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平成最後の年末にリメイクされる幻の特撮映画『大仏廻国』とは一体何か? 横川寛人監督に聞く

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2018年09月09日 22:22  Excite Bit コネタ

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Excite Bit コネタ

写真横川寛人監督と『大佛廻國・中京篇』で歩いた聚楽園の大仏
横川寛人監督と『大佛廻國・中京篇』で歩いた聚楽園の大仏

戦前に撮られた『大佛廻國・中京篇』という特撮映画がある。愛知県知多郡聚楽園(現在の愛知県東海市)の大仏が動き出し、名古屋を中心とした中京地方の名所を巡るという作品だ。撮影には、円谷英二の師匠・枝正義郎が監督として携わったが、すでにフィルムは失われて見ることができない。

その『大佛廻國・中京篇』のコンセプトを元に、新たな作品『大仏廻国 The Great Buddha Arrival』として、現代によみがえらせるプロジェクトが進行中だ。今年12月に公開が予定されており、特撮ファンを中心にウェブ上で注目度が高まりつつある。そこで『大仏廻国 The Great Buddha Arrival』を撮る横川寛人監督に、今回の企画についてお話をうかがった。


仲間内の話がいつしか大きなプロジェクトに


――『大仏廻国 The Great Buddha Arrival』を作ろうと思ったきっかけは何でしたか? 

ゴジラ好きの友人から『大佛廻國・中京篇』の存在を教えてもらったことが発端でした。2014年に発売された『SF映画創世記』という、戦前の特撮映画の歴史を紹介しつつSF映画の源流をひも解く本に『大佛廻國・中京篇』が紹介されていたんです。そのことを友人から聞かされ、『大佛廻國・中京篇』という映画に絶対に関わってみたいと思ったんです。

――それで自分で作ってみようと? 

以前から自主製作で短編映画を作りYouTubeに上げていました。その後、仲間でやっていた映像制作を仕事として会社化していて、その時に『大佛廻國・中京篇』をテーマに映画が作れればいいなと思いました。2016年に枝正義郎監督のお孫さんにあたる佛原和義さんに連絡を取り、プロジェクトを始めました。きっかけをくれたゴジラ好きの友人も、今回のプロジェクトで美術担当として加わっています。

――『大仏廻国 The Great Buddha Arrival』は製作資金をクラウドファンディングで集めました。1回目は12万9000円でしたが、2回目は目標額100万円を超えて148万1000円まで行きましたね。

クラウドファンディングが成功せずとも、映画は撮ろうと思っていました。1回目はそこまで集まらなかったのですが、2回目のクラウドファンディングは予想以上の金額になりました。クラウドファンディングを始めた当初は、集まった分の予算で小規模な映画ができればと考えていたのですが、いつの間にか自分が思っていた規模よりもプロジェクトが大きくなってしまって。この予算のおかげで、著名な俳優さんに出演のオファーを出せたり、有名なクリエイターさんに制作依頼できたんです。そうはいっても現時点での製作費の総予算は300万円ほどですが。


“レジェンド”宝田明の他にハリウッドからの声も


――今作では宝田明さんを筆頭に、螢雪次朗さんなど日本の特撮映画を支えてきた俳優が出演しています。キャスティングはどんな基準で行いましたか? 

ゴジラであったりガメラであったり、私自身が影響された特撮映画に出演している人を集めたいというのが頭にありました。そうなると、まず宝田明さん以外の人は考えられません。正直、宝田さんは大物過ぎて無理かなと思っていたので、出演を受けてくださったときは本当にうれしかったです。もちろん、すべての交渉が順調だったわけはないです。『大仏廻国 The Great Buddha Arrival』は自主製作映画で、オファーの8割は断られました。一方で「宝田さんが出演されるなら」ということで決まったケースもありました。

――NMB48の岩田桃夏さんが映画のクラウドファンディングに支援したことで、岩田さんのファンの間でとても話題になりました。

感謝している部分はすごく多いです。2回目のクラウドファンディングでは、予定通り達成できる流れで進んでいたのですが、それをさらに伸ばしてくれたのが岩田さんの支援でした。8月に東京・南千住で行った映画の展示会「大仏廻国展」にも岩田さんのファンがたくさん来てくれましたし。撮影についても、岩田さんは映画やドラマ経験がないにもかかわらず、現場での落ち着き、セリフ回しなど完璧でした。


――関係者の顔ぶれを見ていると海外からの引き合いもあるようですが。

2回目のクラウドファンディングを始めたとき、その話題を扱った記事がYahoo!ニュースに転載されたことがきっかけです。その記事を、特撮ファンであり海外映画のプロデューサーをしているアメリカのエイブリー・ゲーラさんが見つけてくれて、内容を英語にして広めてくれたんです。そこから海外の特撮ファンにも『大仏廻国 The Great Buddha Arrival』が知られていきました。ハリウッドで俳優をされているフィリップ・グレンジャーさんも、その縁で決まった一人で、彼には劇中のアメリカ大統領役で出演してもらう予定です。関わってくれている皆さんに感謝したいです。


枝正監督の孫から「思いっきり新しいことをやってほしい」


――特撮ファンにとってはなじみの出演者がそろう中で、監督として指示を出していくことにプレッシャーは感じますか? 

