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75歳以上の運転免許保有者500万人の3割が認知機能低下の疑い…検査体制の遅れが深刻化

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2018年10月25日 18:52  Business Journal

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Business Journal

写真「gettyimages」より
「gettyimages」より

 高齢者が引き起こす自動車事故が深刻な社会問題になっている。


 今年7月25日、神奈川県横須賀市の自動車専用道路の「横浜横須賀道路」で、乗用車が約10キロにわたって逆走し合計7台の車と衝突するという、信じられないような事故が発生した。


 運転していた70歳の男性は、自動車運転処罰法違反(過失傷害)の疑いで現行犯逮捕されたが、翌日には釈放された。男性には認知症の通院歴があり、それが原因で逆走してしまった可能性があるからだという。


 むろん、事故を起こした男性が無罪ということではない。逃走の恐れがないことから、在宅での捜査に切り替えられたようだ。それでも、重い認知症と判断されれば罪状が軽減されるケースも出てくる。今後、高齢化が急速に進行するなか、認知症のドライバーによる交通事故が増えるのではないかと懸念されている。実際、国内の認知症患者は増加の一途をたどっているのだ。


●2017年3月から認知機能検査が義務化


 厚生労働省の2015年6月の発表によると、12年時点の認知症患者数は約462万人で、65歳以上の高齢者の約7人に1人と推定されている。高齢化の進展で患者数は右肩上がりに増えることは間違いなく、団塊の世代が75歳以上となる25年には700万人前後に達する見込みだ。そうなれば、65歳以上の高齢者の約5人に1人が認知症を患っていることになる。


 認知症の前段階の軽度認知障害(MCI)の患者も認知症患者とほぼ同程度いるとされており、合計すれば、あと10年以内にMCIおよび認知症の患者は1000万人を超えると見られる。もはや、高齢ドライバーの認知症対策は待ったなしといえるだろう。早急に対策を講じなければ、冒頭のような暴走事故が珍しい事態ではなくなるかもしれない。


 むろん、国も認知症ドライバーの事故については問題意識を持っており、17年3月に改正・施行された道路交通法で、75歳以上の高齢者が運転免許を更新する際に「認知機能検査」を受けることを義務付けている。


 認知機能検査は運転に必要な記憶力や判断力など認識能力の低下をチェックするもので、時計の文字盤に指定の時刻の針を描くなど、30分程度の検査が行われる。判定は3段階で、第1分類が「認知症のおそれがある」、第2分類が「認知機能低下のおそれがある」、第3分類が「問題なし」だ。第1分類と判定された場合は、別途医師の診断が義務付けられ、そこで認知症と判定されれば免許の取り消しや停止処分になる。


 さらに、免許更新時以外でも認知症患者を見つけるために、「臨時認知機能検査」も新設した。これは75歳以上の運転者が、信号無視や通行区分違反、一時不停止など、認知機能が低下したときに起こしやすい一定の違反行為をした場合に検査を義務付けるもの。ただし、3カ月以内に認知機能検査を受けていた場合は除かれる。


●75歳以上のドライバーの約3割は認知機能が低下


 では、17年3月12日の改正道路交通法施行から18年3月31日までの約1年間で、認知機能検査を軸とした高齢者運転対策はどのように進展したのか――。


 警察庁の発表によると、認知機能検査が義務化されてから約1年間の受検者数(更新時と臨時の合計)は210万5477人で、第1分類(認知症のおそれ)と判定された人は5万7099人、第2分類(認知機能低下のおそれ)が55万3810人、第3分類(問題なし)は149万4568人となった。第1分類と第2分類をあわせると、全体の約3割に相当する。実に、75歳以上のドライバーの3人に1人が認知機能になんらかの問題があることが判明したのである。


 警察庁の将来推計によると、75歳以上の運転免許保有者数は高齢者人口の増加に伴い、今後も右肩上がりの上昇を続け、16年の513万人(実績値)から21年には613万人(推計値)へと、100万人も増えると見込まれている。何も手を打たなければ、約600万人の3割に当たる約180万人が、21年には「認知症および認知症予備軍ドライバー」となりかねないのだ。


