格言を公表し「不倫」で失脚した名将軍を反面教師にせよ

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2018年08月22日 18:41  ニューズウィーク日本版

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ニューズウィーク日本版

<イラク戦争の功労者、米軍のデービッド・ペトレアス将軍の「格言」から学べる「リーダーシップ」の教訓。本誌8/21発売号「CIAに学ぶ最高のリーダー論」特集より>


デービッド・ペトレアスは泥沼のアフガニスタン・イラク戦争で最も称賛された将軍の1人だ。ジョージ・W・ブッシュ政権下ではイラク駐留米軍の司令官として治安回復に貢献。その後、バラク・オバマ大統領(当時)にアフガニスタン駐留米軍司令官に指名され、さらにCIA長官に転じた。しかし、女性との不倫発覚で出世の階段を転げ落ち、辞任に追い込まれた。


軍時代の高い評価から将来の大統領候補とも言われたペトレアスは失脚前、ニューズウィーク誌上で自らの「リーダーのルール」を公表した。猛スピードで昇進した彼の「原則」には一定の説得力がある。ただし、イラクで治安維持のために残虐な手法を取ったのではないか、という疑惑が辞任後に報じられるなど、その成功の裏には影もちらつく。今となってみると突っ込みどころもある「反面教師」ペトレアスの言葉から学べることは──。


◇ ◇ ◇


「部隊の最前線に立って範を示せ。リーダーはそのリーダーなりの成績しか残せない。部隊が並なのはリーダーが並だからだ」


「リーダーは明確なビジョンと、達成可能で戦略的な『ビッグアイデア』を示せ。このアイデアを組織全体および他の全ての利害関係者に伝えよ」


「リーダーは部下にエネルギーを与えよ。『酸素泥棒』になるな」


〈教訓〉「ビッグアイデア」「エネルギー」......「最も成功した将軍」としての気負いがにじむ。気負い過ぎたリーダーが、感情のはけ口として不倫に走ることは多い。


「あらゆるルール、手順、政策には例外がある。例外の実施を決めるのはリーダーだ。そしてリーダーはそれを説明せねばならない」


〈教訓〉米軍のジェームズ・スティール大佐は03年から05年にかけて、イラクでスンニ派を弾圧するシーア派の「死の部隊」に関与。空挺師団長だったペトレアスはスティールが関わる残虐行為を容認していた、と疑われた。「例外」が暴走した結果、汚れた手で治安維持を実現したのかもしれない。


「謙虚たれ。あなたが指導する人々は、既に地上戦の経験がある。『よく聞きよく学ぶ』べし」


「チームの一員になれ。チームの勝利も失敗もリーダーのものだ」


「階級に頼るな。論理に基づく説得力ではなく階級に頼るリーダーは、思考力かコミュニケーション能力に問題がある。状況認識力の向上のため、信頼できる部下の助言を活用せよ」


〈教訓〉失脚の原因となった不倫相手は自伝の執筆者。そして予備役の少佐でもあった。部下である彼女の助言を活用し過ぎたのだろう。確かに「勝利も失敗もリーダーのもの」だ。


【参考記事】企業もスパイ機関も同じ CIAが説く意外な最強リーダー論


「リーダーは思慮深いと同時に決断力がなくてはならない。決断するリーダーを全ての目が見つめている。萎縮するな。時に大胆な動きが最高の動きになる」


〈教訓〉大胆過ぎる行動は時に最低の結果を招く、とペトレアスの経験は教えてくれる。


「戦いに慣れよ。肉体は究極の武器となる。健全な肉体が健全な精神には不可欠だ」


「競争を避けるな。部下に挑戦の機会を与え、成長させよ」


「チームに不要な人間などいない。いつでも戦場で重要な任務を果たせるだけの自尊心をメンバーに持たせよ」


〈教訓〉マッチョ志向だったことがうかがえる言葉だ。陸軍士官学校時代から学業・スポーツとも超優秀、という挫折知らずの経歴が、過度な自尊心を生んだのかも。


「誰しも間違いをする。重要なのはそれを認めること、そこから学ぶこと、そして振り返らず、間違いを繰り返さないことだ」


〈教訓〉まさにそのとおり。彼が自分の言葉から学んでいることを望む。


※本誌8/28号(8/21発売)「CIAに学ぶ最高のリーダー論」特集では、最強スパイ機関を最強たらしめる意外なマネジメント術に迫る。他に、米海兵隊リーダー11の鉄則、知性派国防長官マティスの本棚も公開。




ニューズウィーク日本版編集部


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  • 単に皮肉で揚げ足取りしてるだけか。知性の低い記事だ。
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