米ロ会談、プーチンの肩持った裏切り者トランプにアメリカ騒然

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2018年07月17日 15:42  ニューズウィーク日本版

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ニューズウィーク日本版

<一部で懸念されていたとおり、トランプはまんまとプーチンの術中にはまって自国の選挙に介入したロシアを無罪放免にしてしまった>


7月16日、フィンランドの首都ヘルシンキで米ロ首脳会談が開催された。会談後にロシアのウラジーミル・プーチン大統領と共に記者会見に臨んだドナルド・トランプ大統領。その発言に共和党も含む米連邦議会の議員、国土安全保障当局者や諜報当局者らの間から怒りの声が上がった。ロシアが2016年の米大統領選に介入した疑惑について、トランプがFBIなど自国の情報機関が出した結論に公然と異を唱えたためだ。


「私はアメリカの情報当局者たちを大いに信頼している。だがプーチン大統領は今日、疑惑をきわめて強く否定した」とトランプは語った。


プーチンと2時間にわたって1対1の会談を行い、さらにその後そのほかのメンバーを加えて2国間協議を行ったトランプは、米ロ関係が悪化していた責任について記者団に「両国に責任がある。アメリカは愚かだった。我々はみんな、愚かだった。もっとずっと前に、この問題について話し合っておくべきだった」と語った。「捜査は両国にとって最悪の事態で、我々を分断するものだったと考えている。共謀などなかったことは、みんなが知っている」


マティス国防長官は辞任か


米ロ首脳会談に先立ち13日には、ロッド・ローゼンスタイン米司法副長官が12人のロシア人を起訴したと発表したばかり。12人は選挙介入目的でサイバー攻撃を仕掛けた罪に問われており、ロシア軍参謀本部情報総局(GRU)のメンバーだと考えられている。起訴は、トランプ政権のロシア疑惑を調べているロバート・モラー特別検察官の捜査の中で行われたものだ。


ワシントンを拠点に安全保障問題を扱う弁護士で、情報当局者たちの代理人も務めるブラッド・モスは、「アメリカの大統領が外国で、選挙での自らの勝利を手助けした疑いがあるロシアの独裁者の隣に立ってその味方をした」と語り、トランプ発言を批判した。


モスはさらに、トランプの発言を受けて、ジェームズ・マティス国防長官とダン・コーツ国家情報長官が今後の身の振り方を考えざるを得なくなる可能性も示唆した。


「彼らは今回のトランプの言動を、アメリカの大統領として適切な言動と考えるだろうか」とモスは語り、さらにツイッターに、今回のトランプ発言が2人の辞任理由にならないならば「どんなことも辞任理由にはならないだろう」と投稿した。


コーツはトランプの発言について直接のコメントはしなかったものの、16日に発表した声明の中で「2016年の選挙にロシアが介入し、また彼らが今も我が国の民主主義を弱体化させようとさまざまな取り組みを行っていることは明白だ」と述べた。


トランプはプーチンに擦り寄る一方、同盟諸国には喧嘩を売ってきた。米ロ首脳会談に先立って出席した毎年恒例のNATO首脳会議では、欧州の同盟国に対して国防支出を引き上げるよう要求。さもなければアメリカがNATOを脱退すると脅した、という報道もあった(トランプはこれを否定)。


15日にCBSで放送されたインタビューの中では、「EU(欧州連合)は敵」だと発言。これが同盟諸国の怒りを買ったと、米空軍の諜報担当者は言う。「私は同盟諸国のパートナーたちと仕事をしているが、あのコメントは評判が悪かった」とこの諜報担当者は語った。


「#反逆の首脳会談」がトレンド入り


トランプとプーチンの共同記者会見に対する、国防総省内の反応はさまざまだった。多くの当局者がトランプの発言を非難した一方、それに反論する声もあった。


「トランプがプーチンの前で本人を侮辱すると予想していたとすれば、マスコミは愚かだ」と、米海兵隊のある諜報アナリストは語った。「隣にプーチンがいる場で、本心を言う訳がない」


米海軍の元情報アナリストで、ロシアが2016年の米選挙に影響力を及ぼすために使用したツールや技術についての詳細を記した『The Plot to Destroy Democracy(民主主義破壊計画)』の著者でもあるマルコーム・ナンスは、ツイッターで終日「#TreasonSummit(反逆の首脳会談)」がトレンド入りしていると指摘して次のように語った。


「彼は司法省と米情報コミュニティー全体を裏切って彼らを実質的に嘘つき呼ばわりし、プーチンの味方をしたのだ」


共和党のジョン・マケイン上院議員もナンスと同様の見解を示した。


「ヘルシンキでの記者会見は、記憶にある限りでの、アメリカの大統領による最も恥ずべき振る舞いだった」と、上院軍事委員会の委員長でもあるマケインは声明で語った。「米ロ首脳会談が悲惨な過ちだったのは明らかだ。トランプ大統領はプーチンに立ち向かうことができないだけでなく、そうする意思もないことを証明した」


ブレナン元CIA長官はツイッターで、「会見でのトランプ大統領の発言は軽犯罪や重大な犯罪の域を超えるもので、まさに反逆に他ならない。愚かなだけでなく、完全にプーチン氏の手の内に入っている」と強く批判した。


国外で激動の数日間を過ごしたトランプ大統領は、16日夜にアメリカに帰国する予定だ。


(翻訳:森美歩)


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ジェームズ・ラポルタ


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  • 「プーチンの肩持った裏切り者」だって?今頃気づいたの?(呆)
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