米・中間選挙を前に「トランプNO」ミュージシャンが続々! ポール・マッカートニー、ガンズ・アンド・ローゼズも

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2018年11月06日 07:11  リテラ

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 現在来日中のポール・マッカートニー。昨年4月以来となる短いスパンでの来日となる今回の「FRESHEN UP JAPAN TOUR 2018」では10月31日、11月1日に東京ドーム、5日に両国国技館、8日にナゴヤドームでのコンサートが予定されている。



 そんななかポールによるInstagramの投稿が話題を呼んでいる。10月30日、彼はナンシー夫人とともに二人揃って「WE CAN END GUN VIOLENCE」と書かれたTシャツを着た写真とともに、「ここ最近アメリカで起きている悲しい銃撃事件を受けて、アメリカ国民が分別ある銃規制法案を支持する政治家に投票することを願っています」と、11月6日に行われる中間選挙に向けてのコメントを綴った。



 ポールは今年3月にも銃規制を求めて開かれた全米各地で開かれたデモ「March For Our Lives」に参加している。ポールはニューヨークのデモに赴いていたが、その場で受けたCNNの取材に「(銃による暴力を完全になくせるか)わからない。でも、これが僕らにできることだ。だから、僕はいまここにいる。僕の親友の1人が、このすぐ近くで銃の暴力により殺された。だから、これは僕にとって重要なことだ」(2018年3月26日付ニュースサイト「BARKS」)とコメントしている。ここでポールが言及した「親友」は、言うまでもなく、1980年12月8日にニューヨークの自宅アパート前で凶弾に倒れたジョン・レノンのことである。



 北アイルランドでデモに参加していた市民がイギリス軍によって射殺された「血の日曜日事件」を受けて書かれている「アイルランドに平和を(原題:Give Ireland Back to the Irish)」など一部の例外を除いて、ポールはジョンほど積極的に政治や社会について発言することはなかったし、プロテストソングに類する曲もほとんどない。



 ポールがここまで直接的に政治に言及するのは、ビートルズ時代からの長いキャリアでもかなり珍しいことだが、そんな彼がここまで踏み込んだ背景には、やはり、トランプ大統領の言動や、右傾化、ファシズムの台頭が進む世界情勢を受けての危機感があるのだろう。



 2018年10月31日付ニュースサイト「CINRA」に掲載されたインタビューでは、トランプ大統領について語っている。



 トランプ大統領は、10月27日にペンシルベニア州ピッツバーグにあるユダヤ教礼拝所で男が銃を乱射し11人が射殺された事件の数時間後、インディアナ州での集会に出席して演説を行っているが、その際にファレル・ウィリアムスのヒット曲「ハッピー」を流したことが問題となっている。



「ハッピー」は日本でもヒットした曲なのでご存知の方も多いと思うが、非常に明るい曲調で、歌詞も〈だって僕はハッピー/幸せって本当にあるんだなという気分なら手拍子しよう〉(編集部訳)と歌ったもの。銃乱射事件の直後に、トランプ大統領は一体どういうつもりでこの曲を流したのだろうか。



 ポールは、この状況で「ハッピー」を流したトランプ大統領を、こう断じている。



「あの曲を、あの状況で流せる人間が、果たして無神経でなくてなんだろう。トランプっていうのは、人に対する思いやりや想像力に欠けた人物だと思うね」



 ちなみに、ファレル自身も「ハッピー」がそのようなかたちで使用されていることに怒りを表明。弁護士を通じて、「我々の国で起こった悲劇に“幸せ”なんてものは無く、あなたにこの曲をこのような目的で使用することを許可していない」(2018年10月31日付ニュースサイト「FNMNL」)とした書簡を送っている。



●ファレル、ガンズ・アンド・ローゼズ、リアーナ…多くのミュージシャンがトランプにNO



 トランプ大統領の集会に楽曲を使用されていることに抵抗を表明したのはファレルだけではない。いま最も話題となっているのがロックバンドのガンズ・アンド・ローゼズだ。彼らは1987年発表のヒット曲「スウィート・チャイルド・オブ・マイン」をトランプ大統領の集会に使用されているが、ヴォーカルのアクセル・ローズは「トランプの集会などで使用しないよう正式に要請している」としたうえで、「ホワイトハウスには、真実、倫理、モラル、共感といったものを顧みずに何でも言う奴らがいて、そいつらは本物を偽物であると言い、偽物を本物であると言う」(編集部訳/11月5日のツイート)と、明確な反トランプの姿勢を語っている。



