けやき坂46、ラストアイドル、原田珠々華……新時代の胎動を感じた『TIF 2018』を振り返る

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2018年08月14日 22:32  リアルサウンド

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 世界最大のアイドルフェス『TOKYO IDOL FESTIVAL 2018』が、8月3日から5日までの3日間、お台場・青海周辺エリアにて開催された。


参考:STU48、AKB48劇場で2回目の出張公演 船上劇場に向けて成長みせるパフォーマンス力


 総勢207組、1,315名のアイドルが出演し、3日間の来場者数は計81,000名を記録。初の3日間開催となった2016年は約75,000名、2017年は約81,000名であることから、アイドルシーンが変わらぬ盛り上がりを見せていることが分かる。初日はけやき坂46、中日はBiSH、そして最終日はHKT48が大トリを務めた。


 坂道シリーズからは唯一の出演となるけやき坂46。昨年は「欅坂46(欅坂46+けやき坂46)」名義だったため、単独としては念願のTIFのステージとなる。グループ加入後、初のTIF出演となる2期生は小坂菜緒をセンターに据えた「半分の記憶」を披露。多くのツアー、ライブを重ねてきた彼女たちは、アルバムリード曲「期待していない自分」でクールなパフォーマンスを、ライブアンセムと化している「誰よりも高く跳べ!」「NO WAR in the future」では、ファンと一体となった“ハッピーオーラ”で、昨年から大きく成長した姿を見せつけた。


 TIFチェアマンである指原莉乃のプロデュースでも知られる=LOVEは、昨年のTIFのHOT STAGEが初のお披露目ステージだった。その時は、AKB48グループや坂道シリーズの楽曲のカバーがメインのセットリストであった。あれから『=LOVE』『僕らの制服クリスマス』『手遅れcaution』と3枚のシングルをリリースした彼女たちは、オリジナル曲でのセットリストとなり、「手遅れcaution」では鬼気迫る表情とダンスパフォーマンスで会場を圧倒。けやき坂46と同じく、昨年からの成長を強く感じさせた瞬間だ。


 AKB48グループからは、STU48も2度目の出演となった。筆者が観た野外ステージSMILE GARDENのパフォーマンスでは、マリンルックを想起させる爽やかな衣装で、「ナギイチ」「ごめんね、SUMMER」「真夏のSounds good!」といったAKB48グループのサマーチューンを披露。=LOVEの真逆とも言えるこのセットリストは、各姉妹グループの劇場をメインとした出張公演でも披露していたセクション。持ち時間が短いながらも、“CGB41”として発表したクリーム玄米ブランのCMでもお馴染みの「夢力」と1stシングル表題曲「暗闇」で、2面性を表現した構成も印象的だった。


 9年目の開催となるTIFは、今年4月にタイ・バンコクで初の海外開催を成功させ、名実ともにワールドワイドなアイドルフェスに成長した。バンコクを拠点とするBNK48の出演も相まって、会場には例年に増して海外からのファンと女性客が目立った。その一方で、初年度の2010年より出演し続けていたバニラビーンズやPASSPO☆、ベイビーレイズJAPAN、ベボガ!が解散を発表しており、彼女たちにとってはラストのTIF出演となった。


 ベビレは、最終日の西日射すSMILE GARDENのワンステージに全ての思いをぶつけた。エリア後方までぎっちりとファンで埋め尽くされたライブは、言葉はいらないとばかりの熱いステージに。中でも、ラストの「夜明け Brand New Days」は、憂いを帯びた表情や歌うパートから、5人の万感の思いが伝わって来る、涙のパフォーマンスだった。また、大トリ前のHOT STAGEを担当したPASSPO☆は、「少女飛行」でライブをスタートさせ、TIF初年度でも披露していた2010年リリースの1stシングル表題曲「Let It Go!!」をパフォーマンスする一幕も。キャプテンの根岸愛は、「いつ終えてしまうか、分かりません。今を大切に応援してほしいなと思います」と今後のアイドルシーンにバトンを繋いだ。


