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“紀州のドン・ファン”はまだまだ? ホンモノのお金持ちの真の姿とは

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2018年10月09日 18:02  新刊JP

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新刊JP

写真『特捜投資家』の著者である永瀬隼介氏
『特捜投資家』の著者である永瀬隼介氏
「カネのない人間は一生、他人の奴隷になるしかないのか」

斜陽の新聞社を辞めた泣き虫記者、
失敗続きのバリキャリ美女、
うだつの上がらない学習塾経営者、
そして、地獄から這い上がった孤高の投資家。
はじめはバラバラだった崖っぷちのアラフォー4人が、「足」と「汗」と「頭」と「カネ」で「マネーのモンスター」に対して反撃を始める。

『特捜投資家』(ダイヤモンド社刊)は痛快な投資エンターテインメント小説でありながら、日本経済の奥にある「闇」に潜り込み、そこに蔓延るカネの亡者たちの全貌を明らかにする経済小説的な顔を持つ一冊となっている。
さまざまな企業や経営者がモデルとなっていることが伺える本作。その作者で元週刊誌記者でもある作家の永瀬隼介氏へのインタビュー後編では、記者として見つめたお金持ちの本当の姿について語っていただいた。

(取材・文:金井元貴)

■『特捜投資家』で活躍するアラフォーたちの姿

――本作の4人の主要登場人物は全員30代から40代、アラフォーです。この年代で揃えた意図はなんですか?

永瀬:この年齢になってくると人生背負うものも出てきますし、自分のことについてじっくり考えますよね。否応なしに先も見えてくる。それでいてすごく揺れている。一番動かせる年代がこのアラフォーだと思います。

【『特捜投資家』登場人物】

 
有馬浩介
元全国紙社会部記者。現在は売れないフリージャーナリスト。無駄に正義感が強く妙に涙もろい。取材力は抜群だが文章力に難あり。
 
五反田富子
通名・椎名マリア。クールな美貌と巧みな弁舌で豊富な人脈を築き、成功した男たちを渡り歩く「サクセス・ジャンキー」。バツイチ。
 
兵頭圭吾
板橋区大山で学習塾を経営する冴えない中年。秘めたる野望を抱きながらも、若者の教育に情熱を注ぐ。妻の雪乃はなかなかの美人。
 
城隆一郎
凄腕の個人投資家。数百億の資金を動かし莫大なカネを稼ぐ生粋の一匹狼。その過去は謎のヴェールに包まれている。“金融界のイチロー”。

――有馬の作中の成長はすごいですからね。

永瀬:彼自身も四面楚歌じゃないですか。でもこの物語の中で覚悟をして勝負をかけた。

――逆に凄腕投資家である城隆一郎は、絶対に必要な存在でありながら4人の中では少し異端的な感覚も受けました。

永瀬:それは彼が感情や善悪ではなく、お金を価値基準としているからでしょう。ゴルゴ13のような感じです。人間味は少しあるけれど、基本は金儲けオンリー。「金=自由」が信念になった理由は……ネタばれになってしまいますので、そこはぜひ小説を読んでほしいですね。

――「失敗続きのバリキャリ美女」五反田富子は4人の中で唯一の女性です。

永瀬:彼女は人脈を築き上げて自分の地位を高めていく女性起業家ですが、やはり苦労しています。日本は女性がトップになりにくい国ということは、政界を見ても、財界を見ても、一目瞭然ですよね。実力と向上心のある女性ほど、ガラスの天井に苦しめられている。それでも諦めずにとことん頑張る、めげない女性のキャラクターを描きたかったというのはあります。

――「うだつの上がらない学習塾経営者」兵頭圭吾は、城と同じ46歳ですが、真逆のような感じで人間味もある人物です。

永瀬:この兵頭と城はただならぬ関係なんですよね。でも、4人とも最初に物語に出てきた時の印象と、実の姿が明らかになったあとの印象はガラリと違ってくるのではないかと思います。秘めている思いがあるというか、それはこの物語に出てくる全員に言えることですが、ミステリーを一人一人に込めています。

■本物の凄いお金持ちは会ってくれない

――永瀬さんは投資のご経験があったのですか?