 欧米のミュージシャンのなかでは政治的な立ち位置を公言するのは珍しいことではないが、ことトランプ大統領に関しては多くのミュージシャンが批判の声を上げている。ビヨンセ、リアーナ、レディー・ガガ、スティーヴィー・ワンダー、ロジャー・ウォーターズ(元ピンク・フロイド)、パール・ジャム、U2、エミネム、マドンナ、ケイティ・ペリー、デーモン・アルバーン(ブラー、ゴリラズ)、ナイン・インチ・ネイルズ、ケンドリック・ラマー、ジョーイ・バッドアス、ジェイ・Z、ナズ、スヌープ・ドッグ、ブルース・スプリングスティーン、グリーン・デイ……など、明確にトランプ批判を表明しているミュージシャンのリストはどこまでも続く。



 そんななかでも、ここ最近もっとも影響力を発揮したのはテイラー・スウィフトだろう。



 テイラーは10月6日に投稿したインスタグラムのポストのなかで、中間選挙を見据えた発言をおこなった。



 インスタグラムの投稿の冒頭でテイラー・スウィフトは、〈これまで私は、政治的な意見を公にするのに気がすすみませんでした。でも、この2年間に、私の人生や世界でも色々なことがあったことにより、いまは考えが大きく変わったんです〉と書いたうえで、共和党の現職下院議員であるマーシャ・ブラックバーンは支持できないと明言した。



 テイラーはマーシャ・ブラックバーンを支持できない理由として、男女同一賃金法案に反対していること、DVやストーカーや性暴力から女性を守るための法案に反対していること、同性婚に反対していることなどを挙げ、中間選挙では民主党を支持すると表明した。



 この発言の影響は大きく、テイラーによるインスタグラム投稿後の24時間で有権者登録者数が6万5000人も増えた(9月の1カ月での登録者数は19万人)。以前からテイラーに対して好意的なコメントを寄せていたトランプ大統領は、今回の発言を受けて「前より25%好きではなくなった」と語った。



 トランプ大統領がそのような反応を示したのは、テイラーの発言がただ単にマーシャ・ブラックバーン個人の政策を批判しただけのものではないからだ。



●テイラー・スウィフトも沈黙を破り、トランプに反対の意志を表明



 テイラーは前述したインスタグラムの投稿のなかで、〈肌の色、ジェンダー、誰を愛するかといったことに関係なく、すべてのアメリカ人の尊厳のために戦ってくれない人には投票することはできません〉と書いているが、これは、人種差別、女性差別、性的マイノリティ差別を公然と行ってきたトランプ大統領に対するテイラーからの評価である。インスタグラムのポストで直接トランプ大統領を名指ししてはいないが、先に引いた〈この2年間に、私の人生や世界でも色々なことがあったことにより〉との文言がトランプ大統領を指しているのは明らかだ(トランプが大統領選挙に勝利したのは2016年11月)。



 前述のように、ポップス、ロック、ヒップホップなど、ジャンルを問わず多くのミュージシャンが反トランプの姿勢を明確にするなかで、テイラーは沈黙を貫いてきた。



 その背景には、もともとテイラーが属していたカントリーミュージック業界の特殊性がある。詳細は本サイトの過去記事に詳しいが(https://lite-ra.com/2018/10/post-4307.html)、カントリーではかつてブッシュ大統領批判を行ったグループ(ディクシー・チックス)が業界から干されるという大騒動が起きたことがある。



 テイラーがディクシー・チックスの騒動を知らないはずはなく、これまで政治的な主張、トランプ大統領への批判を控えていた背景に、この歴史は無関係ではない。



 ただ、トランプ政権下のアメリカではそういった態度は多くの批判を浴びていた。意見を表明しないということは、現状を追認していると捉えられたのだ。



 実際、政治的な意見表明、とりわけトランプ大統領の差別主義に対し態度を明確にしなかった結果としてテイラーは白人至上主義の人たちから「アーリアの女王」と呼ばれ、白人ナショナリストたちのアイドルとして祭り上げられることにもなった。



 14年発表のアルバム『1989』以降のテイラーはダンスミュージックに急接近し、現在はプロパーなカントリーミュージシャンとは言い難い音楽性になっているが、それでも、今回の発言により失うファンは少なくないといわれている。



 だが、たとえ大きなリスクを伴っても、テイラーは今回トランプ政権に対し批判的な態度を明らかにした。ミュージシャンとして大きな社会的影響力をもつ立場にある人間として、人種差別、女性差別、性的マイノリティ差別にもうこれ以上沈黙を続けることはできなかったのだろう。



 日本では芸能人が権力批判をすると、その内容云々以前に、「政治的な話をした」ということが猛反発を受ける。「音楽に政治をもちこむな」などという嘆かわしい標語が一定の支持を受けるような状況にあるこの国から見ると、現在のアメリカで起きている現象はとても遠いものに思えるが、リスクに屈せず意見を表明するテイラーらミュージシャンの姿からは学ぶものが多くあるだろう。

(編集部)


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