「帰れ!」というドナルド・トランプ米大統領の再三の罵声をよそに、中米から移民の大集団(キャラバン)が、アメリカ国境めざして北上中だ。
国連の推定によれば、現在その数は約7200人。主にホンジュラス、グアテマラ、エルサルバドルの3カ国の出身者が、アメリカへの亡命を夢見て旅を続けている。
キャラバンは、10月13日にホンジュラス北西部のサン・ペドロ・スーラを出発、グアテマラを通り抜けて、国境を超えてメキシコのチアパス州タパチュラとウイストラにたどりついた。だが一番近いアメリカ国境の町テキサス州マッカレンとは、まだ約1800キロも離れている。
キャラバンがアメリカ国境に到着するまでどれほど時間がかかるかは、わからない。
グーグル・マップによると、サン・ペドロ・スーラからマッカレンの国境検問所にいたる直行ルートは、徒歩で約501時間。ということは、1日12時間歩くと、アメリカ国境まで約42日かかる計算だ。
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もちろん、全員が徒歩で旅しているわけではない。一部の参加者は、旅の途中で他の交通手段も使っている。
もし目的地を変更し、今年4月にアメリカに押し寄せた中米移民のキャラバンのように、メキシコのティファナとアメリカのサンディエゴ間の国境をめざすなら、移動距離は二倍以上になる。
トラックをヒッチハイクして高速道路を突っ走る中米の移民たち(18年10月22日) Ueslei Marcelino-REUTERS
命がけの危険な旅
キャラバンが北に進むにつれ、参加者は増え、当初の150人あまりから、現在は7000人を超えた。だが今年4月のキャラバンの場合、1200人以上が参加していたが、そのうちカリフォルニア州の国境にたどり着いたのは、200人程度だった。
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ホンジュラスからアメリカへの旅は困難で、危険がいっぱいだ。移住希望者たちは限られた荷物のみで猛暑のなか、長い距離を歩かなくてはならない。
国際連合難民高等弁務官事務所のエイドリアン・エドワーズ報道官は23日にジュネーブで、同機関が「人道的状況」を懸念していると語り、「キャラバンが足を踏み入れる可能性のある地域での誘拐や安全上のリスク」について注意を喚起した。
地元メディアの報道によると、キャラバンに参加していたホンジュラス出身の男性が22日に、ピックアップトラックから転落し、轢かれて死亡した。
21日の朝には、グアテマラ人男性5人と女性1人が乗っていた車が数回横転し、後に全員がチアパスで死亡した。
AP通信によると、「このような状況下では、移民に対して国外退去や本国送還を決定する前に、亡命申請の機会を与え、国際的な保護が必要かどうかを適切に評価することが重要だ」と、エドワーズは警告した。
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ファルハン・ハク国連事務総長副報道官も先日、北に向かう移民集団に対して、国際移住機関(IOM)と難民高等弁務官事務所が現地での援助を強化したと語った。
IOMは、メキシコに膨大な数の移民が到着したと報告、その多くは、「長期間にわたって」メキシコ国内に留まるのではないかと見ている。
メキシコ政府当局は、ビザなど適切な書類の所持者には、メキシコへの入国と移住を許可すると発表。また、メキシコで亡命申請を希望する者には対処するとした。
こうした対応にも関わらず、ドナルド・トランプ大統領はメキシコに対して、アメリカに向かう移民集団を阻止できていないと不満を訴え、この状況を「国家の非常事態」と呼んだ。
トランプはまた、国民がキャラバンに参加しないように十分に手を尽くしていない、とホンジュラス、グアテマラ、エルサルバドルの政府を非難。この3カ国への支援を停止するか、少なくとも大幅に削減すると宣言した。
シャンタル・ダシルバ
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