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ここまで分かった「学習」の科学 繰り返し読む、蛍光ペンでマーク...意味ある?

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2018年10月23日 16:42  ニューズウィーク日本版

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ニューズウィーク日本版

<かつては知識がサバイバルツールだったが、時代は変わった。大切なのは知識そのものではなく、本質的な学び方。知っておきたい、知識を習得する6つのステップ>


氷河から発見された5000年前の男「エッツィ」は弓矢作りや金属精錬技術など、驚くほど高度な知識を身に着けていた。古代からつい数十年前まで、人間にとってのサバイバルツールは知識だったといえる。


だがインターネットが普及し、情報が検索ですぐ手に入るようになった現代、知識の価値は大きく変わった。現代人のサバイバルツールは知識そのものから、知識を運用する力、言い換えれば思考のスキルになった。


学習能力は生まれもった知性で決まる、というのが長らく通説になっていたが、実は正しい学び方によって学習の効果は格段に上がる。学習とは単に知識を記憶することではなく、知識に対してもっと能動的なアプローチをする知的活動だと、『Learn Better――頭の使い方が変わり、学びが深まる6つのステップ』(筆者訳、英治出版)の著者アーリック・ボーザーはいう。


本書のテーマは、まさにこの学習である。この考え方を発展させた学習学という学問分野があり、著者は学習学の研究者らへのインタビューを重ねた結果、学習のプロセスを6つのステップに分解して、知識を習得するための体系的なアプローチを提案している。


6つのステップとは何か。新しい情報を学ぼうとするとき、自分にとってそれがどんな意味を持つのかを意識すること、情報の価値をみずから見つけることが、学習のモチベーションを大きく上げる。さらに、自分で意味を創造してみる、例えば一文字抜けた単語のスペルに文字を足して完成させるという単純な作業をするだけでも、学習が記憶に定着しやすくなる。これが学習プロセスの第一ステップ、「価値を見いだす」である。


その後は順に「目標を決める」、「能力を伸ばす」、「発展させる」、「関係づける」、「再考する」へと学習プロセスはステップを踏んでいく。本書では1章ごとに詳しく、それらのステップが説き明かされる。


勉強法のウソ・ホントに目からウロコの体験


蛍光ペンで覚えたい箇所をマーキングすることに効果はあるか? 繰り返し読むことには? マンツーマン学習は? 情報を自分の言葉で繰り返すことには?


著者はこれまで慣習的に行われてきた学習法の実際の効果を検証し、研究の裏づけを示しながらその理由を解説する。読者もきっと、自分がやってきたはずの勉強法のウソ・ホントに目からウロコの体験をするだろう。


ちなみに、それぞれ種明かしをすると、蛍光ペンでマーキングをすることも、繰り返し読むことも学習効果はないと研究によって分かっている。知識を構築するためには能動的に頭を働かせる活動が最も効果が高い。しかし蛍光ペンも再読も、頭の働きを促すには至らないらしい。


マンツーマン学習、こちらはデータの裏づけで効果が実証されている。自分の知識や興味のレベルに合わせて指導や動機づけをしてもらえるし、先生からのフィードバックもたくさん得られるからだ。


そして、情報を自分なりの言葉で繰り返すと記憶しやすくなる。内容を要約してみることは認知能力を関与させる行動だからだ。同じように、読んだ内容を頭の中にイメージとして思い描くと記憶に定着しやすい。


本書の魅力はエピソードの豊富さにもある。著者は研究者にインタビューするだけでなく、みずからも体験取材したり、画家ジャクソン・ポロックのテクニックの進化や手術中のミスを記録し続けた医師の事例を紹介したりして、抽象的になりがちな学習学の世界に読者が入りやすくする工夫をしている。


そして、本書は読み物としてだけでは終わらない。巻末に「ツールキット」のページが設けられており、学生向け、教育者向けそれぞれに、本書の内容をあらためて要約し、実践的に生かせるノウハウとして伝授されているのだ。読んで面白いだけでなく使える一冊となっている。


印象的なセンテンスを対訳で読む


以下は『Learn Better――頭の使い方が変わり、学びが深まる6つのステップ』の原書と邦訳からそれぞれ抜粋した。


●For just about all of us, what matters today is not the data itself--what matters is how we can think better with that data. More exactly, how do we acquire new skills most effectively?


(ほとんどの人にとって、今大事なのはデータそのものではない。そのデータを使っていかに思考の質を上げられるかだ。もっと厳密に言うなら、新しいスキルをいかに効果的に習得するか)


――本書の導入部に掲げられた問題提起である。デジタル時代に入って情報の価値が変わり、情報を知っているかどうかよりもその情報をいかに自分のものとして使いこなすかが重要になっている。


●When it comes to rethinking our learning, we need external checks. After all, people often fib to themselves. Like con artists, we believe our own lies, especially about learning, and most of us think that we know a lot more than we do.


(学んだことを再考する際には、外部からのチェックが必要だ。人は自己欺瞞に陥りやすい。こと学習に関しては、詐欺師のように自分がついた嘘を信じ込んでしまい、ほとんどの人が実際以上に自分には知識があると考える)


――自分一人で学習を深めるのはなかなか難しい。著者は先生や仲間によるフィードバックの効用を紹介し、小テストや分散学習(間隔を空け、忘れた頃にもう一度学ぶ)の活用を勧めている。


◇ ◇ ◇


人生100年時代と言われるようになり、大人になってからもスキルや能力をアップデートしていく必要性を感じている方も多いのではないだろうか。長くなった現役時代だけでなく、仕事を引退してからも、学び続ければ人生は豊かになる。学生だけでなく、幅広い年代が役立てられる本だ。


『Learn Better――頭の使い方が変わり、学びが深まる6つのステップ』


 アーリック・ボーザー 著


 月谷真紀 訳


 英治出版


トランネット


出版翻訳専門の翻訳会社。2000年設立。年間150〜200タイトルの書籍を翻訳する。多くの国内出版社の協力のもと、翻訳者に広く出版翻訳のチャンスを提供するための出版翻訳オーディションを開催。出版社・編集者には、海外出版社・エージェントとのネットワークを活かした翻訳出版企画、および実力ある翻訳者を紹介する。近年は日本の書籍を海外で出版するためのサポートサービスにも力を入れている。


http://www.trannet.co.jp/




月谷真紀 ※編集・企画:トランネット


このニュースに関するつぶやき

  • 蛍光ペンでマーキングをすること・・・そうそう・・これも重要、あれも重要と マーキングしすぎて 1ページ全部 塗ってしまった勉強効率の悪い 私ですわーぁ
    • イイネ!1
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