 ただ、改正道路交通法の施行から1年で、認知機能検査を受けて免許の取り消し・停止を受けた人が前年から大きく増えたことは、高齢ドライバー対策の一定の成果といえるだろう。第1分類と判定された5万7099人のうち、再受検や免許自主返納などを除いて、臨時適性検査(専門医の診断)または診断書の提出命令を受けた人は4万1486人。


 このうち医師の診断を受けた人は1万6470人で、認知症と判定されて免許の取り消し・停止を受けた人は1892人にのぼった。16年に認知症で免許の取り消し・停止を受けた人は597人だったので、3倍以上に増えたことになる。この数値は18年3月までの実績であり、医師の確定診断が出ていない人も含めると、まだ増えると見られる。


 この数字を多いと見るか少ないと見るかだが、第1分類と判定された人に占める割合はわずかに3.3%であり、前年から増えたとはいえ、少ないといわざるを得ない。認知症検査を行える医師の数や検査体制は十分とはいえず、今後、第1分類と判定された人の検査を迅速・確実に行えるかどうかも課題になっている。


 認知症にかかわる医師の診断を受けた人は、15年は約4000人、16年は約5000人だったが、17年は約4万人に増えた。検査を行う医師の確保と診断体制の確立も深刻な問題といえるだろう。


●認知機能検査は最大4カ月待ち


 加えて、認知機能検査が義務化され、最近になって露呈した大きな課題のひとつに、認知機能検査を受けるための待ち時間が長期化していることがある。


「認知機能検査を受けるために自動車教習所に連絡をしたら、早くても1月末になると言われました」――。千葉県千葉市に住む角田権之助(仮名・80歳)さんは、運転免許更新の案内が届いた10月中旬、近くの京葉自動車教習所(千葉市稲毛区)に連絡して、認知機能検査の予約が簡単には取れないことを知った。


 以前から、高齢者講習などは全国各地の自動車教習所が委託を受けて実施している。改正道路交通法施行後は、これに認知機能検査(臨時も含む)や臨時高齢者講習が加わり、受け入れ体制に限界がある自動車教習所では予約が取りにくい状況が生まれている。


 たとえば、千葉県では県内57カ所の自動車教習所で認知機能検査を実施しており、その平均受講待ち期間は、9月6日時点で5.7週間(約1カ月半)だ。もっとも待ち期間が長いところが、前述の角田さんが連絡した京葉自動車教習所で15週間(約4カ月)。同じ稲毛区にある稲毛自動車教習所も13週間(約3カ月)と待ち期間は長い。


 京葉自動車教習所の場合、近隣に高齢者が多く住んでおり、そもそも検査希望者が多い上、原則として週のうち平日の2日間しか受け入れていないことが待ち期間の長期化につながっているという。


 ただ、こうした問題は同地区に限った話ではない。同じ千葉県内でも四街道市のソフィアドライビングスクール四街道は14週間待ち、我孫子市の我孫子自動車教習所や佐倉市の佐倉自動車学校なども13週間待ちだ。こうした現象は日本全国至るところで見られ、高齢ドライバーの数に検査を行うスタッフの数や検査体制がまったく追いついていないのだ。


 警察庁は委託先の自動車教習所に負担が集中しないように、警察の施設で高齢者講習を直接実施するなどの取り組みを徐々に開始しているが、問題解決には時間がかかりそうだ。


 認知症の高齢ドライバーによる悲惨な事故を根絶するためには、今後、教習所や警察の施設以外でも認知機能検査や高齢者講習を実施できるような体制を構築する必要があるだろう。
(文=及川知晃/ジャーナリスト)


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  • 認知症で返納したことすら忘れて運転してしまう。それを防止しないとどうにもならないと思う。IC免許を差し込まないとエンジン始動不可とか。 https://mixi.at/agx8Qng
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