 最後のTIF出演を飾る一方で、今年が初出演のアイドルグループも多くいた。各日のトリを務めたAKB48グループや坂道シリーズ、WACK所属グループと、アイドルシーンは一大勢力がひしめき合っているが、新しい勢力として拡大しているのが、ラストアイドルファミリー。2017年8月よりスタートした秋元康総合プロデュースによるアイドルオーディション番組『ラストアイドル』(テレビ朝日系)から生まれたグループで、LaLuce、Good Tears、シュークリームロケッツ、Someday Somewhere、Love Cocchiの1期生メンバーからなる5グループがTIFに出演した。全日出演のラスアイは、初日から2日目にかけて、各グループが散り散りになってステージパフォーマンスを行い、最終日は5組のラストアイドルファミリーとして、HOT STAGEに集結。22人で披露する「好きで好きでしょうがない」は圧巻で、2日間に渡って各グループを観ていた筆者は、壮大な物語の中にいるような感覚になった。


 意外にもTIF初出演となるNMB48は、5期生メンバーを中心としたカトレア組でHOT STAGEの舞台を踏んだ。山本彩の卒業発表があり、グループのターニングポイントを迎えているNMB48だが、グループの未来を担うエースの山本彩加をセンターに据えたフォーメーションで、「僕らのユリイカ」「ナギイチ」「らしくない」「ワロタピーポー」「青春のラップタイム」など、怒涛のライブチューン8曲で駆け抜けた。先述した通り、「ナギイチ」はSTU48が披露したように、AKB48グループを代表するサマーチューンだが、ほかにも多くのライブ映えする曲があることを示した、グループの次に繋がるパフォーマンスであったように思う。


 3日間を通して、最も印象に残ったのが、初日SKY STAGEでの原田珠々華のステージだった。フジテレビ湾岸スタジオ屋上に設置されたSKY STAGEは、ステージ奥にフジテレビ本社を望み、澄んだ青空や美しい夜景をバックにパフォーマンスすることができる場所。今年2月に解散したアイドルネッサンス。メンバーの8人はそれぞれの道を歩み始めており、原田はソロシンガーとして、この日が初のパフォーマンスとなった。原田の前のアクトを務めたのは、アイドルネッサンス候補生として原田と共に活動していたAIS -All Idol Songs-の7人。「サマーライオン」「Endless Summer」の2曲は、この夏に向けて持ち曲として追加された屈指のサマーチューンだ。また、アイドルネッサンスのカバー曲「夏の決心」をSKY STAGEで披露する姿は、昨年の彼女たちのステージをフラッシュバックさせた。


 AISから最高の形でバトンを受け取った原田。アコースティックギターを携え、自身で作詞・作曲したオリジナル5曲でTIFに臨んだが、そこで待ち受けていたのは、まさかの音源トラブルだった。結果、ライブは「Hero」「今年の夏休みは君とデートに行きたい」の2曲を披露するもトラブルは解消されず、MCを挟み、弾き語りの「Fifteen」「あなたへ」を歌った。予定時間を大きく超えた30分に及ぶステージは、遠くに稲光が煌めく伝説に残るライブだったのは間違いない。「Hero」で最初に音飛びが起こり、原田が歌うのをやめた瞬間、自然にファンの手拍子が起こったこと。そして、長いMCの途中、ステージ横で見守るAISのメンバーから「珠々華頑張れー!」という声援が飛んだこと。この2つの出来事は、マイナスをプラスに変える彼女の人柄があってこそ起こったもので、それは力強い歌声や美しいファルセットに負けないくらい、彼女の大きな武器となっていくはずだ。SKY STAGEでのリベンジを誓った原田。けやき坂46や=LOVEと同じように、来年は大きく成長した姿を見せてくれることを楽しみにしたい。


 大トリのHKT48では、グループ加入から4カ月の渡部愛加里が、初めてフル参加となるステージでセンターに立っていた。アイドルシーンでは中堅グループが次々と解散を発表しているが、新しい世代も次々と芽吹いている。シーンの縮図と未来が垣間見える3日間だった。(渡辺彰浩)


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