世間では「前向きな人間」がいいとされている。深く悩んだり暗く考え込んだりする人間は、まるで未来がないかのようだ。だが本当に「ひたすら前向きな彼」はベストなのだろうか。
■相性によっては疲れることも
「私は特に前向きでも後ろ向きでもない。どちらかというとものごとをフラットに見たいタイプ。とらぬ狸の皮算用みたいなこともしません。でも1年ほどつきあっている彼は、超ポジティブ。明るくていいんだけど、最近、この人はもしかしたら現実を見てないんじゃないかと思うこともあります」
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クミさん(32歳)は考えながらそう言葉を発した。結婚を考えてつきあっているひとつ年上の彼について、最近、これでうまくやっていけるのだろうかと思うことが増えたそうだ。
「妄想を言っているわけでもないんだけど、とにかく物事はいい方向にしか転がらないと思っている。そのために今やるべきことを見失う。仕事でも人生でもそんな感じ。私は目標に向かって着実に歩むタイプなので、ケンカも多いんです」
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彼女は今、契約社員だが、正社員になることを目指している。そのために仕事のスキルを磨いているのだが、彼は「そんなことするより、上司に直訴すればいいじゃん」「社長に直訴したら? 情熱は人を動かす」などと適当なことばかり言う。
「私のことをまじめに考えてないと私は怒るし、彼は世の中そんなもんだよと言い返す。くだらない例ですが、一事が万事、そんな感じなんです」
一緒にいると、自分のきまじめさが馬鹿にされている気さえするという。常に超ポジティブを押し付けられる相手であれば、一緒にいるのはつらいのではないだろうか。
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■けじめをつけずに流れていく彼
自分は前向きだと考えている人の中には、「問題を先送りしたまま次から次へといろいろなことを進めてしまう」タイプもいるのかもしれない。そんな彼とつきあってみたものの1年で別れたというのはミエさん(30歳)だ。
「私の元カレもそうでした。新しいことを次々かじっていくけど、結局、何もものにできないタイプ。家族と疎遠で、それについて本当は考えたり対処したりしなければいけないのに、それは先送り。自分が将来、どうしたいかも先送り。週末はあわただしくあちこち行っているけど、何にいちばん興味があるのかわからない。ただ、彼自身は自分はポジティブだと豪語していました」
じっくり考えることを拒絶している人の「前向き」や、落ち込んで深く自分を見つめなおしたことのない人の「ポジティブ」は信用できないとミエさんは言う。本当のポジティブとは何なのか、考えてみる必要がありそうだ。