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ビジネスの成功を生む「リサーチ」と「データ分析」に必要な思考とは

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2018年10月19日 18:03  新刊JP

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新刊JP

写真株式会社マクロミル上席執行役員の中野崇氏(写真=森モーリー鷹博)
株式会社マクロミル上席執行役員の中野崇氏(写真=森モーリー鷹博)
現代のビジネスにおいて、必要不可欠なものとなった「マーケティングリサーチ」と「データ分析」。

価値観の多様化や変化のスピードの高速化に企業側が振り回されないよう、市場を客観的に捉え、課題の解決策を見出し、適切に手を打っていくことがビジネスの成功につながることは、誰もが理解できるところだろう。

しかし、これに失敗してしまう企業も多い。リサーチで膨大なコストをかけてしまった、データを取ったのにビジネスに全く使えなかった等である。
そうした企業の課題に解をもたらすのが、株式会社マクロミル上席執行役員の中野崇氏の著書『マーケティングリサーチとデータ分析の基本』(すばる舎刊)だ。本書はインターネットリサーチやインタビューといったリサーチの方法だけでなく、失敗しないデータ分析をするための考え方を教えてくれる一冊だ。

著者の中野氏へのインタビュー。後編では意思決定に使われない失敗した「リサーチとデータ分析」が出てきてしまう理由、どんな人にこのスキルを身に着けてほしいかなどについて聞いた。

(新刊JP編集部/写真=森モーリー鷹博)

■データ分析をビジネスの成功につなげるための考え方とは

――意思決定者とデータ分析者の出すデータにズレが生まれる。つまり、意思決定に結び付かないアウトプットが起こらないようにするにはどうすればいいのでしょうか。

中野:どういうアウトプットを出したいかということを、意思決定者と実務担当者が話すことです。お互い確認をしてからリサーチに取りかかる。ただ、多くの企業のお話をうかがっていると、そういう場を設けられていないことが多い印象です。

大手企業の場合、意思決定をするのは経営陣や部長などの上級管理職ですが、リサーチ実務を担当するのは非管理職です。だから現場と距離がある。そして課題や優先度の認識にズレが生まれる。中間管理職がしっかりつなげられればいいのですが、階層が多ければ多いほど意思決定者の意図は正しく伝わらないものです。
また当初目的があったリサーチも、いつしか目的が理解されないまま、そのまま運用だけが残っているということもあります。事業環境が変われば、意思決定者が知りたいこと、意思決定したいことは日々変わるものですが、調査内容は毎回同じ。ずっと無意味なアウトプットが続けられているということになります。

こうしたことを防ぐためには、調査目的の確認に時間を割くことが大事です。どんな意思決定をしたいのか、このリサーチで何が分かりたいのか。リサーチ担当者が意思決定者を大胆に巻き込んで目的の確認をすることが大切ですね。

――リサーチの失敗を招く目的の設定・確認が疎かになりがちな場合、トップダウンで「このデータがほしい」と指示したほうが良いのではないですか?

中野:確かにデータの価値を理解されていいる企業は、リサーチやデータ分析を専門的に行う部署が役員直轄であることも多いです。一方で、本当に若手の仕事になっている企業もあって、リサーチ手法がきちんと身に付いていないままデータだけが出てきて、その数字が独り歩きミスリードしてしまうこともあります。だから、意思決定者や上級管理職が管理することは必要かもしれません。

また新入社員に対して、リサーチからアウトプットまでを行う研修を必須化することも大事だと思います。配属先が決まって、まずは自分の配属先の部署の課題を解決するというワークを通して、リサーチとデータ分析を学ぶ。
実際にデータを触ってみないとわからないことも多いですし、何より調査企画という「何を目的にしてリサーチを行うのか」という企画書を作る経験は大切だと思います。

本来、こうしたトレーニングの機会は調査会社が意志をもって提供しなければならないサービスなのかもしれません。

――データ分析というと統計学の知識が必要だと考えてしまうのですが、その点についてはいかがですか?

中野:もちろん、あった方が望ましいのは間違いありません。分析手法の選択やデータ解釈の際に、統計学の基礎知識が役に立つシーンは多々あります。現代のマーケティングを深めていくためには必須の知識だと思います。
ただ非常に専門性の高い領域でもあるので、ビジネスパーソンの教養として全ての人が統計の詳細知識を習得する必要はありません。統計学の観点からの分析が必要かどうかという判断、そして必要になった場合に専門家と会話できるレベルの知識があれば充分です。本書に記載している内容で基本としては充分だと思います。

データ分析においてそれよりも必要なのは「好奇心」ですね。データというのは結局私たちのなんらかの行動や気持ちを表すエビデンスですから、そのエビデンスの裏側にある生活者を気持ちや行動の本質は何か? どのような行動パターンが見出だせそうか? という好奇心もってデータを眺められるか、は非常に重要だと思います。



――本書では仮説思考の重要性を強く訴えており、「仮説なき調査は失敗すると言っても過言ではない」とも書かれています。良質な仮説を考えるためのコツはありますか?

中野:まず仮説について説明します。仮説は、調査課題、つまり知りたいことに対する仮の答えのことです。詳しくは本書、そして今執筆している本にまとめているのですが、「こういうことなのではなかろうか」「これが要因になって売り上げが下がっているのではないか」といったことはじめ、かなり具体的な部分まで仮の答えを考え、リサーチに反映することが、アクションにつながる良質な仮説構築をするためのコツといえます

ただ仮説構築が苦手だという人も少なくないでしょう。その多くは知識不足に起因するんですね。例えば、最近のマーケティング業界の課題はなんでしょうという話になったときに、マーケティング業界の現状だけではなく、それを取り巻く世の中や経済の状況を知らないと仮説は立てられない。また、マーケティング業界の過去にどのようなことが起きて、どんな課題があったのか、という変遷を理解することなども仮説構築のために必要です。

――リサーチ対象の前提知識が必要になるわけですね。

中野:そうです。業界、顧客、世の中の理解です。それを構造的、体系的に整理するためにはスキルが必要ですが、シンプルに言えば、本書の中でも書かせていただきましたが同じテーマの本を3冊読めば、何らかの仮説構築ができるようになると思います。1冊だと偏った視点になってしまうので、3冊ですね。

――最後に、リサーチとデータ分析のスキルを身に付けるべき人はどんな人だとお考えですか?

中野:マーケティング担当者は当然ですが、営業の方にはぜひ身に付けてほしいです。顧客と向き合う機会が多く、プレゼンや提案をすることも多いと思うんですね。そうしたときにデータの力は非常に役立ちます。説得力が高いパワフルなプレゼンができる。

顧客に何か提案をしたいときに、自分の伝えたいストーリーに沿ったエビデンスがあれば、説得力も増します。ただ、自分のストーリーに合わせたいがあまり、恣意的なデータになってしまうリスクもありますから、そこは客観性を担保しながら進めていくことが重要だと思います。

あとは研究開発部門の方です。日本のモノづくりは技術力が高いですし、品質も高い。ですが、顧客のニーズが反映されていない商品が多くあります。実はシンプルなものが望まれているのに、多機能にし過ぎてしまうとか。そういったニーズをキャッチするために、リサーチとデータ分析は必須ですから、ぜひこの本を手にとってもらって一読していただきたいですね。

(了)

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