今は亡き某指定組織の三次団体幹部の妻だった、待田芳子姐さんが語る極妻の暮らし、ヤクザの実態――。
■『ヤクザと憲法』出演の若頭が逮捕
10月2日、大ヒットドキュメンタリー映画『ヤクザと憲法』(2016年、東海テレビ製作)に出演していた暴力団の若頭が建設会社関係者を脅したとして逮捕されました。建設資金の支払いを逃れようと関係者を10人ほどで取り囲み、「カネカネ言いやがって」と怒鳴ったそうで、録音された音声もニュースで公開されていました。
『ヤクザと憲法』は、「1万人動員で大ヒット」といわれるドキュメンタリー映画にあって、4万人以上を動員したそうで、今でも人気がありますね。若頭は特に「コワモテ感満載」だったので、ご覧になった方は印象に残ったと思います。話題の映画だっただけに、逮捕のニュースもネットでもけっこう取り上げられてました。ネットに「やっぱり……」的な書き込みが多いのはしょうがないですが、元極妻という私のスタンスもあり、報道には「違和感」がかなりありました。
■億単位でもうけてるわけない理由
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まず大前提として、私は犯罪者をかばうつもりはありません。法に触れることをすれば、法にのっとって処罰されることは当たり前ですね。ただ、処罰を決めるのは裁判所で、マスコミではありません。もっとも警察や検察は逮捕したり起訴したりするのがお仕事で、それをそのままマスコミが流すのは、仕方ない気もしますけどね。
そこで、本題。まず気になったのは、若頭の「余罪」でした。今回の逮捕は微罪ですし、報道によれば本人も怒鳴ったことは「認めている」(録音されてますので当然ですが)ので、勾留も長くはなく、この記事が配信される頃には、もうシャバだと思います。
でも、一部のメディアが「(若頭による)被害総額は6億以上いっとったわ」「(若頭の会社の)売り上げが10億超えたこともあったそうや」などという関係者のコメントを掲載しているのは、どうなんでしょうね。立件されているのでしょうか? 記事内容のほとんどは推測とか伝聞にすぎませんし、『ヤクザと憲法』をご覧になった方なら、「そんなにもうかっているなら、もっといい事務所を使えるのでは?」と思われるでしょう。
ヤクザは見た目やメンツ重視なので、豪華でない事務所がカムフラージュということはまずないです。映画のあの事務所が「ありのまま」なのです。億単位でもうけていたら、防弾仕様のシャッターの豪邸に住んでいるはずですよ。今どきは暴力団排除条例があるため、新規で買うのは難しいですが、報道の感じでは「以前からかなりもうけていた」ような印象です。また、関係者の話として、若頭の「過去」を「狂暴なヤツやったようや」というのもありました。狂暴なのは映画でもわかりますが(笑)、伝聞をそのまま載せるのは気になりましたね。
もう1つ気になったのは、被害者さんが「脅された」のは今年の1月だそうです。もう10月ですよ……。殺人なんかだと捜査に時間がかかったりもしますが、この程度でこんなにかかるのはフシギですね。報道でも、初期の段階では「10月2日に大阪府警布施署が暴力行為等処罰法違反で逮捕」と日付や署の名前が出ていましたが、しばらくすると「警察に逮捕されていたことがわかりました」的にボカされていました。
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これは、本来は布施署が逮捕する案件ではなかったことなのだと思います。理由はわかんないですけどね。普通なら、大物逮捕の時はお手柄にしたいから署の名前まで出します。実際に「あの『ヤクザと憲法』の……」と出てましたし。途中でボカしたのは、何かあったからかなと思ってしまいました。
もう1つ、一部のメディアが「暴力団と人権をテーマにした映画」としていましたが、「ヤクザにも人権がある」的な映画ではないです。ヤクザの日常を描いた映画なので、このへんもおかしいです。いずれにしろ警察は『ヤクザと憲法』を好ましく思っていないので、「いつかパクって(逮捕して)やろう」とか狙っていた気もします。
ちなみに、若頭の罪名は刑法の「脅迫罪」(2年以下の懲役又は30万円以下の罰金)ではなくて、「暴力行為等処罰法」違反(3年以下の懲役又は30万円以下の罰金)でした。これは、ヤクザが組の名前で脅しをかけてきた時などは、刑法よりも罰則を重くできるので、そうなるようです。でも処罰法は、大正時代に作られた法律でカタカナなんですよ。なんだかなあ、という感じです。「三年以下ノ懲役又ハ三十万円以下ノ罰金」とかですね。わざとわかりにくくされている気がします。そんなわけで、今回はヤクザの事件報道への疑問を書いてみました。