■親の介護に冷たい夫
40代でも親の介護に直面している人は少なくはない。
「昨年、70代の父が倒れ、その看病で母も弱ってしまって」
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そう言うのはマサコさん(46歳)。77歳の父が脳梗塞で倒れ、現在も半身マヒが残っている。家で療養しているが、伝い歩きが精一杯だ。そんな父を支える母も75歳。マサコさんは、高校生と中学生の子を抱え、パートをしながら週に2日は実家に通う。
「本当は夫にもっと協力してもらいたい。でも私からは言い出せないんですよね、自分の親だから。夫からも私の親を心配する言葉はあまりないから、ますます現状報告もしづらくて。こうなってみて初めて、私はそれほど夫を信頼していないのかもしれないなと思えてきちゃって」
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夫に対する自分の本心が見えてきて、今までの夫婦関係は何だったのだろうと思うようになっているという。このままではいけないと思いながらも、日々の忙しさにまぎれて夫との信頼関係を修復できずにいる。ただ、「修復」しなければいけないほど夫婦関係が悪いのかどうか、夫はどう思っているのかはわからない。いずれにしても、親の介護をするようになって初めて、自分たち夫婦をも見直すことになるようだ。
■夫の親を介護する身になって
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夫の両親と同居しているハルコさん(44歳)は、1年前から義父を介護している。ひとり息子は大学生になって手はかからないが、義母も弱ってきたため、彼女が仕事を辞めざるを得なくなった。
「子どもが小さいときは夫の両親に助けられたから、今度は私が尽くす番だ。そう思ってはみたものの、ここまで積み上げたキャリアを捨てるのはつらかった」
だが、夫はハルコさんが仕事を辞めて当然だという態度だったという。
「一応は『すまないね』と言ったけど、自分が辞める気はさらさらない。ふたりで働きながら、お金を出してヘルパーさんに頼む手段もあったけど、それは夫の選択肢には入ってなかった。とにかく家族で面倒をみるのが当たり前だと思っているんです」
介護保険では足りない部分を、お金を出して補いたかったハルコさんだが、夫はその案を却下したのだ。
「失敗だったと思っています。夫が反対しても自力で看護師さんかヘルパーさんを雇うべきだった。キャリアは一度捨てたら終わり。これで私は離婚の自由も奪われたんです」
介護という事態に直面して、夫への不信感を抱くようになったハルコさん。先々を考えたら、仕事だけは辞めてはいけなかった。