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タイガー・ウッズ復活はおじさんたちへの応援歌

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2018年08月28日 16:02  ニューズウィーク日本版

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ニューズウィーク日本版

<数々の苦難を乗り越えて全米プロで2位に入った姿に多くの男性が自らの境遇を重ね合わせた>


8月12日に終わったゴルフの全米プロ選手権で、タイガー・ウッズ(42)は優勝は逃したものの2位に入り、「復活」を印象付けた。


ウッズが首位と4打差で迎えた最終日を、全米の中年男性が固唾をのんで見守った。全米プロ制覇は復活の確かな証拠になる。彼らがウッズを応援したのは、「俺たち」の代表だと感じられたからだ。


白人でも黒人でも真面目に働いてきた男性なら、いい時もあれば不遇の時代もある。かつての栄光を取り戻すため、闘わざるを得なかったこともある。


彼らにとってウッズの復活は、自分自身の復活に重なって見えた。大会のテレビ視聴率からは、どの瞬間も視聴者が熱い思いで見ていたことが分かる。


ウッズが若くして世界ランキングでトップに立ち、21世紀のジャック・ニクラウスと言われた時代には、全ての男性が支持していたわけではない。15年前にアメリカのゴルフ場で男たちがコースを回っているときに「一番すごいゴルファーは誰か?」という話題になると、白人男性の4人に3人がウッズではなく、フィル・ミケルソンと言っただろう。80年代のバスケットボール界でラリー・バードとマジック・ジョンソンのファンが、白人と黒人に分かれたのに似ている。


でも、今は違う。コースを回る中年男性は、自分がどんな人種であろうと、最高のゴルファーはウッズだと言うだろう。アメリカ社会で人種間の対立が鮮明になった今、彼の復活には応援せずにいられない夢がある。


ウッズの転落の始まりは、米経済の景気後退の始まりと重なっていた。それまでは金儲けも、PGAトーナメントで毎週優勝することも、全てが簡単に思えた時代だった。でも、そんなバブルははじけ飛んだ。


彼の凋落、わが身の凋落


30 代前半で史上最高のゴルファーと呼ばれ、PGAツアーで通算79勝したウッズにとって、終わりの始まりは07年7月に訪れていた。ウッズは全英オープン出場後、左膝前十字靭帯を断裂する。その後も優勝はしたが、選手生活にも私生活にも徐々にほころびが生じた。


アメリカの不動産バブルがはじけたのは、ほぼ同じ時期だ。それまで「勝ち組」だったアメリカ人も、おかしなことになってきた。ウッズの凋落を笑っていた男たちは、気が付けば自分を笑うことになった。バブルが崩壊すると、彼らもウッズと同じく人生の悲哀を味わった。


ウッズは度重なる手術を受け、昨年5月には飲酒もしくは薬物の影響下で運転した容疑で逮捕もされた。選手生命の危機がささやかれ、ウッズ自身、そうかもしれないと示唆していた。


だからこそウッズは、今回の成績が自身のキャリアにどのような意味を持つかを理解している。7月の全英オープンで6位タイに食い込み、今回の全米プロで2位に入ったのは確かに素晴らしい。しかし、やはり優勝こそが完全復活の証明であることは分かっている。


ウッズはこの5年間、優勝していない。だが、けがを克服した今、再び栄冠を勝ち取る日はそう遠くないはずだ。昨年春に脊椎固定手術を受けた際には医師の許可が下りるとすぐに、復帰を目指してトレーニングを開始した。


そして今、彼はコースに立っている。米経済と同じく、悲惨な試合結果は過去のものだ。ウッズが栄冠を目指して戦う姿に、アメリカの中年世代は自らを重ね合わせている。


<本誌2018年8月28日号掲載>




デービッド・マギー


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