永瀬:ないですね。やろうと考えたこともない。『週刊新潮』にいた頃もなかった。もちろん美味い話は来ていたんですけど、それをやっていたら物書きなんてできないですよ。気が散っちゃうし、筆も鈍る。あと、そもそも金儲けに長けた人間は記者なんかやらないと思います(笑)。

――城は孤独をまとっているようにも思いますけれど、凄腕の投資家の中には一人で淡々と稼いでいる人っていますよね。

永瀬:そこが面白いんですよね。人付き合いもしないのに、そんなにお金を持っていて何が楽しいんだろうと思うけど、それは一般的な感覚で、彼らはお金を儲けることが第一。この小説の中に出てくるもう一人のキーマンもそうです。儲けること自体がエネルギーになる人がいるんですね。

――記者として取材される中でも、そういうお金のことしか考えていない人に出会ってこられたのではないですか?

永瀬:金のことしか頭にないという人は、バブル期からいっぱいいました。「小説なんか読む必要はない、リアルが大事だ」と言う人もいましたし、「何でも金で動かすことができる」と考える人もいました。政治家でも動かせるとね。

――特に印象に残っている「金の亡者」は誰ですか?

永瀬:たくさんいるけれど、特にあげるとすると、地上げの帝王といわれた早坂太吉ですね。金に対する執着もすごいし、女に対する欲望もすごい。有名なのが「アッコちゃん」という愛人なんですが、早坂が囲っていた銀座のママの娘の友達で、林真理子さんの『アッコちゃんの時代』という小説のモデルともいわれています。アッコちゃんは早坂を利用してのしあがり、早坂はバンバンお金を渡す。

――最近では「紀州のドン・ファン」事件もありましたが。

永瀬:紀州のドン・ファンは地方のちょっとした小金持ちの女好きですから、スケールが小さくてまったく面白くないですよ。本当の金持ちは桁が全然違います。早坂は何千億円という世界にいましたからね。あのおっちゃんはすごかったなあ。

ただ、話を戻しますが、本当にお金を稼いでいる投資家ってまったく会ってくれないんですよ。取材できない。「俺はお金持ちだ」と言う人で会ってくれる人は自己アピールが目的ですね。本物のスゴい人はアピールする必要ないから、凄腕のスパイと同じで表に出てこない(笑)。

――つまり、表立ってお金持ちアピールしている人がお金持ちの全てではないということですね。

永瀬:そうです。『特捜投資家』でもその構造は描きました。ものすごく儲かっていて、金持ちをアピールしている経営者は、実は「歩く広告塔」みたいな役割を果たしているだけということもあるんです。それで景気の良い話をして、一緒に夢を見よう、と野心あふれる若い人たちに伝える。

――なんとなく、心当たりがありますね…。

永瀬:候補者はたくさん出てきますよね(笑)。そういう人たちは一歩間違えればブラックに転じてしまう。松下幸之助になれる人は万分の一じゃないかな。そこを見極めることが大事です。

――本書の帯に「カネのない人間は一生、他人の奴隷になるしかないのか」と書かれていますが、この言葉に対しての永瀬さんの回答はいかがですか?

永瀬:世の中、お金を持った人間が一番偉いという風潮になっていますけれど、他人の奴隷にならなくても活路はあるはずで、それは4人の主人公たちが体現しているのかなと。

実はこの小説の根底には、今の政権や経済政策、企業のあり方、労働環境などに対する静かな怒りが通奏低音のように流れています。さらには「権力」や「金」を振りかざす巨悪に対して正義の鉄槌を下すべき検察や警察が忖度独裁政権下で骨抜きにされている現状への失望もあります。であれば、「目には目を、カネにはカネを」で制するしかない。「特捜投資家」というタイトルにはそういう強烈な皮肉も込めています。

――最後に、本作をどんな人に読んでほしいですか?

永瀬:経済小説が好きな人はもちろんですが、ミステリーファンにもぜひ読んでほしいです。「どうなるんだろう」「こいつは何を考えているんだろう」という様々な謎をちりばめ、後半は読者の度肝を抜くどんでん返しも仕掛けてありますから。楽しんでもらえればありがたいですね。

また、この物語に出てくる人たちはみんな諦めが悪い、泥臭い人たちです。そんな彼らの姿を見てパワーを感じてほしいなと思いますね。

(了)

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