナ・メザ


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