私自身、映画経験が浅いものですから、宝田明さんであったり螢雪次朗さんであったり、大御所の方への演出は、とても緊張していました。こういう風に動いてほしいということを、恐れ多くて、なかなか言い出しづらいというか……。しかし、いったんカメラを回し始めると、そんなことを吹き飛ばす素晴らしい演技をされたので、逆に私が助けてもらった部分は多かったです。


――『大佛廻國・中京篇』に登場した愛知県にある聚楽園大仏でも撮影をしました。

今回の撮影で聚楽園の大仏に初めて行きました。予想していたよりとても大きく、圧倒されました。そして、かっこよかった。この大仏が動いたというオリジナルの『大佛廻國・中京篇』を、あらためて見たいと思いました。聚楽園の大仏が動く設定ということは、着ぐるみのパート以外にも枝正監督は、おそらく本物の聚楽園大仏を映画で撮っていると思います。当時、枝正監督が聚楽園でロケをして、映画スタッフたちもこの場にいたんだろうなと考えたら、感慨深いものがありました。

――枝正義郎監督のお孫さんにあたる佛原和義さんには、何かアドバイスをもらったのでしょうか? 

佛原さんからは「思いっきり新しいことをやってほしい」というお言葉をいただきました。もちろん『大佛廻國・中京篇』自体はフィルムが失われているため、詳細は分からないのですが、とにかく2018年だからこそできる大仏廻国を作ろうと思いました。なぜ大仏が歩き出したのか、どうしていろいろな場所を観光して歩くのか、その理由付けを、いかに現実味を踏まえて物語として持っていくかということを、1年ほどずっと考えていました。

加えてオリジナルの設定も、大いにリスペクトしたいと思っています。『大仏廻国 The Great Buddha Arrival』において、現代に歩き出すのは架空の大仏ですが、序盤は『大佛廻國・中京篇』と関連させて、歩く聚楽園の大仏が登場します。


――『大佛廻國・中京篇』ではただ大仏が動くだけではなく、当時の社会的背景や、それに関連して訴えるテーマも含まれていたようですが。

『大佛廻國・中京篇』が公開された1934年は、不安定な経済、そして日本が中国大陸への影響力をより色濃くしようとした満州事変から日中戦争の間の時期です。映画内でも、閻魔大王が爆弾三勇士(筆者注:1932年の第一次上海事変で、敵陣の中国国民党軍に対して自爆をもって突撃路を開き、英雄視された3人の日本軍人)に敬意を表する場面が登場し、日本社会を覆っていた大陸進出への雰囲気を感じられます。また当時は三原山で身投げする人が多く、劇中では三原山心中者をしかり飛ばす場面もありました。今回の『大仏廻国 The Great Buddha Arrival』でも、今の社会背景を大仏が出現した理由として、要素に入れています。

リメイクは作品を未来へ引き継ぐということ


――『大仏廻国 The Great Buddha Arrival』では昔ながらの撮影方法の他に、CGで大仏が動くという形を取っていますね。

『大佛廻國・中京篇』の手法をなぞるように、すべての撮影で着ぐるみやミニチュアを使おうという考え方も理解はできます。ただ現在のSF映画の表現方法で、何を使うのが一番自然に見せられるかといったら、それはCGです。1934年の『大佛廻國・中京篇』や、その後の1950年代から作られたゴジラシリーズでは、着ぐるみで表現することが当時もっともリアルにみせられる方法でした。もし枝正義郎監督も円谷英二監督も、今生きていたらCGを使ったと思います。


――『大佛廻國・中京篇』はフィルムが現存しない点でオリジナルを知ることは難しいですが、それでも数少ない資料から垣間見えるオリジナルと『大仏廻国 The Great Buddha Arrival』との対比に、特撮ファンは敏感になるのではないでしょうか。

どの映画でも必ず賛否両論はあります。私が常に考えているのは、いかに作品を次の世代に引き継げるか、ということの重要性です。一つのコンテンツを未来に渡していくときに、リメイクやリブートは大切な役割を担います。

例えば、『スター・ウォーズ』シリーズも、今はオリジナルとはまったく異なったスタッフが撮っています。昔の『スター・ウォーズ』が好きな人にとっては、もしかしたら新シリーズは気に食わないところが多いかもしれない。しかし、リメイクによって新たな子どもたちが『スター・ウォーズ』のファンになり、その後を支えてくれます。私もゴジラを好きになったきっかけは、1954年に封切られたオリジナルの『ゴジラ』ではなく、平成に公開されたシリーズがきっかけです。

リメイクされた映画が不評でも、第1作が神格化されていれば、それでいいと思います。約80年前に『大佛廻國・中京篇』という映画があり枝正義郎という監督がいたんだということを、今回の映画化をきっかけに知ってもらいたい。『大仏廻国 The Great Buddha Arrival』はそういったポジションでありたいなと思います。
(加藤亨延)

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  • 「大仏魂」を想い出しますが、作品としてはこんなんで採算ベースに乗るのかなとも思ったり。
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