中国婚活ブームの意外な仕掛け人は共産党

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2018年09月22日 15:02  ニューズウィーク日本版

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ニューズウィーク日本版

<急速な人口高齢化に直面して国を挙げて結婚・出産を推進するが、こればかりは中国共産党も大苦戦している>


「誰かいい人いないの?」


帰省するたびに親に聞かれるこの言葉は、未婚の男女にとって何ともヘビーなもの。なのに、政府まで結婚のプレッシャーをかけてきたら、どれだけ息苦しい毎日になることやら......。


といっても、これは中国の話。2015年まで約35年間続いた一人っ子政策のために、中国では人口の高齢化が急速に進んでいる。国連の予測によると、50年までに中国の60 歳以上の人口は4億8000万人と、アメリカの総人口を超える見込みだ。


高齢化が進めば、労働市場は縮小する。中国国家統計局によると、14年の中国の労働力人口は、前年比371万人減の9億1583万人となった。そこでもっと多くの若者に結婚して子供を持ってもらおうと、中国共産党がキューピッド役を買って出ようとしている。


今年6月には、浙江省で共産党の青年組織が独身者10万人を集めたお見合いイベントを開催。甘粛省でも、中華全国婦女連合会が同様のイベントを開催した。


一方、国営メディアは若者の不安をあおるのに余念がない。環球時報は14年、「未婚男性はゴミのような扱いを受ける」と過激な表現で危機感をあおった。人民日報も「結婚適齢期なのに未婚の男性が積み上がれば、社会不安につながりかねない」と、社会全体に警鐘を鳴らした。独身生活を謳歌する女性に、「売れ残り」になる危険性があると脅すことも忘れていない。


中国では伝統的に女児よりも男児が好まれる傾向が強く、一人っ子政策時代に男女の人口差が大きく拡大した。国家統計局によると、20年の24〜40歳人口は男性が女性を3000万人も上回りそうだ。そんななか男性は30歳以上、女性は27歳以上で未婚だと、「売れ残り」を意味する「剰男」「剰女」の烙印を押されてしまう。


国を挙げてのプレッシャーが効いているのか、近年、中国版バレンタインデーの七夕(今年は8月17日)になると、若い男女がパートナー探しに必死になる(または愛を深めている)姿が全国各地で見られる。


若者は結婚を敬遠気味


親が子供に結婚をせかすこと自体は、何ら新しい現象ではない。「誰もが結婚するべきだと、社会が期待している。それが当然だと考えられている」と、ロンドン大学東洋アフリカ学院・中国研究所の劉捷玉(リウ・チエユィ)副所長は語る。「子供が20代後半になっても結婚していないと、親は心配し始める」


だから週末にもなると、上海の人民公園の一角は、わが子の結婚相手を探す親でごった返す。娘や息子の詳細情報(顔写真、年齢、身長、所得、学歴、星座、家族の価値観、性格など)を、親たちがここに張り出しているのだ。


一方、若者たちはそんなアナログな方法ではなく、出会い系アプリ「探探(タンタン)」や、恋人レンタルアプリ「来租我吧(ハイアー・ミー・プリーズ)」を駆使している。特に恋人レンタルアプリは、仕事絡みの夕食会やファミリーイベントに一緒に行ってくれる相手を見つけるツールとして大人気だ。


「年末年始の休暇前に 1000人を超える新規登録者があった」と、ハイアー・ミー・プリーズ創業者の曹甜甜(ツァオ・ティエンティエン)は語る。曹によると、中国の恋人レンタル市場は22年までに数十億ドル規模に成長する可能性がある。


周囲のプレッシャーは悪いことばかりではないようだ。広州出身のシシリア・ツァオ(25)は、自分の世代はせっつかれないと行動を起こさないと語る。「仕事が忙しく、パーティーに行く時間もない。外出が嫌いな人もいる。そういう人は誰かに紹介されないと出会いがない」


天津出身のチャオ・シュエウェイ(20)も、合コンに行くより、自宅でコンピューターゲームをしたがる友達が増えていると語る。「結婚が目的でなければ、デートなんてしないという人は多い」と、チャオは言う。「ただ、結婚自体に後ろ向きな人も増えている。すごく大変そうだし、子育ての費用もばかにならないでしょう?」


現在、中国の夫婦は子供を2人まで持てるようになったが、費用面への不安から2人目をつくることを躊躇する夫婦は少なくない。中国社会科学院の15年の試算では、中国で子供1人を16歳まで育てる費用は平均7万3500ドル。国民1人当たりの可処分所得が年間3295ドルの国では、大きな負担だ。


焦って結婚しても、うまくいくとは限らない。国務院民政部によると、中国では16年までの10年間に離婚率が1000組中1.46組から3組へと倍増した。16年だけを見ても、前年比8.3%増の420万カップルが離婚した。


香港在住の社会学者で、『中国の売れ残り女性たち』という著書があるサンディー・トーは、離婚率が上昇しているのは、人々の考え方が変化した結果だと指摘する。「不幸な結婚にも耐えなくてはと考える女性は減っている」と、彼女は言う。「経済的にも精神的にも自立した女性たちは、結婚がうまくいかないなら離婚するという選択肢を取れるようになった」


七夕にも新たな伝統が生まれそうだ。かつて女性たちは、紙の供え物を燃やして七夕を祝ったが、現代の女性たちは婚姻証書を燃やして自由を祝福するようになるかもしれない。


<本誌2018年9月25日号掲載>




このニュースに関するつぶやき

  • 「未婚男性はゴミのような扱いを受ける」だってさ、さすが小中国(笑う) たしかにここにもゴミみたいな小中国人独身キ族がいるけどね。貴族じゃないキ印の方だけどね(笑う)
    • イイネ!14
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