米軍戦略爆撃機の南シナ海と東シナ海飛行は米中覇権争いの始まり?

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2018年09月28日 19:22  ニューズウィーク日本版

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ニューズウィーク日本版

<対中貿易強硬策だけではない、トランプは軍事面でも中国が嫌がる政策をどんどん実行している>


9月23日と25日の2日にわたり、中国が他国と領有権を争う南シナ海と東シナ海で、米空軍が核兵器を搭載できる米軍の戦略爆撃機B52を飛行させたことが明らかになり、中国は「挑発だ」と猛反発している。


中国国防省の任国強報道官は27日の月例会見で、地域の緊張が高まった責任はアメリカの強引な外交政策にある、と言った。AP通信によれば任は、「米軍機による挑発行為に断固反対し、中国の権利と利益を守るためあらゆる必要な措置を取る」と記者団に語った。


B52は9月23日に南シナ海、9月25日に東シナ海の上空を飛行した。


#B52 Stratofortress bomber aircraft conducted operations in the South China Sea and Indian Ocean on Sept. 23 and Sept. 25, 2018 (HST) @PacificCommand @usairforce @AndersenAFBGuam https://t.co/xeAcPf1cZB pic.twitter.com/kMMO2GFgzD— PACAF (@PACAF) 2018年9月27日


中国は、ベトナム、フィリピンなどの周辺国と領有権を争う南シナ海で一方的に人工島を造成し、電波妨害装置を設置、爆撃機や弾道ミサイルを配備するなど、着々と軍事要塞化を進めてきた。東シナ海では、日本が実効支配する尖閣諸島で、中国と台湾が領有権を主張している。


強気のアメリカ


アメリカはこれまで、南シナ海は国際水域であると主張し、米軍の艦船や航空機による「航行の自由」作戦を展開してきた。


ジェームズ・マティス米国防長官は9月26日の記者会見で、B52の飛行に対する中国の抗議を一蹴した。「もしこれが、中国が(南シナ海を)軍事拠点化する前なら、爆撃機が飛んだところで(米軍基地があるインド洋の)ディエゴ・ガルシア島にでも向かったのだろう、というだけで済んでいたはずだ」。さらにこう強調した。「今回の飛行は通常の活動と何ら変わらない」


米国防総省のデーブ・イーストバーン報道官も、「同盟国やパートナー国との相互運用能力を高めるための通常任務」と説明した。


だが、偶然ではないだろう。米中関係は貿易不均衡をめぐる報復関税の応酬で悪化しているだけではなく、軍事的な角突き合いも激しくなっている。中国の台頭を止めようとするアメリカと、その手を振り払おうとする中国との間の覇権争いが本格的に始まったとも見える。


ドナルド・トランプ米大統領は26日に開かれた国連安保理の会合で、中国の習近平国家主席は「もう友達ではないかもしれない」と発言した。


トランプ米政権は9月24日、F16戦闘機やC130輸送機関連の修理用部品など約3億3000万ドル相当を、台湾に売却する方針を発表。中国は強烈な不満を表明し、取り消しを求めた。


台湾を自国の一部とみなす中国は、アメリカの台湾に対する軍事支援に常に神経を尖らせてきた。もしアメリカが武器売却の取り消しを拒否すれば、米中関係に「深刻な打撃」が及ぶと警告した。


アメリカも、ロシア寄りの姿勢を強める中国を警戒している。中国は最近、ロシアの最新鋭戦闘機「スホイ35」と地対空ミサイルシステム「S400」を購入した。これは、2016年の米大統領選に介入したことに対する報復として、アメリカがロシアに科した経済制裁に違反する行為だ。


報復としてアメリカは9月20日、中国軍の武器調達をする中央軍事委員会装備発展部と李尚福部長に経済制裁を科した。


中国政府はテリー・ブランスタッド駐中国米大使を呼び出して厳重に抗議。訪米中だった中国海軍トップの沈金龍司令官を呼び戻す措置も取った。さらに、米海軍が10月に計画していた強襲揚陸艦ワスプの香港寄港の申請も拒否した。


(翻訳:河原里香)




デービッド・ブレナン


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  • 「米中覇権争いの始まり?」  何が「始まり?」だ? 何をノンキな事を言っているんだ。そんなもんは、大昔からやっとる。
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