女性の政治参加が進まない国で、野田総務相が示す「覚悟」

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2018年08月28日 17:22  ニューズウィーク日本版

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ニューズウィーク日本版

<26歳で県議会議員に初当選し、衆議院議員となって25年。女性衆議院議員の中で最多当選となった野田聖子総務相は、どんな政治を目指しているのか>


自民党の総裁選が近づいている。安倍晋三首相と石破茂元党幹事長の一騎打ちになると目されているが、派閥で対応が決まってしまう今の状況では、結果を予想するのは難しいことではない。そうであったとしても、動向が注目を集める人物がいる。


総務大臣、内閣府特命担当大臣(マイナンバー制度担当)、女性活躍担当大臣の野田聖子氏だ。昨年、入閣したその日に次の総裁選に出馬することを表明しただけでなく、2015年の総裁選でも出馬の意欲を見せながら、最終的には、立候補に必要な推薦人20人が集まらずに断念した経緯もある。


著書『みらいを、つかめ――多様なみんなが活躍する時代に』(CCCメディアハウス)では、そうしたことも受け止めながら、「わたしが総理大臣になったら」どんな政治を目指すのかの「覚悟」が綴られている。


小泉純一郎元首相から学んだこと


1987年、26歳のときに、岐阜県議会議員に史上最年少(当時)で初当選したのが、野田氏の政治家デビューだった。93年(32歳)に衆議院議員となって25年。これまでに5回の閣僚経験をもつ。


選挙のとき以外は滅多に名前を聞かない政治家も多くいる中で、野田氏はさまざまな場面で話題を呼んできた。理由のひとつには、これほど総裁選に熱意を示す政治家が他にいない、という点が挙げられる。本人曰く、「『ばかじゃないのか』と言われるぐらい総裁選にコミット」してきた。


だがそれは地位や権力のためではなく、100%の仕事ができる環境を作りたいからだという。絶対にあり得ないと思われていた郵政民営化と道路公団民営化を小泉純一郎氏があっという間に実現した姿を見て、やるべきだと判断したことを速やかにやるには「政治力」が必要だと学んだそうだ。


その郵政民営化法案が提出された際、自ら「市場万能主義的な考え方」だと語る野田氏は、これに反対票を投じている。結果、直後の総選挙では党の公認を得られず、「自民党の敵」として対抗馬を立てられた(無事当選したものの離党勧告を受けて、離党。その後に、復党)。


これについては「『本音で語る』ことを大切にして」いるからだと述べる。今の日本が直面しているさまざまなリスクに向き合うためには、まずは問題があることを認めることから始める必要がある。それをせずに「うまくいっている」と言うことに抵抗を覚える、と。


 女性は男性よりはるかに現実主義者です。私は一人の女性として、少子化などの国家的危機を、ごまかすようなことはできません。不都合な真実であっても、それを語り、みなさんと認識を共有できなければ、協力していただくこともできません。(16ページ)


女性の政治参加が進まない


現在、衆議院の女性議員の中では最多当選の野田氏は、ダイバーシティ(多様性)やインクルージョン(全員参加)といった問題にも積極的に発言、活動している。特に「政策決定の場に女性が少なすぎることが、この国の政策にゆがみをもたらしている」として女性議員の増加に力を入れている。


日本の一般企業で管理職に占める女性の割合は、2017年の調査でも13.2%。アメリカの43.4%(2013年)、イギリスの36.0%(2016年)、ドイツの29.3%(2016年)などと比較すると、依然として非常に低い水準に留まっていることがわかる。それはそのまま、政治の世界にも当てはまる。


2017年に世界経済フォーラムが発表した「ジェンダー・ギャップ指数」によれば、日本における男女の格差は、世界144カ国中114位となっている。だが、その詳細を見てみれば、4つの指数のうち「健康」では1位。「教育」でも74位と、さほど決定的な順位ではない。


対して、「経済参画」は114位、「政治参画」は実に123位だ。つまり、女性議員の少なさが日本の男女格差の大きなネックになっている。そこで野田氏など有志は、議席や候補者の一定割合を女性とする「クオータ制」の導入を目指したが、強い反対に遭って実現には至っていない。


自民党の中にはいまだに、支持率が高いゆえに「国民の多数が自民党はいいと言っているんだから、べつに女性は要らないでしょう」といった意見があるという。女性議員の比率を将来は五分五分にすると聞いて、「これ以上の女性の社会進出は国を滅ぼす」と言った国会議員もいるらしい。


政治の力で「違和感」を解消する


もっぱら男性が持っている既得権を、強引に引き剥がすとまでは言わずとも、痛くないように剥がしていくにはどうすればいいのか――そんな苦悩ものぞかせながら、同時に野田氏は、クオータ制に反対する議員の中に女性も多くいることを嘆いている。


そうした女性議員は、自分は実力で当選したのに、クオータ制で女性枠ができたら自分の力が過小評価される、という点を心配しているのだ(本書で野田氏と対談しているカルビーシニアチェアマンの松本晃氏は、これを「『女王蜂』状態」と呼ぶ)。


これこそ、ダイバーシティを妨げる既得権益だと言える。結局のところ、男性でも女性でも変わりはない。また他のどんな集団であっても、自分たちとは違う「異物」に対する違和感は当然あり、そこには既得権が付き物だ。


既得権は、いつかは手放す日が来るだろうが、それよりも政治の力で制度化することで、思い切って異物をどんどん入れてしまえば、もう異物ではなくなる。そうすれば既得権益などなくなる。それが、野田氏が総理を目指す理由のひとつになっている。


ドイツのアンゲラ・メルケル首相や英国のテリーザ・メイ首相をはじめとして、世界各国では女性リーダーが当然のように増えている。果たして、日本初の女性総理の誕生は、いつになるだろうか。


『みらいを、つかめ――多様なみんなが活躍する時代に』


 野田聖子 著


 CCCメディアハウス




ニューズウィーク日本版ウェブ編集部


このニュースに関するつぶやき

  • 他ならぬ野田聖子やパヨチンバカ野党系女性議員がヒステリックに目を釣り上げて喚いている現状こそが、真っ当な女性を政治参加から遠ざけているのだw
    • イイネ!3
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