K-POPアーティストが自ら手がけた“日本語詞”の魅力 SHINeeとPENTAGONを例に考察

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2018年09月10日 21:22  リアルサウンド

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 以前のコラムで、K-POPアーティストたちの日本語曲のローカライズについて取り上げた。その際は主にサウンド面について掘り下げてみたが、今回は歌詞について取り上げてみたいと思う。


(関連:SHINeeと2PM、韓国の音楽活動との違いは? “日本ローカライズ”曲の魅力を考察


 K-POPの日本語曲は、韓国語楽曲を日本人の作詞家が訳詞したものや、オリジナル曲に日本人の作詞家が詞を作る場合が多い。しかし、中には自ら日本語歌詞の作詞を担当するアイドルたちもいる。今回はその中からSHINeeとPENTAGONの例を紹介したい。


■「Sunny Side」SHINee
 SHINeeが7月31日にリリースしたシングル曲「Sunny Side」は、メンバーが初めて作詞を担当した日本語楽曲だ。7月26日に東京ドームで開催されたファンイベントで初披露され、メンバーの口からは「ファンの皆さんに自分たちの思いをちゃんと伝えたかった」と語られた。まさに、SHINeeから日本のファンへのメッセージソングになっている。


 日本語力に関してはK-POPアイドルグループの中でも定評のあるSHINee。まず韓国語で歌詞を書き、それを作詞家に手伝ってもらいながら日本語詞に直したのは、前述した「本当の思いを伝える」ということを優先したからだろう。


 オンユの入隊が迫る中発表された今回の楽曲の歌詞には、〈大丈夫大丈夫 少し会えなくなっても/大丈夫大丈夫 必ず戻るよ〉という歌詞があり、かなり直接的な内容になっている。ファンイベントでは「初めてストレートなメッセージを込めた」というような話をしていたが、今まで語られなかった彼らの心の内がこの歌詞によって伝わったような気がした。


■「忘れられない」PENTAGON
 “自作曲ドル”と言われるPENTAGONは、8月29日に韓国音源チャートの“逆走”でヒットした「Shine」を含めた6曲入りのミニアルバム『SHINE』をリリースした。収録曲の4曲が日本オリジナル曲で、彼らの自作曲になっている。その中のバラード曲「忘れられない」は、メンバーのジンホの楽曲だ。
 この曲でジンホは、自ら日本語の歌詞にも関わったという。クレジットは日本人の作詞家との共作になっているが、彼は「ここだけは外せないという部分は、自分で直接日本語で作詞をした」と、8月28日に大阪で行われたミニライブにて語っていた。同曲は「納得がいくまで曲も含めて何度も繰り返し作り直した」と明かし、「日本語のフレーズの響きと、どう伝わるかということにこだわった」と、この曲の日本語歌詞に対する強い思い入れを覗かせていた。


 ジンホ自身は最後の〈愛している〉という部分を気に入っているそうだが、「それまで強い歌詞だったのに、最後の最後に〈愛している〉で終わるのがいい」とその理由を語っている。たしかにジンホがそっと優しく語りかけるように歌う終わり方は秀悦だ。また、〈君じゃなきゃ 君じゃなきゃ 君じゃなきゃ〉というフレーズを繰り返す部分は、日本語ならではの音の響きが一番うまく作用している。PENTAGONのメンバーもこのフレーズが気に入っているそうだ。


 日本語の響きの美しさを知っていて、それを大事にして考えて作られたからこそ、作者の思いが伝わる曲になっているのではないだろうか。


■ちゃんと伝わるからこそ彼らは日本語にこだわる
 今回紹介した以外にも、自ら日本語歌詞を考えたというアイドルやアーティストたちは少なくない。例えば、2PMのジュノは日本で初めて出したソロ曲である「キミの声」に関して、「サビの部分は日本語で考えた」とインタビューで語っている。また、MYNAMEが先日発売した日本オリジナルアルバム『KISEKI』に収録されているコヌのソロ曲「君に会いたいよ」は、彼が日本語で直接歌詞を書いたという。そのため作詞のクレジットはコヌの名前のみになっている。


 韓国人の彼らにとって日本語は“外国語”だ。その中で日本語の意味を理解し、歌に乗せるというのは大変な作業ではないかと思う。外国語を習ったことがある方ならわかると思うが、母国語以外の言葉をきちんと理解し、自らの思いを言葉にするというのは容易ではない。


 それを踏まえた上で考えてみると、「日本のファンにちゃんと伝えるためには日本語で」という彼らのファンへの思いを感じることができるだろう。そのことをしっかり理解すると、日本語曲への思い入れは一層強くなるのではないだろうか。(西門香央里)


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